第2話

旧校舎地下──通称「幽霊倉庫」。

俺は今、なぜかヘルメットと膝パッド、そしてピュアぞうが貸してくれた「幸運のネズミの置物」(何のご利益があるかは不明)を装備していた。


「いいか、ここにあるプリント整理ボックスは、我々“変革達人クラブ”の長年の宿願なんだ。中には伝説の…いや、“伝説だと信じられていた”機密情報が封入されている!」


阿知向手のテンションは最高潮。ピュアぞうは意味なく踊ってる。黒野さんはライトで壁を照らして何かを記録していた。謎すぎるチームワーク。


「俺はまだ納得してないんだけど!てか、プリントって言ってたよね!? プリントって普通、英語とか数学の補習問題だよね!?」


「それは、カモフラージュです」


黒野さんのクールな声が響く。


「中身は、SDカード。校長の“第二の顔”を記録した動画データが収められています」


「……第二の顔って、何?何系?何の方向性の?」


「それは...ふふふふ〜ヒ・ミ・ツ、強いて言えば校長が拘束具でキメられて、よだーれダラダラあああ」


間髪入れずに黒野さんが言った。


「え?え?何言ってるの?校長が!?」


「驚くのも無理はありません。我々も最初は信じられませんでした。しかし、証拠は揃っています。そのSDカードには──」


「ちょ待て待て待て、何その情報持ってんの怖い!てか、何その執念!」


「君はもう戻れない」


阿知向手が、手にしたLEDランタンを俺に向けながらそう言った。やたらドラマチックでムカつく。


そして──


「発見しました」


黒野さんの声が、乾いた棚の奥から聞こえた。

埃だらけの木箱を引っ張り出して、その中から……あった、例の“プリント整理ボックス”。


ボロボロの紙ファイルの中に、一枚だけ妙に厚みのある書類。そして──SDカード。


「ああ、ついに……!」


阿知向手がSDカードを天に掲げた瞬間、電気が──バチン、と切れた。


真っ暗。


「え?」


「うふふふふ……い、今の音、やばく無かった?」

「ぴゅあぞうさん女言葉キモいです。」


「停電……いや、これは」


黒野さんが低く言った。


「校長が、我々の行動を察知した可能性があります」


「なんでそんな即座に対応するの!? どんだけスパイ能力高いんだよこの学校!」


「さあ──逃げましょう。証拠を持って」


阿知向手の瞳が燃えていた。


「これこそ、我らがクラブの“変革”の第一歩なのです!」


「違うよ!完全にただの暴露系クラブだよ!」

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