#006 編入生ですが①
どうもこんにちは!長谷部慎です!
今僕は魔術学園行きの列車に乗っています。いやぁ〜窓から見える景色がのどかでいいですねぇ〜!
「なにボーッと眺めてるの」
クロエに釘を刺された。ごめんなさいね。
「ごめんごめん」
「あんたは学園長に直々に会ったり、色々と手続きで忙しいんだから」
「へぇ……」
「今のうちから、気を、引き締めときなさいよ……」
そう言うとコケっと眠りについた。
お前じゃい!
にしても、結構長い距離を走る。長いってのはそういう意味だったのか?
てかさぁ、そもそも魔法の学校に列車で向かうって時点でアレだぜ!正直世間からの目が怖いぜ!
これで二割が死ぬとか言われたら魔剣までからんでくるからな。ラノベって怖いもんだ。しっかり被らないようにやっていかねばならぬ!
え?僕のせいで違う?それはそう。
しかしもう一時間経ったものの全くその学園とやらが見える気配はない。
畑と森が続くだけ。え?大体こんなもんだって?言ってやるんじゃないよ!
なんなんだ!まさか一日かかるとかじゃあるまいな!
「———なぁなぁなぁ」
なんか突然呼ばれたので後ろを振り返る!
するとなんか筋肉ムキムキの男が現れた!
誰⁈
「え?何?」
「あんたなんか食いもん持ってねぇか?」
「え、何どうしたの」
「中で食うもん忘れてきてよ、後で代金は払うからなんかくれねぇか?余ってたらでいいからよ」
「あぁ、なら———」
マルタさんが持たせてくれたサンドイッチがあった。
取り出して見せる。
「うわっデカッ」
そうなのだ。正直辞典と見間違うような分厚さを持っている。流石にそこまで腹が減るほど育ち盛りなわけでもない。そんな食わないし。
「いいのかよこんなの」
「腹減ってないんだ俺」
「そっか———申し訳ないな」
「別にそんな」
「俺ニックス・ベイアー。編入生なんだ」
編入生⁈
あれ?どういうことだ?
「編入生って何?」
「途中から入る奴のことだよ、二年生からだな、多分あんたも俺も」
「俺も⁈」
「胸にバッジがあるだろ」
「え?」
胸を見てみると、何やら緑色のエムブレムがあった。これで学年を判別するというのか!中学校じゃあるまいし!
「……じゃあ俺も編入生だ」
「なんだ!仲間だ!よろしくな!」
そういうとゴツゴツした逞しい腕をこちらによこしてきた。
ということで握手します。
「俺は長谷部慎」
「ハセベ・マコトか」
なんか違う気がする〜!!!
まぁいいや。
「それじゃ隣座らせてもらうぜ」
するとどかっと横に座る!
何だこいつ!やたらと距離を詰めてくる!レスリングかな。
二つの椅子が向かい合うような形になっているので、俺とクロエ合わせても後二人は座れたのだ。
なので問題はなし。
まぁこの際知り合いは多いほうがいいだろう。なんでも相方がコミュ障と聞いてるもんで。
「にしてもほんとに長ぇよな」
すでにサンドイッチに齧り付いている。
具が前に出てきていた。押さえろ!押さえろ!
「これほんといつ着くの?」
———かと思いきや、何やらだんだんもやに包まれてきた。
いや本当に真っ白!何も見えない!今ここどこ?
まさかこれがワープとかそういうのだったりするのかな?いやそれだったらもう魔術じゃなくてホラーじゃない?
しかしそんなもやも一瞬。そんなに隠したいものがあるのか。女の子みたいだ。
———ついにその姿が露わになった!
石造の建物だ。だがとにかく巨大。てか少し高いな———あ!なんか高い柱の上に、台みたいな感じの地面を作って、その上にあるんだ!
てことは登ってきたのか?
「うーん……うーん……」
クロエがうなされながら両耳を押さえている。多分そういうことだろう。
「やっぱでけぇなぁ」
「聞いてたんだ」
「お前逆に聞いてないのか?」
「昨日決まった」
「そんなことある⁈」
そんなこんなで、だんだんとホームが見えてきた。
あのやな音を立てながら止まる。
なんかゾロゾロと後ろの方から前の方から人が降りていく。あんまりアレに合流してたら疲れるからね、しばらく待っておいた方がよろしい。
クロエを見ると鼻提灯を出して眠っていた。
「相当疲れてたんじゃないのか?」
ニックスがすごく心配そうに見つめる。お前いい奴だな。
———いや!昨日か!そりゃそうだ!
