32話 肝試しもどき
ヘイル森林の更に奥地。
爽やかな森の風景は一変して、不気味な雰囲気を醸し出している。
「さ、ステラ様。足元にお気をつけてお進みください」
そんな雰囲気さえ、今の俺には関係ない。ステラの前を先導して、安全を確保する。
エスコートするように心がける。
このようにエスコートして機嫌を取れば、もしかすると気分を良くしてくれるかもしれない。
そうなれば早々に報酬を渡してくれるかも。
そうすりゃこっちのもんよ。受け取ったらさっさと帰るだけだ!
「斥候の私より先に人がいるって、なんか不思議な感じだ。けど、うん、悪くない気分だね」
「ははは。それは何よりでございます」
「うん、若干ふざけてるね?」
「ははは。いやいや、そんなまさか」
ただ金貨10枚に釣られて舞い上がっているだけでございます。小市民なものですからねー、私は。
「まぁ、どちらにせよ前を歩いてくれるのはありがたいけどね。ここ、出るって噂だから」
「え、何が?」
「そりゃ、ねぇ?」
ステラの意地の悪い笑み。
出会って間もないが、こいつのこの顔を見たらなんだか嫌な予感がする。
「あー、一応聞いとくけど何が出るんだ?」
「私も噂で少し聞いたくらいだけど。なんでも幽霊が出るらしいよ」
幽霊、幽霊と来たか。
確かに魔法やら不思議な力があるこの世界なら、もしかすると幽霊もいるかもしれないな。
「……あんまり怖がってないね」
「まぁ、うん。そうだな」
別に怖がる必要がないからな。
むしろ、幽霊なら是非とも会ってみたい。
無論、友好的な幽霊だけど。怨霊とかやばいタイプの奴はノーサンキューだ。
「まぁ、もう一人はそうでもないようだけど」
え、もう一人?
つーことはもしかして。
「べ、べべべ別に全然怖がってないですけど? わ、わわわ私は幽霊なんて信じていませんし、い、いたとしても魔法で迎撃しますので」
なんてカーラは強がっているがカミカミな上に、さっきから尋常ではない程に震えている。
こいつ絶対に。
「幽霊が怖いのか?」
「は、はぁ!? 全然怖くなんてないですけど!? 余裕ですよ! 余裕!!」
「あ、はい……」
顔を真っ赤にして、今日1番の大声だ。あまりの迫力に怖くてそれしか言えない。茶化したら、マジで魔法ぶっ放してきそうな雰囲気が、こいつにはある。
「ステラもいい加減なこと言わないでください!」
「ふーん、カーラも怖くないんだ?」
「全然、これっぽっちも怖くないです!!」
「へぇ、そう」
あ、また悪い笑みだ。
カーラはやってしまったと言わんばかりに口を塞ぐが、遅い気がする。
なんか、ステラのやりそうなことがなんとなく予想がつく。
「じゃあ、別に大丈夫か。私は噂が本当か先に行って確かめてくるね」
「え、ちょ!」
カーラが引き止める先に、ステラは森の奥へと消えた。
沈黙。
俺たちの間には気まずい空気が流れ始めた。
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