19話 悪霊みたいな男


「ちょっと長湯しすぎたな」


 外に出ると夜風が火照った体をゆっくりと冷ましてくれる。最高に気持ちが良いな。


 さて、余韻はここまでにしておいて。


「やぁ、スピナー君」


「お、おう」


 俺が爽やかな笑顔でテントに戻ると、スピナーがあぐらをかきながら座っていた。


「おいおい、何をそんな緊張してんだ?」


 ははーん? さてはこいつ。俺が問い詰めてくるのを事前を予測してしていたな? 中々俺のことを理解してるじゃないか。


「べ、べべ別に緊張なんかしてねーよ! ほら、とっとと寝るぞ!」


「まぁ、寝るのはちょっと待てや」


 俺が肩を掴むと、スピナーの体が跳ねた。ここからは尋問タイムである。


「さぁ、何があったのか吐け!」


「べ、別になんもなかったって!」


「嘘つけぇ! なら、なんでお前カーラと一緒に出て来たんだ!」


「そ、それは。その」


「ほらもう絶対に見たじゃん! 見たやつの反応じゃん!」


「べ、別にどうだっていいだろ!!」


 どうだって良いだと? こいつは正気でこの発言をしているのか?


「許せん……こうなったらお前があいつらの裸見たって街の奴らに吹聴してやる!」


「や、やめろ馬鹿!!」



 テントの中でギャーギャーと騒いでいると、パサリと入り口が開いた。見ていたのはリズだ。


「え、なに?」


「………テントに来る?」


「「え!?」」



 いきなりのお誘いだった。急すぎて怖い。


「?? 来ない?」


 なんでこんな首を傾げてんの? こいつは。俺たちが固まっていると、リズは自分のテントに帰っていった。


「な、なんだったんだ?」


「さぁ?」


 あいつの行動はよく分からんから深く考えないようにしている。


「あの、すいません」


「ん?」


 この声はカーラだ。


「さっきは仲間が誤解させてしまうような発言をしました。先ほどの発言はスピナーさんと話がしたいから少しこちら側のテントでお話ししませんかと言う意味です」


「え?」


 スピナーがあの花園にお呼ばれだと? え、ちょっと待てよ。


「えっと、俺は?」


「貴方には聞いてません。それで、スピナーさん。どうですか?」


「……分かりました。先に行っててもらっていいですか?」


 カーラは短く返事をすると、自分のテントに戻った。スピナーはしばらく俯いていた。


 そして、顔を上げた時には何やら決心したような顔をして立ち上がろうとした。


 ので、止めた。


「待てえぇい!!」


「うわっ!?」


「楽園に行くなんて許さんぞ! お前はここで眠るんだ!」


 腰をがっしりとホールドして、テントから出さないようする。

 なぜ、俺だけアレほど冷徹な声で対応されるのに、こいつの時は声が弾んでいたんだ。

 絶対に逃すまいと力を込めると、顔を真っ赤にしたスピナーが俺の頭を叩いてきた。


「な、何勘違いしてんだ! ちょっと話してくるだけだ」


「ゆ、許さん……絶対に、許さんぞ!」


「怖いわ! もう、俺は行くからな!」



 そのままスピナーはあっち側のテントへ走り去ってしまった。俺はボッチである。



「もう、寝るか」


 これ以上起きていたら、スピナーをしばきたくなってしまう。

 そうならないように俺は目を閉じた。


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