VTuber以前:高校時代①
わたしはかわいい。
……なんて、こんなことを堂々と言ったら、どれだけナルシストなんだと呆れられてしまうだろうということくらい、分かっている。
分かっているから、それを口に出すことはまったく……とは言わないけど、ほとんどない。家族とか、よっぽど気安い関係のやつ以外には。
でも、客観的に見たって、わたしはかわいい。
目がぱっちりしてるとか、鼻先からあごにかけてのEラインがまっすぐな一本の線になっているとか、顔のラインがシャープで、それでいてきれいな丸みを帯びている、みたいな、そういう、スマホに美人の条件とか、かわいい顔ってキーワードを入れて検索をかければ出てくる定義のほとんどを、わたしは持ち合わせていると言ってよかった。
それに加えてわたしは、そのかわいいの原石たるわたし自身を磨く努力も忘れなかった。
よりわたしのかわいさが際立つメイクの勉強は毎日している。制服は悪目立ちしない範囲で一番かわいい形にアレンジするし、普段着るものだって、流行をおさえてかつ、わたしに似合うものを探すのには妥協しない。スキンケアだって、一日たりとも欠かしたことはなかった。
わたしがこんな努力をできるのは、元の素材からして良かった、という部分が大きいし、それはわたしがたまたま恵まれていたからで、運がよかっただけかもしれないけれど、それの何が悪いんだって思う。
生まれつき人より優れていた素質を、さらに磨いて、それが目に見えて結果になっていくのだ。楽しくないわけがない。
ただでさえかわいいわたしが、かわいいを磨き続けているんだ。そんなわたしは、どう考えたってかわいい。誰がどう見たって。
だからそんなわたしに対して向けられる、憧れとか羨望とか、ときには嫉妬だって混じった視線を受けるのは、最高に気持ちよかった。
みんな、わたしにそんな視線を向けるべきなんだ。それなのに。
それなのにクラスで一人だけ、わたしの方を向こうともしないやつがいた。
そいつは休憩時間中、ずっと机の下でスマホを見つめて、クラスの誰とも話さないような暗いやつだった。
そんな人間、気にする必要もない。
人の好みは十人十色って言うし、日本中や世界中を探せば、わたしの見た目に惹かれないやつだって、一人や二人いるだろう。たまたまそんなやつがわたしのクラスにも一人、いたというだけだ。
そうだ。そんなやつ気にする必要なんかない。
そう、思っていたのに。
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