VTuber以前:高校時代④
三年生に進学し、クラスが変わってからは、上江と会うことはめっきりなくなっていた。
別に、もともとそんなに仲が良かったわけでもないし、きっかけみたいのがあればたまに話す程度の関係だったから、それは自然なことではある、んだけど、なんていうか……
(ムカつく……)
そう、ムカつく。
わたしのようなカースト最上位美少女とそれなりに仲良くなっておいて、それがクラスが変わった程度で会いにこようとも、何かしらの手段で関係を繋ぎ止めようともしない上江の淡白さに、ムカつく。
なんかこう、もっと寂しそうにするとかしろよ! このわたしと会えてないんだからさ! わたしとたまに話したりしてたあの頃の栄光を思い出せ!
……別に、あいつのことだから、わざわざ違うクラスの人間に話しかけに行くのは恥ずかしいんだろうし、ましてわたしに話しかけに来るなんて、悪目立ちして仕方がないだろう。
わたしが普段いるグループの中に飛び込むなんかまず無理だろうし、わたし一人でいるタイミングを見計らうにしても、人目があるところだと気後れするのも想像がつく。そもそもわたしが一人でいるタイミングが少ないから、話かけるチャンスなんかほとんどない。
ちゃんと考えればそう分かるんだけど、でも、やっぱりなんか、ムカつく。
なによりあいつは、わたしがいなくたってあの、たまに見せるきらきらした目をしてみせるんだ。それがなにより、ムカつく。
(……いいか。もう、別に)
あいつのことなんて、気にしなくていい。別に手放すのが惜しいほどの関係を築いていたわけじゃない。あいつ個人に対して、特別に何か思うことがあるわけじゃない。
ただ、わたしのいる空間で、わたし以外に対して、当たり前のように目を輝かせていたあいつが癇に障っただけで、そこから先の関係は、ただの惰性だ。だから別にいい。
あいつが会いに来ようが来まいが、あいつが何に惹かれようが何をしていようが、別にもう、どうでもいい。
(……会いに来たら来たで、別に邪険に追い払ったりもしないけど)
わたしは優しいから。
でもわたしの方から会いに行くほどに、あいつに対して思うところがあるわけではないから。
だから別に、どうだっていい。
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