第2話 「幽霊トンネル」

 Yさんの町には「幽霊トンネル」という有名な心霊スポットがある。子どもの泣き声が聞こえるとか、赤いワンピースを着た女の人が出口に立っているとか、そういう話をよく聞く。

 怖いもの好きのYさんは、高校の友達を何人か誘って幽霊トンネルに行くことにした。トンネルの中は薄暗く、どこか陰気な感じがする。懐中電灯を持つYさんに友達が引っ付くようにして、慎重に歩いた。

 トンネルの真ん中まで来たところで、友達のうちのひとりが、「ぎゃあああっ」と悲鳴をあげた。

 Yさんたちはパニックになり、走り出した。「やばい、やばい」「逃げなきゃ」「早く」口々にそう言いながらトンネルを抜け、外に出た。明るい場所で全員いることを確認すると、そのまま解散になった。みんな気力と体力を使い果たしていて、口を開く気になれなかった。

 それ以降もYさんたちは学校でよくつるんでいたが、その時のことを話す人はいなかった。なんとなく、それにふれてはならないという雰囲気が流れていた。

 その時のことが話題に上ったのは、数年後の同窓会だった。

「あの時の肝試しは怖かったよな」

 友達のSさんの言葉に、Yさんも「ああ、とにかくすごかった」とうなずいた。そしてふと思い返して、「で、結局あれはなんだったの?」と聞いた。

「なんだったのって?」

「誰かがぎゃあって叫んで、それで逃げたわけじゃん。誰が叫んだんだっけ? そもそもなにを見たわけ?」

 Yさんの問いかけに、友達は首をひねった。誰も、叫んだ記憶のある人はいなかった。しかし、なにかに出会ってしまったということは覚えている。実際、走っているとき、「逃げなきゃ」と何度も言っていた。

 Yさんたちはいったい、なにから逃げていたのだろう?

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