002 - へんなおじさん -
002 - へんなおじさん -
ひそひそ・・・
「おい、見ろよ」
「うわ、酷ぇ臭いだ」
「路地裏で転んだんじゃね?」
ひそひそ・・・
「あら、まだ子供なのに宿主なんて可哀想」
「耳が少し尖ってるから長命種だ」
「ベンダルに寄生されてるって事は、卵流し込まれる時に犯されたんだよな・・・」
「おいおい、あの娘、可愛い顔してるからエロい想像しちまったじゃねーか」
ひそひそ・・・
「ママー、あのお姉さん・・・」
「こら、近付いちゃいけません、危ないの!」
「・・・」
「・・・」
・・・
「・・・やっと着いたぁ」
皆の注目を集めながら大通りを歩いて僕の船が停めてある宙港の建物まで戻って来た。
食事をしたかっただけなのに酷い目に遭ったし臭いから早く船の中で身体を洗いたい・・・そう思って中に入ろうとすると警備のお姉さんと目が合った。
「待ちなさい!、この先の商用区画にそんな汚い格好で入らないでちょうだい!」
「え・・・でも135番ドックに僕の船が・・・」
「どうしても入りたいならどこかで身体と服を洗うか着替えてもらえる?、床も汚れるし迷惑なの」
そう話すお姉さんの視線は僕の首輪や両手首に嵌められている枷に注がれている、お姉さんが意地悪をするのは床が汚れるからじゃなくて宿主に対する嫌がらせだ。
その証拠にこの宙港内の床はゴミだらけで結構汚い!。
あの後、お姉さんに仄かな殺意を抱きながらも大通りに戻って水場を探し、持ち主のおばさんに嫌な顔をされながら身体や靴を洗わせて貰った。
服が乾くのを待って再びドックのある宇宙港商用区画に向かう・・・警備のお姉さんとまた目が合ったけど今度は通してくれるようだ。
「補給終わったかな・・・今日を入れてあと三日滞在許可を取ってあるからお船の中に引きこもって本を読もう、うん、そうしよう!」
(ピッ・・・滞在許可証を確認、135番ドックの搬送通路を開放しました)
「荷物の扱いが雑だしコンテナが倒れ掛かってる・・・あれ、張り紙?」
「・・・」
「ベンダルの宿主は立ち去れ!・・・って何これ酷い!」
よく見ると宇宙船にも大きな傷が入っていた、搬送車を使ってわざと引っ掻いたようだ。
「うりゅ・・・ぐすっ・・・」
今まで耐えていたけど涙が溢れて止まらない、宇宙船の傷を泣きながら撫でていると後ろに人の気配がした。
「おい・・・」
「・・・え?」
誰かに話しかけられた!、僕はまだ湿っている上着のポケットに入っている護身用ナイフを確認をする。
「俺のところの者が笑いながらお前の宇宙船を傷付けているという通報を受けてやって来た、この傷がそうか?」
低く不機嫌そうな声・・・怒っているようだ、振り向くととても人相の悪い男が立っていた、筋肉ムキムキで強そうだしナイフ一本で僕がどうにかできる相手じゃない!。
「あぅ・・・」
ふるふる・・・
「泣いてちゃ分からんだろう、この傷は物資をここに持って来た俺の会社の従業員が付けたのか?」
・・・船の傷の事を聞いているようだ。
「はい・・・僕がお買い物から戻って来たらコンテナが雑に積まれてて・・・積み直そうとしたらこの張り紙と傷を見つけました」
「本当にすまなかった、傷を付けた奴は爺さんをベンダルに殺されてな・・・まぁ、そんな事は言い訳にしかならない、そいつは今日限りでクビにする」
マッチョ男が僕に向かって頭を深く下げた。
「・・・傷はそんなに目立たないのでもういいです」
「いや、詫びとして俺の会社で修理させてくれ、ついでに悪いところがあれば全部直してやる・・・ところでこの船だが」
「はい?」
「お前のか?」
それを聞いてどうする気なの!。
「父がハンターをしていて、その時に使っていたものを僕が譲り受けました」
「あいつの娘か・・・お前の親父さんは今何処に居る?」
「40年ほど前に母と旅行に行ったきり行方不明で・・・あの・・・父を知ってるの?」
「ハンターやってる時世話になった、何度かこの船にも乗せてもらった事がある、懐かしいな・・・本社から帰る途中たまたま寄ったステーションにこの船があったから驚いたぜ」
「そう・・・だったんですか」
「あぁ、だからこの船を傷付けた奴を俺は許す事ができない、何か困った事があったら俺のところに連絡しろ、微力だが力になれるだろう」
「・・・」
「俺の名はエッシャー・レベルス、レベルスカンパニーの代表をしている」
そう言ってレベルスと名乗る変なおじさんは連絡先の書かれているカードを僕に手渡した。
「ありがとうございます、僕はシエル・シェルダンって言います」
「今から技術者を呼ぶ、修理希望箇所を聞いておこうか(ニコッ)」
「え?」
そして怪しいおじさんはどこかに通話した後、作業服を着たエンジニアっぽい人を二人連れて宇宙船の中に入ってきた。
「えと、壁の配管やパッキンが古くなってオイル漏れと・・・船内の防虫、あとはダクトの清掃・・・くらいかな」
「遠慮するな、お前の親父さんも何かしてやろうとしたら遠慮してた、そんなところも似てるな」
「・・・」
