第40話 “わけ知り顔”、瀕死の問いかけ
ブォンブォンと大型の扇風機のような音がじょじょに静まり、奥義によって室内を
直立すると、大きな目が、畳のおもてへと浮かびあがる。
研究室では、三人の人間が血を流してたおれており、動くけはいもない……
「……疲れる、な。
新デス畳が、ひとりごちる。
そのまま、からだをメカ畳のほうへと向けた。
「……おまえか?」
メカ畳へと、語りかける。
先ほどデス畳の半身(一畳)から一撃を見舞われたメカ畳であったが、一見したところ
『おまえとは、どのバージョンのことを指しているのでしょうか。ワタシは、7代目メカ畳であり、あなたとは、初対面デス』
「まあ……そうか。たしかに……死んだはずだ」
『あなたが言っているのは……6代目メカ畳のことデスか? ワタシと6代目は、エネルギー源以外は同じ構造をしています。6代目と、誤認したのではありませんか。ただ外観に関しては、3代目をのぞき、歴代のメカ畳でそう大きく異なるものではありませんでしたが……』
「何代目かなど……知らん。似たようなのを、叩きつぶした記憶は何度かあるが……。ふりかかった火の粉を、はらっただけだ。まあ……アイツはそのなかでも骨があったが……」
低い声で、デス畳はボソボソとつぶやく。
メカ畳はおだやかな、
『デス畳……ワタシはあなたを、あなたたちを
デス畳は、鼻で笑うような音をもらした。
「そのざまでか……? その機械から、動けないのでは、ないか? たしかパワーだけあってのろいヤツもいたが、おまえはそれにも劣る……。先ほどの一撃程度ではさほどダメージを受けていないようだが、
二畳が組み合わさったデス畳は、
メカ畳は、挑んでおいて動けぬその身を嘆くようすも、身じろぎするようすも見られぬ。
そのとき――ピクリと“わけ知り顔”の指が動いた。
「ま、まってください……」
デス畳の視線が、瀕死の虫のように床でピクピクとのたうつ
“わけ知り顔”は、メガネがないままメガネをクイッとあげるような動作をして、眉間に流れる血をぬぐうと言った。
「新デス畳氏――いえ、兄デス畳氏。私が見たところ、弟は好戦的で、私たちをひとりでも殺そうと積極的にせまってきていましたが、あなたは同族である弟のピンチのときや、われわれが逃走しようとしたときなど、なんらかの理由があるときが中心で、『人を殺すこと』そのものが主目的であるようには思えませんでした。もしかしたら、あなたは本当は……人を殺したくないのではありませんか? おだやかな、畳としての一生を望んでいるのでは……」
力をふりしぼってデス畳を
しかしデス畳はなんらの感情もおもてに出さず、答えた。
「しゃべるのは……得意では、ない。ただ、キサマら人間を積極的には殺さぬのは、そう、ここの娘……名をなんといったか、もう思い出せぬが……あの人間と同じような理由だ」
「……?」
「娘が、和室に大きな虫が出たとき、ほかの人間と話していた。『ここで殺すと体液が飛び散ってきたない』と。それと、同じことだ……」
“わけ知り顔”は、要領を得にくいその説明に息をのみ、あらためて意を問うた。
「つまり……人間を殺すと血や肉が散って、きたないから、だから積極的には殺さないだけ、だと……?」
デス畳は無言にて肯定した。
“わけ知り顔”は
「人間を……なんだと思っているのですか……! そんな、そんな理由しかないのですか。死ねば、その人の人生は、そこで終わりなんですよ。みな、まだこれからの人生があった人ばかりなのに、あなたはその程度の認識で……!」
「……キサマは?」
「……え?」
「キサマら、人間は、なにを思って畳のことを踏みにじる? よごしたときなにを思う? 廃棄のたびに……涙を流すのか。いずれどうでもいいことだが、つまり畳も、人間も、等しく
“わけ知り顔”は言葉につまり、こぶしを握った。
ちらりとメカ畳のほうへ目をやり、それでもとしゃべりかけつづける。
「私たちを……殺すのですか」
「……そうなる」
「あなたたちに、これ以上手を出しません。すぐにここから出ていきます……それでもダメでしょうか」
「せっかく無人になって、しずかに眠れていたのに、またやっかいな刺客でも呼ばれると……こまる。呼ぶか、呼ばぬかわからぬが、殺したほうが、早い」
「決して呼びません……とは言っても、信用してはもらえないのでしょうね……」
「まあ、女、といったか、その種類の人間はわからん……。弟は、ここの娘のような、女をもとめている。
「娘というのは、このお屋敷のお嬢さんのことでしょうか……? もしかして、そのお嬢さんにこうなった原因が……?」
「あれは、かえすがえすも、
と、新デス畳が
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