18話 お礼にと


「ふぅー。食ったなぁ」


「だなぁ」


 まぁ、明日の分のカレーちゃんは無くなったけどな。残念だが、徳を積んだと考えよう。今日からきっと良いことが起こるはずだ! たぶん!


「うっし。こんなもんかな」


「あら? もうできたのか」


 俺が飯の後片付けを行なっている間に、スピナーは野営用のテントを張り終えていた。すごい手際の良さだな。


「じゃあ軽く体拭いて寝るかぁ」


「そうだな」


「………ねぇ」


「ん?」


 なんかリズが来た。思わず身構えてしまう。まだ用事があるのか? 


「……お風呂あるけど、入る?」


「……なん、だと?」



 こんな所で風呂に入れると? その話は真であるか? 


「アリスがお礼にって」


「なるほど。ではお言葉に甘えさせてもらおうか。行くぞ! スピナー!!」


「え、おう」


 風呂だ風呂だ! 早速ご利益があったかな? こんな所で風呂に入れるなんて良いことして良かったぁ!


「……夜なのにテンション高いな」








「おぉ、すげぇな」


 もっと簡易的な風呂場を想像していたが、なんと言うか大浴場と同じくらいの大きさだ。あいつら、まさか魔法袋にこんな物入れてたのか? 



「やべぇな」


「あぁ、この風呂場もそうだけど、これを入れる程の容量がある魔法袋ってどんだけ高いんだ?」



 魔法袋は基本的に容量によって値段が変化する。あの大浴場を入れていたとするならば、魔法袋だけで金貨数万枚はいくんじゃないか?


 そこにあの大浴場を計算に入れると……これ以上考えるのはやめておくか。



「じゃあ入るかスピナー!」


「いや、俺は……」


 スピナーは顔を赤くしながらもじもじしている。


「どうしたんだ?」


「いや、その」


「ははーん? さては、お前。人と風呂入るの初めてだな?」


 こいつはボッチだからそう言う経験がないんだ。だから人に裸を見られるのが恥ずかしいのか。確かに最初は抵抗あるかもしれないなぁ。

 俺は目を光らせてそのままスピナーに服に手をかける。


「おらー! とっとと脱いで入るぞ!」


「っ!!」


 そのままスピナーを上服を持ち上げると綺麗な白いお腹がチラリと見えた瞬間。


「ぶへっ!?」


 スピナーの平手打ちが顔面にヒットして大浴場の外まで吹っ飛ばされた。


「お、俺が先に入るから! お前は外で待ってろ!!」


「な、なんでだよ!」


「なんでもだ! 入って来たら殺す!」


 顔を真っ赤にしたスピナーはそのまま扉を閉めた。俺は悲しみに暮れながらその場で体育座りで待つことにした。



「……何やってるの?」


「スピナーが出てくるのを待ってるんだよ。そういうお前はなんでここに?」


「伝え忘れたことがあった……まだ、カーラが入ってるから、もう少し、待ってほしい」


「え?」


 それ、まずくない? やばくない? なんで君はそんな大事なことを言い忘れるの? もうスピナー君が入っちゃったよ?


「スピナー、安らかに眠れ……」



 俺はそろそろ来るであろう悲鳴に静かに合掌した。大丈夫だ、お前のことは一生忘れないからな。



「………聞こえてこねーな」


 10分は経ったはずだ。しかし待てど暮らせど一向に聞こえてこない。

 ひょっとしたら、リズの勘違いなのでは? とっくにカーラは先に出てんじゃないのか? 


「あ、出て来た」


 と、思った矢先にカーラが出て来た。風呂に入っていたせいか、髪がしっとりしていて頬が紅潮している。

 

「うそ、だろ?」


「よ、よぉ。もう入っていいぞ」


 スピナーも同時に出て来た。まさか、何もなかったのか!? 


「お、お前……何かあったのか?」


「え!?」


 この驚いた表情。まさか、こいつ! 見たのか!? カーラの裸を!?



「べ、別になんもねーよ!」


 紅潮した顔を更に赤くしながらテントに戻っていった。反対にカーラはとても落ち着いた顔をしていた。


 これは、どっちなんだ? 全然分からん。


「お風呂、空いた」


「………あぁ。そうだな」


 まぁ、それは後でスピナーを問い詰めたら良いだろう。とりあえず、今はお風呂に入るとしよう。

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