第19話 戦ってはいけない相手
ティセとロックは別室に移動し、約30分後戻ってきた・・・
「・・・・・・」
「ロック? 顔が青いわよ… どうしたのよ?」
「私・・・ 本当に〇ぬかも・・・」
「恋愛のご教授で〇ぬワケねぇ~だろ 何言ってんだこいつ?」
「ロックは昔っから大袈裟なのよね… ドキドキがマックスで"〇ぬかも"でしょ?
子供じゃないんだから ねぇ~ティセ」
「いや… 本当に〇ぬかもよ だから1つも間違えられないよ」
「はぁ? ティセまで大袈裟な・・・」
「そこまで言うなら、ジークさんも勉強する?」
「俺はキャン玉教祖とは、レベルがちげぇからよ なめんなよ ぎゃははは!」
「ふ~ん じゃあ時間もそれほど無いし、ここでいいか」
9月18日(異) 午前9時59分
ジュリア:鳳凰宮 特別会議室 緊急裏サミット
国家 出席者
魔導王国ドルー 主:魔女王 :ヴァティス魔女王
ドゥーラン王国 主:ドワーフ :ワイゼン王
連合国家ガイエン 主:獣王 :ガルフ王
ファフ王国 主:エルフ :サリト王
妖精の里ルルン 主:ピクシークイーン :エヴァンス女王
泡沫国 主:人間 :ザースマ準男爵
泡沫国ハルヨシ村 主:人間 :ノア男爵
ワンダ村 主:小人族 :ポタリス族長
「時間だが、ガルフが来ておらんな…(ワ)」
「生ごみでも漁ってるんだろ 卑しいからな(ポ)」
「ヤツが居らんと始められんぞ(サ)」
「短い期間に何回も何回も呼び出されて、私はイライラしてんのよ
本当にいい加減にしてほしいわ 暇じゃないのよ!(ヴ)」
「30分過ぎても来なかったら、私は戻るからな(ラ)」
9月18日(異) 午前10時22分
開始時間10時を、22分を超えた所でガルフは現れた
「やっと来たか… 時間も守れんのか さっさと座らんか…
貴様からの緊急開催の提案なのだぞ(ワ)」
「ちょっと!? ここに入れるのは、認められた従者1人だけなのよ!
なんで4人も連れてきてるのよ? しかも… 4人は人間じゃない…?(ヴ)」
「あ~はいはい すみませんね~ こいつ(ガルフ)は喋る事ができないんですよ
手下の命令(能力)なんですけどね 今から説明しますんで、少々お待ち下さいね
あ~ よっこらせっと…」
「!? 貴様は何者だ? 何故貴様が座るのだ… (ワ)」
「えー… 皆さん 疑問や質問があるでしょうけど、少ーしだけお口をシーしてね
先ずは… 自己紹介ですね 俺はジークと申します どうぞよろしこ
こちらはロック 後は手下BとCです 皆さん仲良くして下さいね(ジ)」
「おいコラ! 何言って・・・(ポ)」
「えーと… 小人族のポタリス族長さん 説明するから黙ってろって言ってんでしょ
言葉が理解できないのかい? 俺は喧嘩をしに来たんじゃないのよ
現状を説明してやるから、ちょっと黙ってろって
こいつ〇すよ あ~… こいつが〇んでも関係ぇねぇ~か ぎゃははは!」
「黙ってるのは構わんが、裏にいる者の"精神支配系の能力"を解除してくれ
どうも落ち着かんのでな…(ノ)」
「あらら、バレちゃいました? これはビックリ
今の段階ではちょっと無理なんですよね~ 少しの間我慢して下さいよ
ここにいるメンツなら、耐えるのは簡単でしょ?(ジ)」
「それならその説明とやらを、先ずは聞こうじゃないか(サ)」
「えー ここに集まった各国首脳のお偉方に、一言モノ申しますね
我々の仲間が傷つけられましてね、ウチの大将がもう怒り心頭 カンカンなんです
怒りが収まらなくて、そのデコで沸かしたお茶を飲んでここに来たんですよ
そんで、メッセージを送ったにも関わらず、
何の音沙汰もないワケですよ シカトされちゃってるのかな~つって、
大将は思っちゃったんですよね これは由々しき問題だっちゅ~事で…
お仕置きするのに、部下3人(※本当は5人)使って・・・
連合国家ガイエンの首都バサンナを
「!」「!?」「‼」「?」「えっ!」「はぁ?」「・・・」
「驚いちゃいますよねぇ~ そんな話信じられないですよねぇ~
