第2話

 ご主人様は元の世界に戻るために様々な研究をしているようだ。


 私は元の世界に戻る手立てが見つかった時、この世界に捨てて行かれるのではないかと不安に思っていた。

 だから、ご主人様が「元の世界に戻る時は君も一緒に行こう」とご主人様が言ってくれた時は少し安心した。 

 これからも捨てられないように精進しなくてはいけない。


 少し前、私は自分の料理に納得していない時期があった。

 ご主人様は私の料理を美味しいと言って食べているが、私自身は取り立てて美味しいとは思えず納得いかなかったのだ。

 私は奴隷として買われる前に料理をした事がなかったので、ご主人様が教えてくれた料理のレシピをどうにかこうにか真似している。

 その料理が獣人の舌に合わないという訳ではない。

 ご主人様がレシピの料理を作ってくれた時はとても美味しいと感じた。

 自分では納得いってないのにご主人様がしきりに美味しいというので、ご主人様が私に気を使っているのだと思ってある時、ご主人様に「気を遣わずに料理の評価をしてください」と言った。

 しかし、ご主人様は相変わらず美味しいと答えた。

 やはり納得できなかった私は「私の料理がご主人様の料理と比べて劣っていると思っている」と話した。

 ご主人様はそれを聞いて少し考えた後に、「俺としては君の料理もオレの料理も違いなく美味しいよ。

 むしろ君の料理の方が美味しいと感じるくらいだ。君は俺の料理を完全に再現しようと思っているのかもしれないけれど、料理に正解はないのだから、もっと気楽に作ってくれ」と言った。

 どうやら私とご主人様では料理に対する価値観が違うらしい。

 今思えば、私が美味しい料理を食べたのはご主人様に作ってもらった物のが初めてだった。

 私は知らず知らずに「美味しい料理」は「ご主人様の料理」であると定義してしまったようだ。

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