二十通目 一口二音
最も広い草原に一口に二回話す少女がいるという。そのことを聞いた一人の写真家が興味本位で会いに行った。遊牧民たちに彼女のことを尋ねたところ、成人女性を紹介された。こいつは怪しい、やはり単なる噂だったかと思いつつ、とにもかくにもこんにちはとあいさつしてみる。すると彼女はこんにちはと初めましてを同時に言った。こりゃ本物だぞと驚いた写真家はどうなっているのか探ろうとしばらく話したが、彼女はやはり一度に二音を使う。そうですねと噓でしょうを同時に言い、冗談と謝罪を一回で口にする。
降参した写真家は風に波立つ草原に彼女を立たせて写真を撮った。別れ際、彼は訪ねた。あなたは少女だと聞いていた。彼女は答えた。
それは寂しくはないのか。
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