でも本当の話なんですよ その証拠として、俺がここに座ってるんですから
ではスペシャルゲスト1 どうぞ、お入り下さい!(ジ)」
「こ、こんにちは… あの~… 初めまして…
ドッグラ村の長老をしております 犬人種ワムプレと申します よろしくどうぞ
我々犬人種を含め13系統の獣人が… えーっと… 何でしたっけ?」
「ヘヴン! 領民国際連合ヘヴン!(ジ)」
「あぁ… えー、我々犬人種を含め13系統全ての獣人が…
【領民国際連合:ヘヴン】に降りました 同盟に加えてほしいです!」
「と言った感じでして ワムプレさんは、ガイエンの首都バサンナを…
息子さんのワムオレ君に、ドッグラ村を仕切ってもらいます
その他の街や村は、各種族の長老や代表の者に、そのまま仕事してもらいます
そんでもって今後サミットには、こちらに居らせられる・・・
睾丸料理研究家で哀の伝道師キャン玉教教祖、仮初で偽りの悲しい傀儡の王
ロック様が参加しますけど、いいですよね?」
「貴様は何を言っておるのだ? 傀儡の王が居て良い訳がなかろう(ワ)」
「ふ~ん・・・ 我々の参加は認めないと… そう仰るのですか・・・
泡沫国のラスト王 大将も俺も人間だ 我々の仲間には色んな種族がいますよ
だけど我々の組織は人間の比率が多い 考え方自体は、泡沫国に近いと思いますよ
他の国の考えは知らねぇけどね そんな俺らを無下にするんですかい?
こちらは自由に楽しく暮らしたいだけなんですよ
それがどうだ 犯人は捕まえられない 自分たちで動こうとしない
民衆の要望の1つも応えられねぇそんな国なんて、この世に要らねぇんだよ
だからメンドイけど、同盟に加わってやるって言ってんの 分かる?
あんたたちそれでも国の代表なのかよ? 王様? 女王様? 笑わせんな!
クソの役にも立たねぇトップなんぞ、大衆には不要なんだよ
一領民と同列なのが気に食わないって言うなら、それでもいい
それなら"ヘヴン"は、魔王と手を組むからよ 全然構わねぇ~よ
それが我らが大将からの御意向でメッセージだ ありがたくちょーだいしろよ
言っちゃ悪いけどあんたらの国、大将がキレたら"秒"で滅ぼせるぜ
何なら試してみるかい?
何人か殺気がダダ洩れだけどよ、俺らを〇すのかい?
子供みたいな態度は改めた方が身の為だぜ
1つの間違いで、多くの同胞が不幸になるからな そうなっても俺は知らねぇ~よ
その覚悟があるなら、俺らを〇せばいいんじゃね?
安いプライドぶら下げて玉座にふんぞり返ってるヒマがあるなら、先にやる事やれ
じゃなきゃ、継続率99%のお尻ペンペンが待ってるぜ(ジ)」
「まぁ待て落ち着け ワイゼン、ヴァティス、ポタリス… 矛(殺気)を収めろ
ガイエンが【領民国際連合:ヘヴン】になるだけの単純な話ではないか(ノ)」
「しかしな… ノア 安いプライドなどと、我々はコケにされておるのだぞ(ワ)」
「そうだ! 魔王と組むなんてフカシに決まってんだろ!
そんな事できる訳ねぇーだろうが! 〇すぞてめぇ~!(ポ)」
「お~怖っ… 試してみろって言ってるだろ やれるならな ぎゃははは!(ジ)」
「あなた… ドルー相手にそんな事言って、正気なのかしら?(ヴ)」
「はぁ~… 自分の国が最強だと思ってる時点で、もう既に驕ってんのよ・・・
売られた喧嘩は買うぜ~ 一歩も引くなと言われてるんでね
俺らを〇せば、第2次大戦の幕開けだ 地獄の始まりって事を忘れんなよ
正し… 争いが始まったら1対1じゃすまさねぇ~ぞ 1対7だ
他の国を巻き込んでも後悔しないなら かかってこいよ とことん追い詰めるぜ
テメェら全員が相手だからな もらい火には気を付けろよ♪(ジ)」
「皆、考えてみろ ガイエンが… と言うよりも・・・
私は今後、ガルフがいないだけで多少せいせいする
ガイエンがヘヴンとなり、少しはまともな政治ができるのではないのか?
ガルフとラスト以外なら、正直誰でもいい
ファフ王国は、【領民国際連合:ヘヴン】の参加と同盟を認めよう(サ)」
「ふざけるな! 1対7だってフカシこいてるこんな奴らと仲良くできるか!
やれるならやってもらおうじゃないか! このインチキ野郎!(ポ)」
「そう熱くなるな… 全員を相手にするなんて、私も些か疑問に感じるが…
ガイエンが降ったのは事実ではないか それだけの力量はある訳だ
取り立てて理不尽な要求も無い… 民間の代表として参加するのはアリだろう
ハルヨシ村は、【領民国際連合:ヘヴン】の参加と同盟を認める(ノ)」
「私は認めないわ 言いたい事は山ほどあるけど、止めておくわよ
あ~ イライラする!(ヴ)」
「私は… ただ… 争う事が嫌なの だから賛成なの
妖精の里ルルンは、【領民国際連合:ヘヴン】の参加と同盟を認めるの…(エ)」
「私もこの者の不遜な態度に、嫌悪感しか感じないざます
泡沫国は、【領民国際連合:ヘヴン】の参加と同盟を認めないざます(ザ)」
「今の段階では、ドゥーラン王国は【領民国際連合:ヘヴン】の参加と同盟は
どうでも良いのだが…
貴様が言いたいのは、殺人犯の確保が後手後手になったことであろう?(ワ)」
「そうだけど?」
「同盟には勝手に加わればよかろう…
近い内に我々は、泡沫国との同盟を解消するであろう
その理由を知らないのであろうから教えてやろう…
ノアの深淵で採れる穀物の価格を、泡沫国は不当に上げた事だ
しかも倍以上の価格だ 我々に〇ねと言っておるのだぞ
泡沫国と言っても、ラストの言葉ではない
そこにいる王様気取りの準男爵様が、勝手に決めたようだがな…
価格を元に戻さなければ、同盟を解消すると言って聞かせてるのだがな…
泡沫国にはその気が無いようなのだ 我々全員を相手にするそうだぞ
それを聞いても泡沫国と考え方は同じか? それでも同盟に拘るのか?
もはやどうでも良い話だがな…(ワ)」
「あれれ… 想定してた各国の関係性と違うみたいですねぇ~… 困ったな…
皆々様ちょいとお待ちを… おいコラ! そんな場合、どーすりゃ良いんだよ?」
「私が分かるワケないだろがい! 教えて貰った通りにやるしかないだろ!」
「同盟は解消するって言ってんだよ! これじゃあ、勝ち馬に乗れねぇだろうが!」
「ちょっとでも優勢な方に乗れば良いだろがい!」
「えー… お待たせしました 同盟の話は、ちょいと置いといて…
ここでスペシャルゲスト2 お~い手下A 連れて来い!」
仮面の男手下Aは、2人の男を連れて来た
「この獣人2人は、我々の仲間を… シクシク… うぅ… 傷つけたアホで~す
あんたらが仕事しないから、こっちで捕まえました 方法はナイショです
こいつらをどうお仕置きするのか、俺らの椅子がここにあるのか…
早々に決めて下さいよ 民衆にもよ~く分かるようにね
何か進展があったなら、 バサンナのワムプレさんに連絡してね
そんじゃ我々は失礼しますね
手下C! 我々を認めて下さった御三方に、お土産をお配りしてちょ」
「はい 只今」
手下Cは、ノア・サリト・エヴァンスにお土産を渡した
「これはマジックバッグか…?(ノ)」
「そうで~す その中にお土産が入ってます お国に戻られたら確認して下さい
そんじゃあお騒がせしました さようなら♪
あ~・・・ うっかり忘れてた・・・
こいつ(ガルフ)要らないでしょ? 俺らも要らないんで置いていきます」
ジークたちは部屋を出て行った
「ノートン、3人を捕らえろ」
「はっ!」
9月18日(異) 午前12時18分 ジュリア:拠点
「おいティセ! ふざけんなよ… 本当に〇ぬじゃねぇ~か… あの圧!
冷や汗が止まらねぇ~よ・・・ ロック1人だったら、確実に〇されてたぞ!」
「お国の為に〇ねるなら本望でしょ?」
「今は令和だぞ そんなワケあるか! 全く・・・
俺の華麗なる舌先三寸が無ければ、間違いなく〇んでた
帰って来れたのは奇跡だ 自分で自分を褒めてあげたい気分だ・・・」
「それよりも何だ、あの紹介は! コノヤロー! いい加減にしやがれ」
「なんて紹介されたのよ?」
「ティセ様、聞いて下さいよ~ この野郎は、お歴々の方々に私を紹介する際に…
私の事を… クソ! ガッデム!」
「あれ~… 何て言ったっけ?」
「睾丸料理研究家で愛(哀)の伝道師キャン玉教教祖、仮初で偽りの悲しい傀儡の王
ロック様って言っただろうが コンニャロめー! ムキー!」
「何でよロック? どこも間違って無いんじゃないの…?」
「かぁ~っ… このクソ嫁も… さすがのアホ夫婦だな…
私は神の座をマンジィーに譲りました… だが、それは仕方ない
次は王の座だ 私は心が躍りましたよ ついに王になるってね・・・
それが… ”悲しい”って何だ! 悲しかねぇだろがい! プンスカ!
仮初でも偽りでも… 傀儡であったとしても王は王だ ねぇ、そうでしょ…?」
「ツッコミどころ満載だけど、怒ってるのはそこの部分だけなんだね・・・」
「リアルバカ王だな… しょーもなっ…」
「それでよく"アホ夫婦"なんて言えるわね ムキー!」
「王様に逆らうな~ ゴラァ! 庶民はひれ伏せ! 粛清すんぞ!」
「権力に溺れる一番最悪なタイプよね… あ~ヤダわ~…」
「王様界一の面汚しだな・・・ アニメでもこんな底辺のクズ王はいねぇよ…」
「そんなに気に食わないの? 例えば"醜悪"とか"虚しい"とか… "浅ましい"は?
他だと、卑怯な、卑劣な、下品、狡猾ってのがあるけど、どれがいい?」
「あの~ティセ様・・・ 何故か、聞こえの悪い言葉ばっかりですよ・・・
ちょっと、私のイメージに合わないですねぇ…」
「よせよティセ… そんなのに付き合うのは、はっきり言って時間の無駄だぞ」
「そうよ 今後の方針とか考えないといけないんだから」
「そだね~ ロックさんは、そこにある辞書でも調べて選んでおいて」
「分かりました カッコイイの選びますよ♪」
「(小声で)実は厄介払いされてんの気付いてねぇ~よ…」
「(小声で)ホントにお気楽よね… 唯一メンタルは最強なのよ…」
「話が脱線したじゃねぇ~か… そんな事はどうでも良いんだよ…
想定外だったのはよ~ "近い内に我々は泡沫国との同盟を解消する"って、
ドワーフの王様が言ってたんだよ… それってヤバめだろ?」
「なんですと! ワイゼン国王がそのように言ったのですかな?」
「言ってたぜ その理由が、この国の王様だか準男爵だかが、
穀物の価格を倍以上に上げたんだとよ
価格を下げないなら泡沫国との同盟を解消して、戦争するんだってよ 全員で
泡沫国は、もうオワコンだな… ティセさんよ~ どうするね?」
「戦争とか勘弁して欲しいよね~ 全員を相手にして、勝てるワケないじゃん…
人間の王様って、どうかしてんじゃないの? バカみたい…」
「同盟諸国も穀物は作っておるのでしょうが、それだけでは賄えないのでしょうな
それが以前の価格の倍以上にされたとなれば、怒るのは最もな話…
供給量が少ないのであれば分からなくも無いのですが… しかし解せませんな…」
「ありがちなのは王様が、"乗っ取られてる"とか"操られてる"とかだよな…
大体そんな時は、そんなもんだろ? それ自体はどーでも良いけど…
同盟が、"最善の一手"じゃ無くなったのは確かだぞ
勝ち馬に乗るなら、泡沫国以外の国とつるむしかねぇ~だろ?」
「今のところは、そうだけどね… 少し様子を見ないと何ともできないね…」
その日をまたいで・・・
9月19日(異) 午前1時25分 ハルヨシ村:兵舎
「お疲れ様でございます 随分とお時間が掛かったようですが…」
「もうこんな時間か… とても大きな問題が起こってな…
話し合いが終始平行線でな 全然終わらんのだ… 全く…」
「大きな問題ですか?」
「そうだ この話は、皆で共有せねばならない
明日の… 今日の朝会議で皆に話す 今は休ませてくれ」
「はっ! それでは失礼します」
「ご苦労だったな ノートンも疲れただろう もう休んでくれ」
「はっ! それでは私も休ませて頂きます
マジックバッグはこちらに置いておきます」
「あぁ、そこでいいぞ」
ノートンたち幹部は、部屋を出て行った
「ふぅ~・・・ 土産と言っていたな 何を寄越したんだ?」
ノアは、マジックバッグの中身を取り出した
「紙製の箱が3つと、ポーションの
同封された手紙を読んだ
「国内産びーる飲み比べセット… これは酒なのか? おせいぼせっと…
おせいぼとは一体なんなのだ??? よく分からん・・・」
「水を張った樽に氷を入れ… これ(缶)をそれに入れる…
5~10分ほどで冷えたら、このつまみを指で引っ掛けて手前に倒す そして戻す
それで口が開くと… その部分から飲む事ができるとな… なるほど…
・・・エールは常温で飲む酒だが、ワインよりも冷やして飲む酒は初めてだな」
ノアは空の樽を持って来て、水と氷を魔法で入れた
ノア自身、魔法は得意な方ではなく、水と氷の魔法も威力は殆ど無い
水の量は樽の3割程度 氷の粒は小さく、クラッシュアイスのような細かさだった
「これに入れれば良いのだな… ドポン ドポン ドポン…」
ノアは樽に、ビール缶を数本入れた 冷えるのを待つ間に、手紙の続きを読んだ
「3本の薬瓶は、万病に効く特効薬… 当方の大将が"錬金術"を用いて調合した秘薬
毒物によるダメージや身体の欠損でなければ、どのような症状も一瞬で治る逸品…
秘薬とは俄かに信じ難いが… このような薬瓶は見た事がない…※」
※ティセは魔道具工房のポックルに依頼して、新しい薬瓶を作ってもらっていた
理由は3つあり、1つ目は劣化の問題
一度封を開けると少なからず劣化するので、それを極力抑える為
2つ目3つ目は、味の問題
エニィポーション単体ではとても不味いので、それを緩和する為
そして、エニィポーションの味を知る者にも悟られないように、
ハイスピードポーションと混ぜて、飲み易い味にした為である
「誰かに飲ませるのは少々危険だが、とは言え私自身、調子が悪い所が無い
どうしたものか… はやり最初は自分で飲まないと、安全は担保できないな…
ノアは解毒剤を用意して、秘薬をほんの少し飲んでみた
「飲んでから10分経ったが… 何も分からんな
確かに飲んだ量は少ないが、毒の類ではない… 体調の変化は全く感じない…
やはり具合が悪い者に飲んでもらわんと、効果は分からんな…
仕方ない、他の誰かで試すしかないか…」
「もう冷えた頃だろう… 冷たっ! ここに指を掛けて引く プシュッ!
コレを元に戻す これでいいんだな… 解毒剤はここにある では飲んでみるか」
「ごくごく…!? この美味さは! マズイ… 止まらない いや… 止めたくない
ごくごく… まるで至福の
ごくごく… もうすぐ無くなってしまうのが分かる… ごくごく… ダメだ終わる
ごくごく… 終わってしまった・・・ 何と言う事だ… エールとは雲泥の差だ
本来の酒とは、これなのではないのか? これは信じられない美味さだ」
ノアはアッと言う間に、ビール缶3本を空にしてしまった…
「なんと… 気付いたら、もう3つも飲んでしまった…
びーるとやらを皆に飲ませてやりたい しかし、ここにある分では足らん…
これは今後も手に入れなければならない…
これも錬金術で作っているのか… 本人にしか作れない可能性はある
手に入らないほど高価な逸品なのかも知れん… 出所を確かめんとイカンな…」
9月19日(異) 午前9時5分 ハルヨシ村:兵舎 朝会議
「・・・・・と言う感じで任務にあたってくれ」
「はっ!」
「おはよ~ございま~す ナイトホーク郵便です
ノア様宛に速達のお手紙です」
「ご苦労さん!」
「誰からだ?」
「!? 妖精の里ルルンのエヴァンス女王陛下様からです…」
「エヴァンスから!? 何事だ… 見せてくれ」
「はい…」
ノアは手紙を読んだ
「こんにちは~ ナイトホーク郵便です ノア様宛に速達です はい」
「ご苦労さん…」
「今度は誰だ?」
「!? ファフ王国のサリト殿下からです!」
「サリトから…」
ノアは続けて、サリト王からの手紙も受け取り読んだ
「・・・・・・」
「何か大事があったのでしょうか?」
「ウィル… アルゼとミーアを連れて来てくれ」
「アルゼとミーアですか…? 只今連れて参ります」
ノートンは、2人を呼びに行った
15分後・・・ ウィルは2人を連れて来た
「ノア様、2人を連れて参りました」
「あの~ ノア様… またアルゼが何かやらかしましたか? 居眠りとか…」
「いや、そうではない あの時のアルゼの事故について聞きたくてな
どのくらい経つのだ?」
「あれから5年とちょっとです…
暴走した馬が子供の列に突っ込んでいくのを助けようとして…
子供は怪我1つ無く助かりましたけど… うぅ… うぅ…
アルゼは頭を打ったか蹴られたかで、酷いダメージを負いました グスン…
お医者様からは、一生歩く事も喋る事もできない可能性があると言われました
でもアルゼは、キツいリハビリを一生懸命頑張りました グスグス…
しかし剣を握っても、兵の中で最弱となり… 裏方の仕事をしても居眠り…
一緒に兵を辞めようかってノア様に御相談した時に、
"やれる仕事は幾らでもある"って仰って下さったので、まだ兵士でいられてます」
「おいアルゼ お前は確か… ケニーと同期だったな?
当時はどちらが強かったのだ?」
「少~しだけぇ ケニーのが強かったのですよ~ もうちょっとなんですよけどね~
ぼくは~ まほうが得意じゃないしから~ 剣とまほうをこう合わせたらば~
ぼくじゃかなまいませんよ~ あははは!」
「あの代は、ケニーとアルゼの2強だったのは、今でも私は覚えてるぞ」
「それで… ノア様 お説教でないとしたら… 急に思い出話とか はぁっ!
クビなんですね・・・ うわぁぁぁぁん… ポロポロ… グスン…
今までお世話になり・・・ ううぅっ… ました…」
「ぼくばくびかぁ~ しがぁたないね~… なにもでひいけどなにしこ~かなぁ」
「おい、早まるな クビになどしないぞ」
「えっ? そうなんですか?」
「ぼくだ~ くびなのですよなぁ~ そうかぁ~ みーあおおながいします~」
「お前もクビではない 勝手に決めるな!」
「はぁ…」
「昨日の出来事をこれから話すから、お前たちもそこで聞いてろ
皆、よーく聞いてくれ 昨日のサミットについて話す」
ノアは昨日の出来事を、できるだけ細かく説明した
「はい」
「スタン」
「そ奴らを受け入れるのは、危険ではございませんか?」
「危険だと私も思う しかし… 対立する方が危険度が増す気がするのだ…
考えてもみろ 方法は分からんが、たった3人でガイエンを
全ての獣人がヘヴンに降ったのだ 紛れもない事実がそこにある
そして、王都兵が探し出すよりも早く、強奪殺人事件の犯人を捕らえた
国家の捜査よりも早く捕らえられたのは、何かしらの"能力"を備えている証拠だ
根城は間違いなく王都であろう… 問題なのは兵力が分からん事だ
先だって起こった王都の、ビラ撒き犯だと、自ら言っている
それらを鑑みると、潜られて悪さをされる方が余程危険ではないか
それならば、友好的な態度で接していた方が、危険度は少ないと踏んだのだ
それに、今の状況はとても厳しい… 仲間は多い方が、何かとな…」
「はい」
「アズディニ」
「期日は早々にと… しかし、ドルー、ドゥーラン、ワンダ、泡沫国の
4か国が認めていない現状は、どうなされるのでしょうか?」
「それが大きな問題だ… あのジークと言う男 一見軽薄そうに見える
しかし、我々全員を相手に、喧嘩を売る度胸がある
同盟を組まないのであれば、"魔王"と組むとまで言っておる
大ぼら吹きか本気なのかは… 私にはさっぱり分からん… が…、
できれば"大ぼら吹き"であってほしい これは私の率直な気持ちだ
領民国際連合:ヘヴンを統べる者 そのジークは"大将"と言っていたが…
その者はとても交渉が上手い 例えハッタリだとしてもだ
正直私が敵として、最も苦手とする相手である事は間違いない
私は本音で敵に回したくない 何故なら力量も戦力も何も分からないからだ
何も分からない相手では、戦略も立てられず何もできないまま、
一方的に削られて終わるだろう… 争いとはそう言うものだ
例えドゥーランでも、ドルーであったとしても…
ヘヴンのような者たちを相手にすれば、必ず滅ぶであろう・・・
ワンダは兎も角、2国は知っての通り強国だ 強国故に、常に相手を軽んじる
今まで負けた事が無いから、相手を軽んじるのだ…
ドゥーランとドルーは、魔王軍からの盾になってもらわんと困るからな…
とは言え、同盟を解消されても困る… 王都から攻められる事もあり得るからな…
味方は多い方が良い ヘヴンと手を組む以外に方法はないだろうな…」
「ノア様、ジークの言動から、"穀物の価格吊り上げ"の件は知らず、
泡沫国が各国と友好的な同盟関係にあると言う前提で、あの場に来たと存じます
ザースマの様子から察するに、以前の価格に戻す気は無いように感じました…
さすれば各国と手を組み、仰る通りヘヴンを引き入れる事で、
泡沫国を相手にしても対抗できるのはございませぬか? 活路は見出せるかと…」
「そうかも知れぬな… 戦力差は明らかだが… 何とかなるかも知れない…
私は今夜、王都へ向かう 実行犯の処刑の件もあるからな…」
「はい」
「フラン」
「アルゼとミーアをこちらに呼んだ理由が、ヘヴンと関係があるのでしょうか?」
「あぁそうだ つい先ほどまで疑念を抱いていたのだが・・・
エヴァンスとサリトの手紙でその疑念が晴れ、確信に変わったのだ
ミーア! アルゼと隣の部屋に行って、これを飲ませろ」
「これは何ですか?」
「秘薬だそうだ アルゼに飲ませて、様子を見ていろ 変化があったら知らせろ」
「分かりました… 向こうに行くよ」
「ぼくは~ くすり~は のみませぬ~ ぜーたいんにぃ~ のまな~いぃ!」
「ガシャン!」
「あぁっ! ノア様が用意してくれた秘薬なのに、何て事をするのよ! 」
「まるで駄々っ子だな… 余程薬で嫌な思いをしたのであろうが…
まだ薬はあるから大丈夫だ 怒らなくていい
アルゼ、毒物の可能性があったから、昨夜私も少し飲んでみた
自分で試して安全を確認してからでないと、誰かに飲ませる事などできんからな
しっかりと解毒剤も用意して飲んだのだ 薬特有の不味さは全然なかったぞ
寧ろ美味いぞ そうだ… この秘薬を飲んだら、特別に美味い酒を飲ませてやる
騙す気は全然ないが、騙されたと思って飲んでみてくれないか?
もしも私が嘘を付いてたら、お前の願いを1つ叶えてやる それでどうだ?
願いは叶わないけどな 何故なら、私は嘘を付いてないからだ」
「ぼくぁ~ くすりうぉのんでら~ おねぇ~がいうぉ~かなえてぇ~くだされぇ」
「飲んだら願いを叶えろと言うのか? 強欲なヤツだ まぁ良いだろう
正し、我々が見ているここで1瓶全て飲み干せ それが条件だ」
「はい~ わかりかした~」
ノアはアルゼに1瓶渡した
「ゴキュゴキュゴキュ… ぷふぁ~ おいしいなぁ~」
「うむ… 全部飲んだな ミーア、隣の部屋で様子を見ていろ」
「はい… ほら行くよ」
ミーアとアルゼは、隣の部屋に行った
「はい」
「ノートン」
「あの"秘薬"とは、一体何なのですか?」
「あれは昨日寄越した土産だ」
「あぁ~ マジックバッグのですか?」
「そうだ 毒物や欠損でなければ、どんな状態でも治せる秘薬だそうだ
それで昨夜私自身で試してみたのだが、具合が悪いところが無くてな…
効果を実感する事が出来なかった
それで、エヴァンスとサリトからの手紙だ
2人からの手紙には、身体が不自由な者が時を経ずに治ったとある
これを見て、確信を得たのだが…」
「それではこの秘薬を… ヘヴンが作ったと?」
「土産に同封された手紙には、ヘヴンの大将が錬金術で作ったとある…
ヘヴンの親玉は・・・ そんな物を作る技術を持っているのだ
それで分かるであろう ヘヴンを敵にするのは得策ではなく、
寧ろ友好的に迎えるのが最善の策なのだと…」
「でしたら… "秘薬"の存在を各国に知らせ、
ノア様が仰る通り、友好的に迎えるのがいいのではございませんか?」
「それがだな、できんのだ…」
「? 何故でございますか?」
「同盟に反対した国に対して… "秘薬は内密に"と、手紙に書かれている
それ故に、"秘薬"を同盟を認めさせる"エサ"としては使えんのだ
ぺらり… 皆で回して読んで見てくれ」
ノートンは手紙を受け取った
「・・・確かに"内密に"とあります しかし… これは矛盾ではございませぬか?
ヘヴンは同盟に参加したい立場であるならば、ケンカ腰な態度も意味が…
しかも"秘薬"なる一手があるならば、それを交渉の材料に使えば有利に働きます
ですが、"秘薬は内密に"とする理由が分かりません
実際の所、同盟を結びたいのかどうなのか、全く分かりません」
「ノートンの言う通り、所々で相反した言動があるのだ…
これも私が、ヘヴンを敵にしたくない理由でもある
昨夜からずっと考えているのだが… ハッキリとした答えは見つからない…
だが、僅かではあるが… 可能性があるとして考え得る答えは幾つかある
ヘヴンが同盟を、"心から望んでいる場合"だが…
それならば、特段問題は無い 交渉のやり方はそれぞれだ
強気に出たりへりくだったり… 要するに緩急を織り交ぜて折衝する訳だが…
同盟など"どうでもいい"と考えてる場合だと、これはとても厄介だ…」
「? 自ら同盟と言っておきながら、"どうでもいい"とは・・・ 一体?」
「ヘヴンはガイエンを吸収し、同盟を打診した
我々の選択肢は、認めるか認めないか… この2つしかない
ヘヴン側も当然、"認められた場合"と"認められなかった場合"両方を考えていた筈
"認められなかった場合"だが、先にも話したが、"魔王と手を組む"と言っている
通常我々の言動には、必ず理由が伴うであろう それが普通であり通常だ
例えばふざけ合ってても、"ふざけている"と言う理由があって、ふざけている
ならば、言葉に理由が伴ってなければどうだ? こちらとしては混乱する
同盟を打診しておいて、不遜な態度でそれを願う様をどう読むのか…
額面通り要求を受け入れてほしい側の物の言い方として考え着くのは…
詰まるところ・・・」
「分かりました! "どちらでも良い"ですね?」
「そうだ 認められようが認められなかろうが、
ヘヴンにとってはどちらでも構わないのであろう・・・
最初に同盟を認めた我々ら3か国には、丁寧に土産まで寄越している
だが、他の国には"秘薬の事は内密に"とある
それは暗に"物に釣られて参加を認めさせるなよ"とも、受け取れる」
「でしたら、ヘヴン側には約束を守ってる振りをして、
裏では"秘薬"などの情報を各国で共有するのはいかがでしょうか?」
「そう考えるのは最もな流れだろうが… それはとてもリスクがでかい」
「??? そうでしょうか?」
「そうだ ノートンは、"約束を守ってる振りをして"と言ったな
それは約束を反故にしても"バレる筈がない"と考えての策であろう?
だが、もしもそれが明るみに出た場合どうなる? 我々の信用は一気に失う
"バレる筈がない"は、ドルーらの"戦って負けるはずがない"と同じなのだ
想定外とは、あらゆる事象を端から想定していないから"想定外"なのであって
限りなく可能性が無いとしても、頭の片隅に"もしかしたら"を用意しておき、
できる限り軽はずみな行動は慎むべきなのだ 決めつけが一番よくない
ここまで考えさせるヘヴンを、私は敵にしたくない
弱気のように聞こえるだろうが、ドルーや魔王軍以上に戦って勝てる気がしない」
「それほどの相手なのですか・・・」
「ドルーや魔王軍は強大だ ケチを付けられないほどにな…
だが、こちらは少ない戦力ではあるが、ある程度の戦略は立てられる
戦って勝てないまでも、負けない戦い方はいくらでもできる
だがヘヴンはどうだ? 戦略も立てられず、あらゆる想定もできない
国家として、一番相手(敵)にしてはいけないのは、ヘヴンのような存在なのだ」
「細かく説明を頂きましたが… 脅威と言いますか…
危険分子ような捉え方でしょうか… 正直、まだ分かりません・・・」
「まぁな… ヘヴンがやった事と言えば、"ビラ"を撒いただけではない…
そう単純に、危険視するのはどうかと言う意見も分かるが、
ガイエンを降らせてるのだからな
それにノートンも見たであろう 手下BとC 後から入ってきた手下Aを
ジークと… 仮初の王か? あの2人は完全に素人だ 剣も真面に振れんだろう
だが2人共、〇を恐れていなかった それがとても不気味ではないか
手下A・B・Cは、多少剣技の修練はこなしてるだろうが、私の相手にはならない
その中でも気になるのは手下Aだ ヤツは"精神支配系のスキル"を使っていた
それなりの精神力を有する者ならば、あの程度なら問題は無いが…
仮に能力を抑えているとしたらどうだ? 民間人なら抗う術など無い
手下B・Cも、何かスキルを持ってると私は感じた 剣よりもスキルの使い手だ
そうであった場合、ヘヴンには一体何人のスキル保持者がいるのか…
そんな者たちが、王都の民衆の中に潜んでいるのだぞ それだけで頭が痛い」
「そこまで細かく説明して頂いて、改めて怖さや相手にする難しさが分かりました
私共はその辺りが、ようやく理解できる程度ですから…」
「得体が知れない相手ほど、こちらの神経をすり減らされるのだ…
何度も言うが、そのような者を敵に回すのは、愚の骨頂だ
対応一つで、体も心も壊してしまう ヘヴンとは、それだけ難しい相手なのだ」
「ぎゃーーーーー! ノア様ーーーーー!!!」
「どうしたミーア!」
次回 第20話『その代わりの条件』
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