「操縦桿が古くなってるぞ新品に替えよう、なんだこりゃ!モニターが古過ぎる、替えるぞ!、操縦席もガタが来てるな、思い入れは無いか?、そうか替えよう、あとは空調系の全取り替えとメイン制御盤を最新型に、エンジンも古いな、製造中止で交換できねぇか・・・オーバーホールだ、全部バラして整備する、それとベッドが汚いから新品に・・・」
僕を放置して指示を出すおじさんとそれを撮影する作業服の二人・・・話が凄い事になってきてるし!。
「ちょっと待って!、目立つけど少し傷付けられただけだから、そんなにしてもらったら費用が大変な事に!」
「詫びだって言っただろ気にするな、お前の親父さんには何度も命を助けてもらった俺の大恩人だ、その娘に恩を返せるならこれくらい屁でもないぞ、それにおじさんは大金持ちだから金の事は心配するな」
ムキムキマッチョな怪しいおじさんは大金持ちらしい・・・。
「・・・」
・・・
・・・
「社長・・・この船・・・(ひそっ)」
「気付いたか、凄いだろう、見た目はボロいが伝説級の遺物だ(ぼそっ)」
「はい・・・船内全部に重力制御パネルが敷き詰められて・・・武装も・・・」
僕の後ろでおじさんと社員の人が話し込んでるよ、僕の船は何かおかしいのかな?。
「ハンターやってて運送任務の途中か・・・余裕は50日くらいあるんだな、そうか良かった・・・なんだ俺のとこの子会社の仕事じゃないか、「偶然俺の友人に再会したから無理に引き留めた、少し遅れるかも」って連絡しておいてやるから大丈夫だ、大体10日で全部仕上げるぞ、それまで宿をとって滞在許可も延長しておいてやるからのんびりしてろ、な!」
「・・・はい」
「このドックじゃ狭いな、俺の持ってる専用ドックに移して改修しよう、今から一度外に出て特区16番ドックに入港し直してくれ、その後一緒に飯を食いに行くぞ!」
「・・・はい」
ダメだ、おじさんが強引過ぎて断れない!。
・・・
・・・あれからおじさんと一緒に富裕層が住む中央区画にある豪華なレストランで美味しいお食事をした後、僕は超高級ホテルの前に立っている。
「こんな凄いところ泊まった事ないよぅ・・・宿主だから宿泊拒否とか・・・」
「ここは俺の会社のホテルだから問題無い、宿主の人達が泊まっても大丈夫な仕様になってるぞ、排泄や洗浄の専用機械は各部屋に標準装備してるし最新式だから超快適だ」
「ひぃっ!」
僕をここまで乗せて来た送迎用リムジンシャトルに乗って帰ったと思っていたおじさんが気配を消していつの間にか後ろに居た!。
「いらっしゃいませ、レベルス様、シェルダン様!」
従業員の人達が一列に並んで頭下げてるよ!。
「じゃぁ宇宙船の改修が終わったらこのホテルに連絡する、それまでこのステーションを満喫してくれ、この周辺は治安がいいから一人で出歩いても大丈夫だぞ」
「・・・ありがとうございます?」
戸惑う僕を残しておじさんは帰って行った、それにしても案内されたホテルのお部屋が豪華過ぎて落ち着かない!。
「本当に泊まっていいのかな・・・10日後におじさんの連絡来なくて宿代払えって言うんじゃないよね?」
真っ先に疑ったのは手の込んだ詐欺だ、でもおじさんは僕の宇宙船やお父さんの名前も知っていた。
悩んでても仕方がないから僕は背負っていたリュックをベッドに下ろし中から宇宙船の携帯端末、それからお薬15日分を取り出した。
「久しぶりに長い時間歩いたから疲れたよ・・・」
ずっと宇宙船の中でお仕事も相手と顔を合わさずに通信でのやり取りだったから完全に運動不足だ、義足が痛い・・・。
ピ・・・
「あれ?」
携帯端末の電源を入れると入金の連絡が来ていた、僕の口座にお金が振り込まれたようだ。
「リンちゃんのお家からだ、気を遣わないでって言ってるのに・・・」
そうは言っても今の僕は稼ぎが少なくてリンちゃんの家からの入金には結構助けられている。
「10日くらいここに滞在するなら運行計画やり直さなきゃ・・・」
日程は十分余裕があったから20日くらい遅れても間に合うだろう、僕は端末に向かって作業を始めた。
・・・
端末に向かって運行計画を練り直しつつ、ふとテーブルの横を見ると大きな姿見があった、僕は引き寄せられるように鏡の前に立って全身を映す。
僕が今着ているのは上下一体型になって身体にピッタリと貼り付いたサラサラ素材の宇宙服、今は息苦しいから外している鼻から下を覆う防護マスク・・・左目はベンダルの爪で潰されたからそれを隠す眼帯・・・。
これは宇宙船乗りが着ている宇宙服に似せて作られた宿主専用の防護服だ。
薄くて柔らかいし宇宙服の機能もあって耐刃、耐候性に優れている、少し傷付いたくらいなら自動修復機能が働く高級品・・・僕の身体に寄生した幼虫が外に出て行かない為の措置なのだ。
宿主にされた人は全員この服を着せられて首の部分にある着脱ボタンを封印される、これを外すと首輪から位置情報が管理局に伝わり役人が僕を捕まえに来るらしい。
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