俺はなんて酷い男なのだろう。
どうしようか?取り敢えずもう少し寝かしておくか?いや式の時間とかもあるか?
てか俺何も知らねぇ!なんだこれ!
「取り敢えずさ、学園長室まで行ったらいいんじゃね?」
「そりゃどういうことだ?」
「普通は編入する時一ヶ月前くらいに学園長と対面しないといけないんだよ、でも急に決まったのなら完了してないから、多分それからやるんじゃねぇか?」
「へぇ……なるほど」
「今日は新学期始めだから、多分授業とかもないはずだ」
「ありがとう、じゃあそうすることにするよ」
「じゃ、また後で会おうぜ」
そう言うとニックスは荷物を持って降りていった。
ありがたい人だ。またいつか会おう。
ということで、クロエをおぶって誰もいなくなった頃にホームに降りて、そのまま駅を抜けた。
———すると何やら街がある!普通に店がある!人がいる!家もある!
じゃあここに住めばいいんじゃねぇの?
と思ったがそう簡単にいく話でもないのだろう。
ということでとっとと目の前の巨大な塔みたいな石造りの建物———エムブレムと同じマークが刻まれている———を目指していくことにした。
しかし何やら目線が痛い。
確かに何でおぶりながら登校してんだ。びっくりだよ。俺もそう思う。
そんなこんなで真下に到着!すると何やら確認する窓口みたいなのがある。改札口みたいなイメージ。つまり何かしらの確認がないと通れないんだろう。
「すいません」
ということで窓口のお兄さんに話しかけてみました。
「いかがしました?」
「僕今日からの編入生なんですけど、通してもらえませんか?」
「確かにバッジがありますが———一応学期初めなので、証明書もいるんですよ」
証明書!
そんな手続き面倒なら先に言っておいてくれよ!困るの俺じゃない!
ということでクロエのバッグをゴソゴソとあさくると、それっぽいものが出てきた。
てか何で異世界の言葉がこうもわかるんだろうか?何かしらのメカニズムがあるんだろう。魔術が使えるのも同じ。
「はいこれ」
「オッケーです」
ということで、門をくぐり、俺は新たな地に立った!!!!!!!!!!!!
とかしている場合ではない。今すぐ学園長室に行かねばならない。できるだけ早い方が良いはずだ。
しかし。
背中には一度下ろしたのにまだ起きないクロエがいる。
ということで保健室を探すことにする。
案内を見ると、塔の中に色々とそういった事務的な機能は集中しているらしい。
ということで中に入ると、すぐに保健室の看板が出てきた。
やたらでかい!そんなみんなサボりたがるのか!
それに従うとすぐに見つかった。
コンコンとドアをノックする。
「入っていいですよ」
そう女性の声に呼ばれて、ドアを開ける。
中にいたのは、白衣姿の女性だった。キリッとした顔つきをしている。そうでもないと成り立たない職場なのか?嫌ですね。
「どうしたんです?」
「この人疲労で眠っちゃって」
そう言いながらクロエをベッドに下ろして寝かせる。
「なるほど。新学期早々何してるんですかね」
「さぁ……」
「何そんな冷や汗かいてるの」
「ハッ!」
バレた!
関係してないとは全く言えない!
「俺、とにかく用事あるんで!お願いします!」
面倒くさいのでとっとと抜け出す!
「あ、あぁ、わかりましたー!」
しっかり連絡してくれた。いい社会人。
さて先ほどの地点に戻ると、他の場所を看板がしっかりあった。じゃあ何で保健室だけでかいんだよ。
目の前には螺旋階段。
そして学園長室は最上階とのこと。わかりやすくていい立地!
とっととぐるぐる登っていき、そしてついに目的の部屋らしきドアについた!
ノックしてみる。
しかし返事はない。
さてどうしたもんかと辺りをよくよく見てみると、『用があるなら先に入っておいてください』との張り紙があった。
大丈夫かそれ⁈
しかし郷に入っては郷に従え、ルールは守ります。とっとと中に入る。
———変わった空間だった。
他の建物が灰色みたいな普通の石造りなのに対し、ここは真っ白。しかも材質は石のように感じられない。プラスチックとかか?
