16. 何事も「マニュアル通り」にはいかない。

 とある場で、発達障害の子どもに関わる仕事をすることになった、というひとから、こんな質問があった。


「どうしたら、信頼関係を築けるようになりますか?」


 すると、こんなような回答をするひとがいた。

「私は発達障害のお子さんと関わる仕事をしています。

発達障害の子供達は予定変更になると、パニックになりやすいです。

急に予定が変わったり、急に大人が変わったりする時は、その子に分かりやすい説明の仕方をしてあげると、パニックになりにくいです。その子がしたい事を自分で決めさせてあげる事を心がけてください。」


 まとめると、こんな感じだった。これを読み、私が思ったことは


「なんだか、マニュアルみたい」


 それとともに。

『発達障害の子供達は』という一文が気になった。

 言っていることは、確かに「傾向」として強い。

 ただ、それが「発達障害の子ども全て」に当てはまるわけではない。


 たとえば我が家の兄は、細かい説明をすることが、逆にパニックを悪化させることが多い。

 どちらかというと、「簡潔に」のほうがパニックとまでならないこともあるし、説明をすることで、逆に本人が極度に「かまえて」しまう。

 ひとえに発達障害といっても、様々な障がいがあるし、その子の特性や考えが皆同じではない。

 何事もそうだが、「彼らはこうだろう」なんて考えで挑むと、なんやかんやズレが生じる。

 

 「信頼関係を築く」となる時、何が大事かとなると、まず彼らをよく見ること。つまり「観察」だと、私は思っている。

 何に喜び、何を嫌い、どんなときにテンションの上がり下がりが起こるのか。そして、どうしたらパニックが起こりにくくなるのか。なった時にどんなふうに接すると、負担少なく収まるのか。


 それそのものが、それぞれ違うのだと思う。傾向は、あくまでも「こうなりやすい」であり、「必ずこうなる」とは限らない。

 マニュアルが悪い、とは言わない。けれどもっと大切なことは、自分の眼で視てしか、わからないことも多い。


 これ自体が、「私はこう思う」だから、絶対正しいとまでも言わないし、故意に、誰かの否定をしたいわけでもないのだ。

 

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