第36話 不穏なもの
クロックは報告を受け取り、目を走らせ、驚愕する。
天狼星の町の取り壊し計画なるものがそこには書かれていた。
クロックは何度か読み返し、それが正気のものであると理解する。
天狼星の町が、邪魔だというものがいるらしい。
いろいろ小難しい理屈を付けてはいたが、
要は理解できない天狼星の町があるということ、それがよくないらしい。
返事がなければ強硬手段に出るとも書かれていた。
クロックは、あわてるより先に怒りを覚える。
この町を勝手にさせてなるものか。
天狼星の町が永遠にあるとは思えないが、
この町をこういう形で終わらせたくはない。
クロックは他の老頭に相談する前に、自分の腹を決める。
とにかく、この町を守る。
国というものが、この町は領土というものであると主張しても、
天狼星の町は国というものの持ち物じゃない。
この町は住人を巻き込んで成長してきた。
いまさら壊されてたまるものか。
こちらから宣戦布告はしない。
ただ、まずは怒りを伝えよう。
この純粋な怒りで、取り壊し計画を提案してきた奴を焼き尽くせそうだ。
クロックはそう思う。
電気街中心の老頭が集う。
タケトリもチャイも報告は受け取ったようだ。
どうするべきか。クロックは多少気持ちを昂ぶらせながら、相談する。
タケトリは、いつものようにゆっくりと戦う意思を話す。
穏やかなタケトリも、こういう顔をするものかとクロックは思った。
クロックは、考えるまでもなく、この町を守るという意思を話す。
チャイは二人の意見にうなずいたあと、
では、住民の命と天狼星の町を天秤にかけられたら、
と、表情薄くたずねる。
クロックは、虚をつかれる。
同じものではないのか、と、タケトリは問う。
チャイは少し考えると、
町と住人は一体かもしれない、でも、どちらかを選ばなければならなかったら。
タケトリはうなずく。そういうことかと言いたげに。
クロックは答える。
何も失わない手段もあるはずだ。と。
理不尽なものへの怒りが、クロックを突き動かす。
何も失わせない。失ってたまるかと。
チャイはちょっとだけまぶしそうに、クロックを見ていた。
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