10話 リズ=恐怖


「うーん……」


 目が覚めたら土の香りが漂ってくる。どうやら俺は寝ていたようだ。


「なんだ……夢か」


 そうだよ。今までのは全部夢だったんだよ。

 俺は、超水を全部使い切った上に、男嫌いで有名なはずのリズが話しかけてきたせいで、ギルド内の男たちから嫉妬の目線を集めていた夢を見ていたのだ。


 まったく、ひどい悪夢である。



「……おはよう」



 抑揚のない声が横から聞こえた。俺はギギギと錆びついた首を向けると、そこにはリズがちょこんと木の根に座っていた。


「なんだ……まだ夢なのか」


 再度体を横にして目を閉じる。

 どうやら俺はまだ夢の中らしい。そうじゃなけりゃおかしい、絶対におかしい!

 うぉー! 目覚めろ俺ぇ!!


「……寝るの?」


 なんか声が近くなった気がする。同時に、甘いフローラルな香りが鼻にきた。俺は体を起こして目を開ける。

 やはりリズの距離が近くなっていた。


「……おはよう」


「あぁ、おはよう。なんでお前ここにいんの?」


「貴方が、気になるから……」


 他の冒険者ならこんな美少女に言われればさぞやドキリとするだろう。だが、俺は面識もないのに急に話しかけられた恐怖が勝っていた。



「……ランクは?」


「4です」


「そう……」



 そして、またしばらく黙る。なんだ? 本当にこいつは何がしたいんだ? 無表情で何を考えているのか分からないのが凄く怖い。



「名前は?」


「………スピナーです」



 とりあえず、怖かったのであいつの名前を出しといた。


「そう、スピナー………覚えた」


 良かったな、スピナー。お前は街で最も有名な美少女に名前を覚えられたぞ。


「またね、スピナー」


「あぁ、さようなら(たぶんもう会わないけど)」



 俺の名前はグレンです。と、心の中で思いながらリズの姿が見えなくなるまで手を振っておいた。



「スピナー。ほんとごめん」



 あいつも面倒ごとは嫌いなのに、あいつの名前を出してしまった。どうか、こんな俺を許しておくれ。


 心の中で懺悔をしながら薬草を摘み取っていく。ちなみにこの依頼は無事に達成することができた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る