第40話 パワードスーツの分解 9
エルメアーナは、建具の後ろにあるハンドルの固定を外すと回し始めた。
外装骨格の胴体部分は、ゆっくりと下がっていき下に置いてある梱包箱の中に入っていき、底面が底についたところでハンドルを回すのをやめた。
「それじゃあ、横に寝かせるから、二人で腰を引っ張ってくれないか」
そう言って二人を見ると、アイカユラは恥ずかしそうにし、ヒュェルリーンは、そんなアイカユラを嬉しそうに見ていた。
「ん? ヒェル、なんでアイカが恥ずかしそうに顔を赤くしているんだ?」
その言葉にアイカユラは慌てた様子で怒ったような表情でエルメアーナを見た。
「な、なんでもない!」
ヒュェルリーンは、今にも吹き出しそうな表情になっている。
二人の様子を不思議そうにエルメアーナは見比べた。
「ヒェル、何か嫌らしい事でもしたのか? そういう事なら、部屋の方でやってくれ、ここは工房だから、そういう事は控えて欲しいんだ」
「ば、ば、バカな事を言わないで! 何もしてないわよ!」
それを聞いてヒュェルリーンは吹き出してしまった。
「ふーん、そうか。だったら、腰の部分を引き摺り出すようにしてくれ、私は少しずつ下げていく」
「わ、分かっているわよ!」
アイカユラは服れた様子で言うと箱の横にしゃがみ込むと腰のパーツに手を掛けた。
「なあ、ヒェル。笑ってないでアイカの反対側を持ってくれないか? 引き摺るだけだから、脚を持ち上げるよりは力が要らないはずだ」
「フフフ。わ、分かったわ」
ヒュェルリーンは笑いを堪えるように答えると、アイカユラの反対側に移動して同じように腰のパーツに手をかけると、手前のアイカユラの手を見てから顔を見た。
そこには、まだ、恥ずかしそうにして、視線を合わせないように横を向いているアイカユラが居たので、その顔を見て、また、吹き出した。
それに反応するようにアイカユラは、恨めしそうにヒュェルリーンを見ると、その視線が合うと笑いを堪えるようにした。
「ごめん。反応がとても可愛かったから、つい」
言われてアイカユラは、また、顔を赤くして俯いた。
「本当に」
それ以上の言葉を言う事はなく、今度は、エルメアーナの方を見た。
「それじゃあ、初めてもらえるかしら」
「ああ」
ヒュェルリーンは軽く外装骨格の腰を前の方に出すように力を入れると、それに合わせるようにアイカユラも力を入れると、エルメアーナは、ゆっくりとハンドルを回していく。
外装骨格の腰が前に出る程、ヒュェルリーンとアイカユラは力が必要となり、顔が徐々に強張った。
「止める」
エルメアーナの言葉を聞いて二人は力を緩めると、外装骨格が梱包箱の淵に引っ掛かって斜めに止まっていた。
「ねえ、ここからどうするの? 建具を外したら、そのままドスンって落ちちゃわない?」
「ああ、そうなる。だから、もう一つ用意してある」
そう言うと、棚に移動して何かを持ってくると、建具の一番上に固定した。
その部品には金属製のチェーンに先端には金属のリングが付いていた。
固定が終わると、もう一度棚に戻りロープを持ってくると、そのロープを右腕から入れて左腕から出すと、建具のチェーンを下げるため外側に付いているハンドルをグルグルと回し出した。
ハンドルがグルグル回ると金属のチェーンが、ゆっくり降りてくる。
外装骨格の胸まで下げると、ロープの両端をリングに入れて縛り、今度はハンドルを逆方向に回しチェーンを引き上げた。
ロープがピンと張り胴体が少し上がるとハンドルを回すのを止めると、外装骨格を固定していた胸を持ち上げるように取り付けていた部品を外す。
建具の後ろに戻ると、胸を固定していたハンドルを回して外装骨格を固定していた固定板を上げていく。
外装骨格の胴体は、チェーンとロープで吊り上げられた状態になる。
「それじゃあ、梱包箱に下ろすぞ。二人で腰側を引っ張ってくれ」
二人は言われるがまま、先程と同じように腰の部分に手を添える。
エルメアーナは確認すると、チェーンを下ろすハンドルをユックリ回し始めた。
徐々にチェーンが降りると二人もユックリと引っ張った。
エルメアーナは、肩の部分の様子を確認しながらハンドルを回す。
「もう、引っ張るのはいい。アリーシャの胴体は短いから、この位で梱包箱に収まる」
言われて二人は手を離した。
ユックリ胸のパーツが下がっていき、ロープが緩むとハンドルを回すの止め、ロープを外し外装骨格から引き抜いた。
「これで、アリーシャの外装骨格は収まった。後は固定して外部装甲を入れるだけだ。アイカ、中蓋用の板も頼んであったんだろ」
「ああ、店に置いてあるわ。取ってくる。蓋も一緒に置いてあるから、そっちも一緒に持ってくるわ」
「ん? 蓋と中蓋となると枚数が多くないか?」
「大丈夫、台車に乗せて持ってくるだけだから、直ぐに行ってくるわ」
そう言うとアイカユラは工房を出て行った。
その姿を見送るとエルメアーナは建具を片付け始めたので、ヒュェルリーンもそれを手伝った。
建具を壁際に移動させると、アイカユラは台車に何枚もの板を乗せて帰ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます