31話 これでお別れ、と思いきや
クエストが終了した。
つまり、金貨三枚が確約されたと言うこと。
頑張って耐えてみるが、頬と口角が吊り上がってしまう。
むふふ。
ぐふふ。
「気持ちわる」
遠くで本を読んでいたカーラがぼそりと辛辣な言葉を投げてきた。
だが、許そう。今の俺にはあらゆる罵詈雑言への耐性がある。
金貨三枚、この単語を聞くだけで俺は無敵だ。
「うわぁ、顔すごいことになってるよ。大丈夫?」
「あぁ、気にすんな。ちょっとこれから入ってくる金の使い道を考えているところだ」
何に使おっかなー。ちょっと良いとこのディナーに行ってー、そのまま街でショッピングでもするかぁ?
それとも、キャンピング用品でも買って、スピナーと一緒に遊ぶか?
うーん、キャンプにするなら、海か川。
どっちにしようか。
いや、それよりもうこいつらと一緒にいる意味はないよな?
なら、とっとと離れてしまおう。
「じゃあクエストも終わったんで、さいなら。手伝いサンキュー」
「まぁ、まぁ。そう慌てないで」
「いや、慌ててないから。すんげー冷静だから。手ぇ離してくんない?」
なに? お前。俺の肩になんか思い入れでもあんの?
「その嫌そうな顔……あっは。やっぱり君、良いね」
「だから何が!?」
もはや、こえーよ! 何考えてんだよ! これ以上付き合ってられるか!
「じゃあ、俺はもう行くから! じゃあな!」
「そっか。残念だけど仕方ないね。あーあ、せっかくこれあげようと思ったのになぁ」
歩き出した足が止まる。何かをくれようとした?
ランク8の冒険者が何をくれようとしたのか、とても気になる。
駄目だと分かっていても、首が勝手に動いてしまった。
「それは!」
思わず、でかい声が出た。
ステラの持っていた一枚の紙切れ。
ヒラヒラと揺らしている紙切れは、街で1番有名な高級店の優待券。
「更に、これも10枚くらい付けようと思ってたのに」
指の間から出てきた輝かしい金色の貨幣。
手品かな?
「もうちょっとだけ、付き合ってくれたらこれあげよーと思ってたのになぁ。けど、しょうがないよねぇ。もう君は帰るんだから」
「うぐぐ。なんと卑怯な」
「あ、そんなこと言っちゃうんだ? じゃあこの二つはいらないってことかな?」
「ははは、冗談ですよ。私のような者でよければ喜んでお供させていただきます」
「じゃあ、もう少しよろしくね」
「はっ! お任せください!」
俺は片膝をついて、頭を下げる。
あの店はずっと行きたいと思っていた。
あそこで食事するなら最低でも金貨は10枚以上は必要になる。
どんな美味いものが出てくるのか。
ふむ。それが実質無料。
こんな魅惑的な提案はさながら悪魔の取引。
だが、残念なことに俺は自分の欲望にとても素直だ。
どんな地獄だろうと耐えてやろうじゃないか。
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