セブ国③
封印の山の麓の宿でルイーズ ハル アルは待機してもらう事ににして
俺 ユカリ 巫女様 ヤヨイの四人で祠に向かう
魔獣なども出ずに祠に着いた 中に入るとエルフの賢人が杖で大ムカデと闘っている
魔法が使えなくなったから 肉弾戦でやるしかないのか 荒い息をしながらも俺達を見つけると
「おい!! 奴隷共 こいつを何とかしろ!!」赤黒くなった顔で叫ぶ
精霊の恩恵が無くなって魔法が使えないならば 封印を守る賢人として魔力も資質も無かったのだろう
俺が飛び上がり ムカデの頭に剣を刺して地面に縫い付ける
ユカリが高速で移動しながら脚を切断していく
大ムカデは身体を大きくうねらせ 俺を振り落とそうとするが 浮いた身体の下にユカリが潜り込み 腹の部分を切り裂いていくと動きが止まり 頭を含めて黒い靄になり それを巫女様が祓って光の粒子に変えて消していく
「おお お前等良くやった 」賢人が額の汗を拭きながら言うが
「貴方は 精霊の恩恵が無いと魔法を使えないのですか?」冷ややかな声で巫女様が問うと
「何を当たり前の事を言ってるんだ 今回は魔法が使えなかったが そういう時もある」
「あなたには賢人としての資質がありません ここから出て行きなさい」
冷たい目と口調で言われ
「何故 お前ごときにそんな事を言われなければならん 躾のなっていない奴隷め」
巫女様も知らないとは 本当に賢人なのか?
相変わらず赤黒い顔をして巫女様に飛び掛かるが ユカリが足を払い転倒させる
「巫女様の仰る通り出て行かぬなら 次は首を刎ねる!!」
ユカリに睨まれ 脱兎の如く逃げていく
「酷い有様ですね」
封印を見ながら巫女様が呟く
「結界を張り直すので セイ様 手伝って下さい 私の肩に手を置いて魔力を分けて頂けませんか?」
「分かった」俺が巫女様の肩に手を置いて魔力を流すと 結界が張り直されていく
その後 念の為と封印の周りに陣を描いていき 祝詞と舞を奉納する ヤヨイは緊張した様子で目を見開いて凝視している
全てを終えて 祠の外に出る
「結界の修復もせず 現れた小物を精霊魔法で消して 賢人の真似事をししていただけのようですね 本物の賢人は追放でもしたのでしょう 馬鹿な真似をしたものです」
シロに乗り巫女様が俺達に物憂げに言うのを聞きながら 山の木々を見ると もう秋になっているのだろう 風も涼やかだ
麓の宿屋に戻る ここは一階が酒も出す食堂で二階が宿になっている
入るとエルフの賢人が店員に絡んでいた 見かねた店主が間に入り
「ところでお客さん お支払いは大丈夫なんですか?」にこやかに聞くと
「何故エルフの儂が奴隷のお前らに金を払わなければいかんのだ それに俺は賢人で お前たちを守っていたんだぞ」憤慨したように叫ぶと
「金も払わないなら 帰れ」店主が圧をかけながら言うと
「何だ 最近の奴隷は生意気な奴ばかりだな」手を上げようとするが 店主に外に放り投げられる
「お前は未だ知らないかもしれないが エルフの魔法も呪いも全て消えたんだよ」
店主に言われて 元エルフの賢人は口をポカンと開ける
「そ そんな事あるもんか!!」泣きそうな顔で言うが
「じゃあ 俺に魔法で攻撃してみろ それに前だったらエルフに反抗するだけで酷い苦痛に苛まされたが 今は お前を放り出しても何の痛みもない 俺等は自由になったんだ 残念だったなエルフの賢人様」
そう言うと 店主はドアをバタンと閉めた
エルフ賢人はヨロヨロと立ち上がり闇の中に溶けていった
朝飯を食いに食堂に降りていくと アルとハルは故郷に帰れる喜びと不安でソワソワしていた ルイーズが二人を落ち着かせようとするが笑顔になったり泣き顔になったり二人の感情はクルクル変わっている
隣のオクト国に向かう道中ルイーズが二人の手を握って楽しそうに歩いて行く
「ルイーズは相変わらず面倒見がいいな」俺が言うと
「そんなんじゃ無いよ あたいがアルくらいの時 兄貴が攫われたんだ だから 国を出て大陸中を探してたんだよ アルとハルには離れ離れになって欲しくないんだ それだけだよ」照れてルイーズは言うが 本質が優しいんだろうな
「セイ様 この先に野盗が潜んでいます」キヨミが横の藪から現れて俺に言うと
「「エッ!? 猫が喋った!?」」ハルをアルが声を上げる
「血の匂いもするわね」懐からウィンディが出て喋ると
「妖精さんだ!!」アルが嬉しそうに手を伸ばす
「こらこら 掴んだら妖精さんが可哀そうだよ」ルイーズに言われ手を引っ込めるがキラキした目でウィンディを見つめている
「さて 子供達の前で血を見せるのも気が引けるし 先に行ってケリをつけとくよ ユカリさん いいかい?」ルイーズが言うと
「承知!!」と言って二人で走り出した
暫く歩くと二人が待っていた 道の端に野盗達が積み重なっているのを横目に見ながら通り過ぎる
国境の町に夜に入って着き 宿を探す この町でも温泉があるらしく 多くの旅人がいた 俺達も良さげな宿を取り泊まる
季節は秋の初めらしく 巫女様の大好きな山の幸がいろいろな料理となって出て来る
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