そこにカラフルなまだら模様がいくつかある。なんだこれ。アーティスティック。
絵も飾ってある。写真じゃないんだ。
立派な白髭をたくわえたとんがり帽子の老人。そりゃそうだ!魔術学園の長なんだから!
正面には大きな机と装飾が豪華な椅子。
多分あそこに座るんだろう。
ということで落ち着かない。
しかし隅っこに椅子があった。
そこに座って学園長を待つことにする。
———すると、ドアをノックする音が聞こえた。
急いで開けると、そこには子供がいた。
———性別はわからない。中性的だ。妙に落ち着いた目をしている。大人びている。真っ白な髪もそれを増長させている気がする。そして真っ黒なローブにとんがり帽子。
———何か学園長と関係があるのか?
「どうしたの君、学園長のお子さん?」
「うん、そうだよ」
「へぇ、こんな遠いとこまでお父さんに会いに来たんだ」
「パパあんま遊んでくれないから」
「へぇ、まぁ仕方ないっちゃ仕方ないけどなぁ」
「そんなこと言わないでよ!遊ぶのは子供の正当な権利だ!」
なんだこいつ……自分の権利を主張し始めたぞ⁈
今時の子供だ!
「へぇ、頭いいんだね」
「まぁね!」
胸を張る子供ちゃん。すごくらしくていいと思います。はい。
「お父さんいつ来るか知ってる?」
「えー?わかんなーい」
「じゃあ仕方ねぇな……」
ということでボールを出した。
かなり柔らかいボールだ。額縁を割ったりできないくらいね!
「これでも転ばして遊ぼうか?」
「うん!!!」
飛び跳ねて喜ぶ子供。
ということでなんかその辺にあった木の棒をボウリングのピンに見立てて並べる。
「転がしてこれをより多く倒した方が勝ちだ」
「わかったー」
子供がボールをコロコロと転がす。
全部倒れちゃった!!!
「やったー!倒れたー!」
「すごいすごい」
拍手をしておく。並べ直して、さて。
「それじゃ次は俺の番だ」
———うまく力を抜かねばならない。
ボールを、限りなく曲がらせる!もうそりゃ蛇みたいに!
その通りに限りなく外角を描きながら、ボールはコロコロと、先っちょのピンだけ倒していった!
「あー!しまった!俺の負けだ!」
「おにーちゃんかっこわる〜」
くすくす笑われた。
そりゃまぁ仕方ないことでしょう!
「……飽きた!」
「もう?」
まぁ子供は好奇心が旺盛だからな、目移りもしやすいことだろう。どうしよう。これ以上何ができるだろうか。
道具を使わずに勝ち負けが決められる遊び。
じゃんけんだと、味気ないですよね。
「よし、じゃああっち向いてホイしよう」
「なにそれー」
ということで取り敢えず右を指してみる。
「……この時右を向いたら君の負けだ」
「あー!そういうことかー!」
「よし!やってみよう!じゃんけんでそうする方を選ぶんだ!」
「うん!」
てかそもそもじゃんけん通じるんだ⁈
「「最初はグー、じゃん、けん!」」
俺が負けた!
「ほい!」
上を指す!しかし俺は下を向いた!
「「じゃん、けん!」」
俺が勝った!
「ほい!」
右を指す!しかし子供は左を向いた!
「「じゃん、けん!」」
子どもがまた勝った!
「ほい!」
左を指す!しかし俺も向いてしまった!
扉の方だ———あれ?なんか扉がコンコン叩かれてる気がするぞ⁈
「ハセベーーーーーーー!!!」
そう叫びながらクロエが扉を勢いよく開けた!!!
「クロエ!」
「あんた、何先に行ってんのよ!」
「いやぁ、疲れて寝てたから……」
「でも先に行っちゃダメでしょ!!!」
「いやぁ、でもほら、お子さんが……」
「———あ、あ、あ」
するとなんか顔面が青くなっていく。病人だからだろうか?しっかり休め。
「———が、が、学園長⁈」
———へ⁈
「や」
そう右手をパッとあげる学園長!
その表情は———確かにあの、老人がする穏やかな笑みだった!
———そんなことある⁈
———てかだったら子供の真似が子供の真似すぎるだろ⁈
怖いよ!すげー怖いよ!何この学園!
———魔術学園だったわ。そういえば。
———多分序の口。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます