勇者サマ

 肉串屋の親父に「ありゃ 何の騒ぎですか?」

肉をひっくり返しながら「勇者サマだとよ ケッ!!」そっけなく吐き捨てる

[何ですか?あれ]ルイーズが近寄ってきて「勇者サマらしい」俺が言うと

「はあ 噂で聞いた事があります なんでもドラゴンを倒したとか あれがそうなんですね セイさんより全然弱そうですけど」

巫女様達も近くに来て 全員で眺めていると

「これは 美しい方々だ 是非私と食事でもいかがです?」勇者サマが俺達を見て言うと

「お誘いは嬉しいですが 御遠慮させていただきます」にべも無くルイーズに断られてしまう

「巫女様御一行とお見受けしますが 護衛が必要ではありませんか?」

「優秀な方が同行していただいてますので不要です」巫女様がバッサリ切り捨てる

「その優秀な護衛というのは この男ですか?」俺を見ながら手を振り

「こんなのより 私の方が巫女様の護衛に相応しいと思うが」フンと鼻を鳴らす

「無礼者」言葉と同時にユカリの薙刀の刃が勇者サマの首筋に当たる

「謝れ!!」顔を真っ青にしてピクリとも動けない勇者サマ

「キャー勇者サマ!!」取り囲んでいた女性達の声で勇者サマは我に返り

「ならば お前 俺さまと勝負しろ 勝った方が護衛だ」

勇者サマが叫ぶ 「勇者サマがんばって」「そんなのに負けないで」取り巻きの女性からの声援を受け剣を抜く

「セイ様の食事が食べれないなんて 耐えられません 勝って下さい」

巫女様 俺の価値って食事だけ? ちょっとへこんでいると

「ドラゴンさえ斬り倒した 家宝グラウスの錆にしてくれる」

斬りかかってくるのを避け 剣の根元を次元収納から出した剣で叩く

再度 横から打ち込んでくるのを勇者サマの剣の根元を叩いて防ぐ

その後 何合か打ち合うが 全て剣の根元を叩いて応戦する

そして 勇者サマが渾身の一撃を打ったところで こちらも力任せに根元を打つと パキンと音を立てて勇者サマの剣が根元から折れた

同じ所に負荷を掛ければそうなるよね

折れた剣と俺を交互に見ながら呆然とする勇者サマ

「勇者サマが負けた?」取り巻きの女性達がざわつく それを見て

「よし 合格だ 俺の従者にしてやろう」

理解出来ない事を言い出す勇者サマ

「やはり 滅してしまいましょう」ユカリも物騒な事を言わないように

「残念だが 俺は巫女様の従者だからな 断る」断られると思ってなかったのか勇者サマは口を尖らせて

「何故だ? 俺様は勇者だぞ 俺と組めば富も名誉も手に入るぞ それに巫女様含めて皆 俺の仲間になればいいだろう」

「「「嫌です!!」」」巫女様 ヤヨイ ルイーズ 即答

「俺達は目的があって旅をしてるんだ」俺が言うと

「それに お前が倒したのってレッサードラゴンだろ セイさんだったら本物のドラゴンが倒せるってのに なんで弱いお前と組まなきゃいけないんだ」ルイーズが煽る

勇者サマは体をプルプルと震わせ黙り込む 雰囲気を察してか取り巻きの女性達もいなくなる


この街に大社があるらしく そこでヤヨイの正式な巫女見習いの許可をとるために 訪れる 神宮所属の巫女様の推薦だからすんなりと見習いとして認められた

ちなみに巫女様と呼んでいるが祭主と言われる最上位の人だそうだ

帰り際 護衛として何人か付けましょうと言われたが 護衛候補全員がルイーズに負けたので丁寧に断った

「あんな奴ら 囮ぐらいにしか役に立たねえよ」吐き捨てるルイーズ

ヤヨイは新しい巫女服を着て上機嫌だ 護衛の話なんかどうでもいいみたい

この街は 様様な調味料が売っているので 大量に買い込む

ユカリと一緒に商店を覗いていると違和感を覚える

「ユカリ 大きさを変えたのか?」

「いえ 変えておりませんが」

「なんか 小さくなってない?」

「いえ 主様が大きくなられたんですよ」

そう言えば体の造りもでかくなったような気がする 髪も後ろで結ばないと邪魔だし

この世界に来ても成長してるのか?

キヨミが肩に乗って

「主様 この先で勇者一行が待ち伏せしております」

ユカリにも聞こえたのか

「懲りない奴らですね やはり滅しましょう」

「いや 殺すのは駄目だから それに何かされた訳でも無いし」

市場を出るとキヨミの言う通り 勇者サマとその仲間らしいのが絡んできた

「卑怯な手を使って勇者様に恥をかかせたそうじゃねえか 落とし前はつけてもらうぞ ガキ!!」

言うや 俺達に向かって来た ユカリを止めるよりも早くルイーズが飛び出した

勇者サマと一行はものの数秒で地面に転がっていた

「あたい相手にこれで よくセイさんに挑もうとか考えたな? お前等馬鹿だろ」

またしてもルイーズが煽る

「さあ 宿に行って風呂にでも入ろうよ」

転がる一行を見ながら俺達は宿に向かう

大社の宮司さんが手配してくれた宿には温泉もあるらしい





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