オクト国④
シロと黒い狼は暫く睨み合い唸りあっていたが シロが稲妻の速さで黒狼の左肩に噛みつく 黒狼は唸り声を上げるが シロは黒狼の肩を食い千切る
距離を取り 再度シロが飛び掛かる 今度は首に食いつき頭を上下に振り深く牙をめり込ませていいるようだ 黒狼も負けじとシロに噛みつく
お互いに踏ん張って深く牙を食い込ませようとするが 先に黒狼が声を発して霞となって消えていく すかさず巫女様とヤヨイが祝詞を上げ光の粒子に変えていく
黒狼だったモノが消えた後 今度はシロが金色に輝いて消えていく
「シロも力を使い切ったのでしょう」巫女様は言うが
「じゃあ シロちゃんも死んだんですか?」ヤヨイが悲し気に聞くと
「いいえ 精霊に死の概念はありません 元の場所に戻って休むだけだから 安心しなさい」ヤヨイの頭を撫でながら巫女様が優しく諭す
祠に積みあがった骨に巫女様とヤヨイで浄化の祝詞を上げ 俺が獄炎で燃やす
封印は予想通り 結界も弱り 禍々しい雰囲気を漂わせている
巫女様とヤヨイが祝詞と舞を奉納し 結界を張り直し 陣も地面に描いていく
ここも賢人のいない祠になってしまった
巫女様は早馬でセブ国とオクト国に賢人候補を送るように手配をしたと話してくれた
山を下りて九鬼島に渡るための船の手配をするが どの船主からも色よい返事はもらえない ここ一年くらい九鬼島にいった者達が誰一人帰って来ないらしい
一日中探しても破格の料金を請求するか 騙そうとしてくるかのどっちかだった
宿を取って疲れを癒していると 誰かが面会に来たと宿の人が言って来た
会ってみると まだ少年ぐらいの子が
「九鬼島に行きたいのは お兄ちゃんかい?」 唐突に聞いてきた
「そうだけど 君は?」
「僕はダイナって言うんだ 僕も一緒に連れて行ってくれるなら 僕が船を出すよ」
「君は船の操舵が出来るのかい?」ダイナを見ながら聞くと
「出来るよ これでも五年は船に乗ってるからね」 胸を張って答えるが少し震えている それでも顔を上げて拳を握りしめ俺を見上げてながら力強く言う
「何か 事情があるのかい?」
「俺の兄貴が九鬼島に行って帰って来ないんだ 兄貴って言っても血は繋がってないけどね だから一緒に上陸して九鬼島で兄貴をさがしたいんだ」
「うーん 送って欲しいけど 上陸は危険だよ」
「一緒に上陸させてくれるのが条件だよ そしたら 九鬼島に送ってあげるよ」
こんな子供を危険な場所に連れて行ってもいいものか 悩んでいると
「明日 朝に来るから決めておいてよ」
「もし 断ったらどうするんだ?」
「俺一人で行くよ ただ水の魔物から守ってくれるかなと思ってお兄ちゃんに会いに来たんだ」
「分かった 皆と相談してみるよ」
そう言うとダイナは手を振りながら帰って行った
「ーと言う訳なんだけど」巫女様 ユカリ ヤヨイに相談すると
「良いのではないですか」巫女様が言う
「危険があったとしても 私達が守れば問題は無いでしょう」
ユカリも賛同する
「私は巫女様のお考えに従います」ヤヨイは巫女様を見ながら呟く
「分かった じゃあダイナに九鬼島に案内してもらおう」俺も腹を決める
翌朝 ダイナが宿に来たので 案内を頼む旨を伝えて 皆でダイナの船の係留所に向かう 俺達全員が乗っても大丈夫なしっかりとした船だった
「それじゃ 行くぜ」ダイナが帆を上げ港を離れる 他の船は見当たらない
ダイナによると ここは海底で外海と繋がっており 潮の満ち引きもあるらしい
ここ一年ぐらい 漁が不振で九鬼島からの物流も止まっているとの事
「俺の母ちゃんは俺が小さい時に死んで 父ちゃんに育ててもらってたんだけど その父ちゃんも水の魔物に襲われて死んじまった 一人になった俺を世話してくれたのが兄貴なんだ」
潮風に吹かれ ダイナの話を聞きながら海面を見ていると 黒い影が海中をこちらに向かって来ている かなりでかい影だ
それが船に近づくと水しぶきを上げながら 海面に姿を現し襲って来た
「水の魔物だー!!」ダイナが腰を抜かし座り込む
「フン!!」ユカリが気合一閃 海面に出ている魔物を切り裂く
魔物はドロドロに溶けて消えてしまった
「ありがとう お姉ちゃん 強いんだねー」ポカンとユカリを見ながらダイナが礼を言う 「兄ちゃん達に付いて来てもらって良かったよ」
「いえ 大した事ではありません あなたは大事な人に会いたいんでしょう?」ユカリは涼し気に返す
「うん」そう呟くダイナの震える手を取ってユカリが立たせる
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