12話 ぶらりと街を観光


 困った。


 スピナーを撒いたのは良いものの、あれじゃギルドには当分近寄れそうにない。



「あー、せめて依頼書取っとけば良かった」


 まぁ、嘆いても意味ないか。考えようによっては4日ぶりの外出だ。たまにはのんびり街を巡るのも良いだろう。


「まずはどこから行こうかな〜………そうだ」


 

 ここら辺ならパン屋があったはずだ。そこに行くか。





 少し歩いてパン屋の目の前にきた。


「ちゃんとやってるな」


 何を買おうか。甘いものと少し塩っ気のあるやつを買うか。予算が心許ないのであまり量は買えないけど。


「おばちゃーん。久し……ぶ、り」


「あ……」



 店の前で固まってしまう。そこにはリズがいた。俺は回れ右をする。が、次のリズの言葉で足が動かなくなってしまった。


「待って……グレン」


「………なんで俺の名前を?」


「灰色の、スピナーって人が教えてくれた」



 あいつ何してくれてんだ!! 



「少し、話せる?」


「……もし、断ったら?」


「その時は……日を改める。いつが良いか……また、聞きに行く」



 それは逆にやめて。またギルドで話しかけられたら騒ぎになっちゃうから。



「出来ればあんまり人が多くないところでお願いします」


「……分かった」











 パン屋で買い物を終えた俺たちは近くの噴水で腰を下ろした。確かに人は少ない。少ないけども、



「………あげる」


「あ、どうも」



 リズからもらったパンを口に運ぶ。


「……」


 なにも味がしない。緊張とストレスで舌が機能していないのだ。


「なぁ、なんであんたはここを選んだんだ?」


「?? 近かったから」



 そっかー。近かったからかー。なら、知らなくてここに来たってことだな?


「なぁ、周りを見て気がつくことないか?」


「……特に」



 いや、気づけよ。男女一組の奴らが多いだろ。俺らが座ってるここら辺の場所はデートスポットなんだよ。


 おかげで俺は冷や汗ダラダラなんよ。もし、この場面を誰かに見られたら死が確定するからな。


「……なんで、嘘ついたの?」


 気がつけば、リズは無気力な瞳で俺をじっと見ていた。


「え、何が?」


「薬草摘みの時」


「まぁ、一言で言うなら面倒だったから」


「……そう」


 少し心は痛むが、下手に言い訳するより正直に言うのが吉だろう。別に嫌われても良いからな。


 そう思い、再びパンを口に運ぶ。すると、



「グレンは……白い仮面の人?」


「ングッ!?」


 いきなり核心を突かれてしまい、パンが喉に詰まった。胸をドンドンと叩いてなんとか飲み込んだ。


「ど、どうしてそう思うんだ?」


 まさか、バレてる? どこだ? 口調? 立ち振る舞い? それとも別の何かか?



「……これ」


 リズが取り出したのは一枚の依頼書だ。そこにはオークの討伐と書かれていた。



「こ、これをどこで?」


「狂蒼龍の近く」


「そ、そうなんだぁ。で、なんでそれを俺に渡すんだ?」


「グレンと、スピナーの会話が聞こえた。オークの討伐がどうって………だから、白い仮面の人だと思った」


「お、俺じゃないぞ? 確かに俺はオークの討伐をしていたが、場所が全然違うんだ」



「………そう」


  流石に苦しいか? いや、でもそれだけで断定するのは難しいはずだ。まじで無表情だから何考えるのか分かんねぇ!


「な、なら。この話は終わりってことで! 俺がその白い仮面の人じゃないと分かったし、もう俺に用はないよな! じゃあな!」



 俺は逃げるようにその場から立ち去った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る