11話 逃げること脱兎の如し
謎の奇行を続けるリズは俺に取って恐怖そのものだ。次にまた出逢えば、どんな行動を取るのか予測もつかない。
「ふ、ふふ……」
だが、しかぁし!!
(自称)IQ53万の俺の頭脳は一つの解決策を見出した。
ーーそれは、何もしないこと。
俺は部屋に閉じこもった。ほとんど部屋から出ずに飯を食うときだけ階段を降りる。これならば会うことはない。
そして、生活を始めて4日が経過した。
「もう、大丈夫か?」
流石に4日も経てば、ギルド内も元に戻っていることだろう。何よりそろそろ働かないと収入が不安だ。この辺りでそろそろギルドに行くとしよう。
「おぉー」
普通だ。
普通に騒がしいギルドに戻ってる。このタイミングで戻ったのはやはり正解だったようだ。
「なに受けよっかなー」
薬草摘みはあんまり金にならないからなー。今回のはしっかりと吟味してから選ばなければ。
「お、これ良いじゃん」
『フウロ海岸でのモンスター討伐』
どうやら、魚型のモンスターが頻繁に流れてきたせいで魚がまともに取れないらしい。報酬も金貨1枚。かなり良い依頼だ。
よし、これに決定だ! 依頼書を手に取ろうとした時、誰かに肩を掴まれた。
後ろを振り返ると、少女と見間違う程に端正な顔立ちをした小さな男がいた。
ニコニコとしているその男はスピナーである。
「よぉ、グレン」
「よぉ、スピナー」
4日ぶりに会ったせいだろうか? なんかちょっと顔色が悪い気がするな。
ミシッ。
「え? ミシッ?」
俺の肩から鳴ってはいけない音がする。スピナーは笑顔だが、手に凄く力が入っている。華奢な体なのにどこにこんな力があるんだ?
「あ、あの? スピナーさん? ちょーっと手に力が入って俺の肩が悲鳴をあげてるんですけど……」
「んー? そうか、そうか。そいつは悪いことをしたなぁ?」
と口では言っているが一向に手の力が緩まない。むしろ、より力を込めてきやがった。
「俺さぁ。ここ最近大変だったんだよ。なんでだと思う?」
「え、なんかクエストでトラブルでもあったのか?」
「そういうんじゃねーんだ。例のパーティのリズって人がよぉ。俺の名前をめっちゃ呼んでたんだよ」
俺はたまらずスピナーから目線を外す。
「それがすげー大変だったんだよ。「スピナーってどこにいるの?」とか「スピナーって人知らない?」とか受付嬢やら女の冒険者のひとやらに聞き周るせいであらぬ噂が立ちまくりでなぁ?」
「………」
やべっ。すっかり忘れてた。
「そんで、訳も分からずあいつのパーティメンバーと周りの冒険者から睨まれて、いざなんの用か聞いてみたら「だれ?」だってよ。笑えるよなぁ?」
「は、はは。そんなことがあったのか。大変だったな」
「それで、この話には続きがあるんだ。それで少し話を聞いてみたら、そいつの話してた特徴がなんとお前そっくりだったんだよ」
スピナーの笑顔が黒い。あー、やばい。これは完全にお怒りですね。はい、すみませんでした。
そして、同時に納得もした。だからこんなにやつれているのか。もし、あそこで自分の名前を出していたらと思うと俺がこうなっていたのか。
想像するだけで身震いしてきた。
「なぁ? お前どうしてくれんの?」
このままじゃ、本当に肩壊されそうだな。俺は爽やかな笑みを浮かべながら親指を立てて、
「本当にありがとう。今度飯奢ってやるよ!」
「それで済むわけねぇだろうがっ!! こちとら誤解が解けるまで周りから睨まれてたんだぞ!?」
「えー? けど、美少女に名前覚えられて良かったじゃん」
「このっ……! まぁ良いさ。どうせ、この後はお前が地獄を見るんだからなぁ?」
「え?」
一体どういう意味なのだろうか? ポカンとする俺に対してスピナーは指をポキポキと鳴らし始める。
「覚悟は良いか?」
「あ………」
やばい。ボコボコにする気だ。
仕方ない。ならば、俺にも考えがある。俺はスピナーの後ろに指を差す。
「あ! あれはなんだ!?」
「はぁ?」
俺が指を差した方向をスピナーは素直に向いてくれた。やはり、単純な男だな。
「別に何もーー」
俺はその隙に全力でギルド内を出た。今頃、奴は俺の背中を眺めていることだろう。
「待てぇええええ!!」
「さらば、スピナー!」
俺は街の中を走り回ってスピナーを撒いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます