十八通目 砂上の彫刻

 砂漠を歩いていた旅人がふと顔をあげると遠く離れたところに人がいる。北を指差し動かない。どうしたかと思い近づいて気づいた。像である。砂でできている。触ると崩れた。

 旅人は像の指していた方へ進んだ。すると街を見つけた。オアシスが中心にある。水を浴びて休んでいると声をかけられた。

「どこから来なさった?」

 旅人は答える。

「南、遠くの方から」

「よくぞ来られた」

「像に助けられました」

「なるほど」

「あの像はここの人たちが?」

「ええ、なったんです」

「はぁ……親切な方たちで」

「そうでもありませんよ」

 どういうことかと旅人はいぶかしげに相手の様子をうかがった。

「あの像を見てやって来た人は二度とここから出られなくなるのです」

 馬鹿なことを、と首を振った旅人は街を出たがどう進んでも出発した街に帰って来る。以来、旅人はそこで暮らしている。像になり砂に還る日を待ちながら。

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