第42話 パワードスーツの分解 11


 エルメアーナは棚から工具を持ってくる。

 一つはドリルでもう一つは細い刃のノコギリだった。

 そして、周囲を見回すと踏み台を持ってくる。

 線を描いた板を持ってきた踏み台に乗せると片足の靴を脱いで踏み台に乗せた板を押さえるように置く。

「ヒェル、端の方を押さえてくれないか」

 ヒュェルリーンは、言われるがまま板の端を持つと、エルメアーナは、ドリルを手に取って、描いた線の角にドリルの先端を当ててから、線の内側にずらしドリルの外側が線の内側にくるようにして穴を開け出した。

 一つ穴が開くと隣の線の角を同じように開ける。

 四箇所の穴を開けると、板をひっくり返してもう一つの線を描いた内側にドリルで穴を四箇所開けた。

 開け終わると、ドリルからノコギリに持ちかえると開けた穴に差し込むと描いた線に沿うように切り始める。

 四隅に穴を開けているので、穴から穴に描いた線に導かれるように切る。

「もう一本の長手方向を切る」

 そう言って、引き抜いたノコギリを隣の穴に入れて切る。

「それじゃあ、もう2本も先に切るから板を回転させてくれ」

 そう言いながら板の上の足をどけると、ヒュェルリーンは言われるがまま踏み台の上に乗った板を回転させると、また、足を乗せて板を固定し同じように穴から穴へノコギリで切る。

 四本の縦に長い切り込みが入った。

「それじゃあ、横方向を切ってしまおう」

 足を外しながら言うと、ヒュェルリーンは残りの横方向を切れるように板を回転させると、エルメアーナは、同じようにノコギリを穴に入れて切る。

 長手方向の時とは違い、ゆっくりと切られていった。

 擦る速度も遅く出てくる木屑も少ない。

 一辺が切り終わるとヒュェルリーンはエルメアーナを見上げる。

「ねえ、何で今度は丁寧に切ったの?」

「ああ、木の目が違うからな、縦は順目だったから良かったんだ。でも、今度は木の目に逆らって切るから、丁寧に切らないと木屑が棘になって捲れ上がったりするから、力を抑えて少しずつ切っていったんだ」

「ふーん」

 ヒュェルリーンは、そんなものなのかと言うように返事をした。

「あなた、鍛冶屋なのに、大工か建具屋のような事まで知っているのね」

 突然二人の会話にアイカユラが入ってきた。

「お待たせ、使えそうな物を見繕って持ってきたわ」

 そう言うと紐に巻きつけられた角材の束を床に置いた。

「使ってない長い棒が無かったのよ。仕方ないから、試し斬りに使った物の中から長い物だけ纏めたの。運ぶのが面倒だから焚き付け用の薪を縛ってあった紐を解いて使ったの」

 置いた角材は長さも色々有った。

 長い物でも三本取れるかどうかという長さの物が殆どだった。

「そうだったのか」

 エルメアーナは、何かを思い出すような表情をした。

「そういえば、レオンが、カミューを連れて、時々、試し斬りで遊んでたなぁ。あいつら、全部使ったのか」

 少し残念そうに答えた。


 年齢が一番若かったレィオーンパードは、エルフでは珍しい男性のカミュルイアンと仲が良かった。

 兄貴分であるジューネスティーンが、シュレイノリアとパワードスーツの開発に時間を取られる事が多くなり、卒業後は二人が一緒にいる事が増えていた。

 気の弱いカミュルイアンでは、暴走を始めそうなレィオーンパードにやめた方が良いと言うが、そう簡単には聞いてくれず、逆に説得されてしまい仕方なく付き合う事が多かった。

 レィオーンパード一人では出来なくても、カミュルイアンを仲間に引き込んでしまえば、刺激的な遊びも行える事が多く、そして、時々、行き過ぎてしまいアンジュリーンとアリアリーシャに説教される事が有った。

 その時は、説教をする側もされる側も二人だった。

 大半は、アンジュリーンがレィオーンパードとカミュルイアンが何かをしているのを見つけると、アリアリーシャを連れてきて状況を確認し、場合によっては説教になっていた。

 アンジュリーンとしても、一人だけで二人の男を相手をするのは嫌なのか、常に何かあれば、アリアリーシャを連れて二人に文句を言いにいく。

 その時、シュレイノリアを連れて行く事はほとんど無い。

 シュレイノリアでは、アンジュリーンの思った通りの意見を言ってくれるか疑問がある事からアリアリーシャに頼むのだ。

 これも、ジューネスティーンとシュレイノリアが、パワードスーツの開発に専念するようになり、残りの四人に空き時間が増えてしまった事によって暇を持て余してしまい、特に若いレィオーンパードが暴走してしまう。

 カミュルイアンには、それを押さえることが出来ず仕方なく付き合うが、アンジュリーンも同様に暇を持て余すと二人の様子を見に行き、二人の様子を見て驚いてアリアリーシャを呼びにいって男子二人の説教を行う事になる。

 アンジュリーンとしても一人で文句を言うのは、嫌だったのか、自信が無かったのか、1対2では言い負けてしまうかもしれないと思ったのか、常にアリアリーシャを引き連れて文句を言う。

 または、学校での座学において、戦略と戦術についても学んでいた事から、アンジュリーンも数的不利を意識しての行動だったのかもしれない。

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