34話 もはや嫌がらせ



 さて、どうしようか。



 あの性悪猫のことだ。どこかで俺たちを見て、楽しんでいる可能性もあるし、本当に先へ進んでいる可能性もある。


 一刻も早く見つけ出してこの地獄の空気から抜け出さねば。


 探知魔法を使って探ろうか?


 ……いや、意味ないか。

 探知魔法は自身の魔力を広げて他の魔力と衝突する際に発生する揺らぎの形や大きさを感知する魔法だ。



 本来、生物は魔力を持っているから当然探知できる。

 だが、高ランクの冒険者や近衛騎士などの実力者達は魔力を隠蔽する術を持っていることが多い。


 おそらく、ステラもそれができるのだろう。

 現にカーラも何度か魔力探知を使用しているが、表情から察するに捉えていないと思う。


 そこを踏まえると俺も無駄撃ちになる可能性が高い。


 となんだかんだ言い訳するが、1番の理由はあれは頭が痛くなるから使いたくない。

 なんで、カーラはあれを連発して涼しい顔をできるのだろうか。


 化け物かな?


 不思議に思いつつもカーラの後を追っていると、茂みからガサッと何かが飛び出した。


「〜っ!?」


 何を言ってるのか分からないが、悲鳴に近い声が聞こえた。驚いたのか、魔力の制御が乱れている。

 そう。乱れて、


「イッ……!?」


 やばい。

 カーラが杖を召喚して魔法を行使しようとしている。


「おぉい!? やめろバカ!」


 咄嗟に後ろから羽交締めにした。嫌われるとか、もしかしたら魔法をぶっ放されるとかの心配をしている場合ではなかった。

 もし、あんな状態で使えば魔力暴発を引き起こすかもしれない。

 そうなれば、森が半壊する。


 命の危険である。



「お、落ち着いたか?」



 さて、最悪の事態を防げたは良いがこの後のことは考えていなかった。


 どうしたものか。殴られるだけで済むだろうか? もしかしたら、触れられたことを件に魔法で殺されるかもしれない。


 痴漢して死ぬとか嫌な死に方だなぁ。


「は、離してください!!」


「お、おう。悪い」


 ジタバタと暴れるので、そっと離して距離を取る。さぁ、来い! やるならもう一思いにやってくれ!


 と待ち構えるが中々に来ない。


「魔法ぶっ放さないのか?」


「やりませんよ」


「俺、お前の体に触れちゃったのに?」


「……まぁ、あれはどう考えても私が悪かったので」


 カーラは若干気まずそうな顔をする。うん、まぁ確かにそうだな。危うく森がとんでもないことになるところだったし、俺も巻き込まれるところだった。


 うんうん、俺偉い。


「じゃあ……」


 じゃあ俺に感謝しろよな、と軽口を叩こうとして口が止まる。

 カーラがギロリと睨みつけてきたおかげだな。

 危ない。また、やらかすところだった。


「じゃあ、なんですか? 止めてやったのだから、何か礼でもしろと?」


「いや、別にそういう訳じゃ。ただ、いつもの癖でじゃあ俺に感謝しろよなって軽口が出かけましてね、はい。けど、相手があなただったので寸前で止めた訳ですよ、はい」


 なんか妙な勘違いしてそうだったので全部ゲロったが、果たしてどうなるか。

 


「……そうですか」


 カーラは小さく呟くと、また歩き出した。

 セーフ! 良かった。どうやらお咎めはなしらしい。


「……ふふ」


 笑い声がした。

 声がしたのは前方からすぐ近く。


「あはは、もうちょっとで森が大惨事になるところだったよ。止めてくれてありがとう、グレン」


 微笑を浮かべたステラがこちらへ向かってくる。


「お前、やったな?」


「えぇー? なんのこと?」


 とぼけているが、先ほどの茂みの件も絶対にこいつだ。もう言い切れる。俺と同じ思いなのか、カーラもかなり睨みつけているし。


「にしても、カーラに触れるなんてすごい度胸だね。もしかしたら、今度は殺されるかもしれないのに」


 うん、本当にね。俺ももしかしたら殺されるかもしれないとか考えてたよ。


「さ、流石にそこまではしませんよ。3ヶ月くらい再起不能にする程度です」


「それ、全然安心できないからな?」


 何でちょっと安心してくださいみたいに言ったんだよ。不安しかねぇよ。



「うんうん。カーラの泣きそうになりながら慌てふためく姿も見れて、二人の仲も深まって。私も頑張った甲斐があったね」


「努力の方向性間違えてるだろ!!」


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