09
「好き……しゅき……しゅきぃ」
もう起きなければいけない時間なのにまた唐突にやって来た日向のせいで起きられないでいた。
それより好きとはどこから出てきてどういう類のものなのか、やはり紫月の妹ということで期待されてしまっているのだろうか。
だが現実は残酷だ、紫月みたいには絶対にならない。
「うわ……あんた寝ているゆうになにをしているのよ」
お家に上げたのは紫月か七月か、それでもここまでやるとは誰も考えつかないだろう。
「うわ!? も、もういきなり入ってくるのはやめてくださいよ!」
「いや、ゆうからしたらあんたの方がそうでしょ。つかやっぱりゆうが本命だったんじゃない」
告白をされた側としてはどれぐらいそこに気持ちが込められているのかわかるのかもしれない。
「ぎっ、あっ、わ、私は確かに紫月さんが好きでしたけど……?」
「はい嘘ね、なんで本命に告白をしないであたしに告白をしてきたの?」
ここで聞くことではない、素直に吐いたりしない。
「それは……受け入れてもらえないと思ったからです。でも、なんかゆうも私といられる時間を気に入ってくれているみたいですし……安心したら今度は止まらなくなってしまいました」
「え、吐くの?」
そういえば最初のとき萌木に対してもこうだったか。
あまりに自然すぎてついつい起きてしまった、だからこちらを見ていた日向の顔がどんどんと赤くなってそのまま後ろに倒れそうになったのをなんとか抱きかかえることができた。
「あ、あんた起きて……?」
「起きた」
「そうじゃなくてっ、さっきの聞いていたってこと!?」
「『好き……しゅき……しゅきぃ』から」
流石にそこまで言われたらなにも影響を受けないなんて無理だ。
「ぎゃ、ん!?」
「心配しなくていい、そこまで熱烈に求められたら応えるしかない。元々僕は日向のことが気になっていた状態だったんだから寧ろありがたいぐらい」
これ以上は七月に怒られてしまうからこの前みたいに手で押さえて止めるしかなかった。
言葉だけでは足りないかもしれないからついでに抱きしめておく、おおこんな感じかと今回も盛り上がっていた。
「はは、ゆうもちゃっかりしているわねーそうだ、今日はあたしが家事をするから朝はゆっくりしなさい」
「ありがと、今日はお願いする」
「任せなさーい」
起きた瞬間からここまでゆっくりできるのは久しぶりだ。
「す、好きだから」
「ん」
この好きには効果があった。
とはいえ逃げたいほどではないから完全に気持ちが理解できるまでには時間がかかりそうだ。
「だからいまからは関係が変わったってことで……いい?」
「日向がいいなら」
「あ、でも、偽物とはいえ他の人に告白をしたばかりだけど……」
「気にしなくていい、僕は寛容な人間」
「はは、自分で言ったらおしまいだよ」
実際にそうだからそう答えるしかなかっただけでしかない。
「でも、ありがとう」
「ん」
これで紫月に言葉で刺されることもないだろうから朝から気分がよかった。
ただ寝ている時間を狙われるのは少し怖いからちゃんと起きているときに来てほしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます