第18話 報復

 9月2日(異) 午後17時32分 王都:拠点


「兄さん! 兄さん!」


「ぐはぁっ・・・ くっ、、薬・・・ ティセがくれた・・・」


「い、今出すから・・・ はい… 飲んで…」



 9月2日(異) 午後18時07分 ハルヨシ村:改築中店舗

 ティセは大工と、明日の打ち合わせをしていた

 

「・・・だから明日はあーしてこーしてね

 それで、あっちはそんな感じで よろしく」


「あいよ それじゃまた明日ね」


 大工は帰って行った


「ティセ… 大変や!」


「サンダース… そんなに慌ててどうしたのよ?」


 9月2日(異) 午後18時15分 ハルヨシ村:宿屋(賃貸)


「それじゃあダンは、獣人にやられたって言うんだな!」


「指輪を買ってお店の外に出たら、獣人に襲われて盗られたって…

 その時に、わき腹を刺されたって…」


「薬はティセが前もって渡しておいたんでしょ… 助かったねホント…」


「おいティセ! 当然やり返すんだろ? なぁ!」


「当たり前でしょ! こっちは楽しくやってるだけなのに…

 無事だからじゃあ良いやなんて… 言えるワケないじゃん

 絶対に許さない・・・ 潰してやるから」


「俺らはティセに従うからよ どんな作戦だ?」


「ちょっと考えるから・・・

 ラングさんたちは、ロックさんと4人で急いでジュリアの拠点に向かって

 確か… (閉門は)22時までだよね?

 今すぐ馬車を準備して え? 持ってる1台で良いよ それで行って

 さぁ準備して 用意出来たら知らせて ロックさんは待ってて」


 ラングたちは馬車の準備に取り掛かった

 (馬車はキャビンガレージから出すだけ 馬は厩舎に預けている)

 

「ロックさんはあの"ドアノブ※"を持って行って、拠点の空いてる部屋に設置して

 設置できたら、こっちに呼びに来てよ」

 ※新しいドアノブと岩は、異世界側で保管している


「分かりました 空いてる部屋ですね…」


「ジークさんは、岩を設置しておいて」


「"岩"を置くんだな 設置してくる」


 十数分後・・・


「ティセ様! 馬車の準備ができましたよ~」


「じゃあロックさん 設置したらドアから来てね」


「このロックにお任せ下さい!」


 ロックたちはジュリアに急ぎ向かった


「大枚はたいて、こいつ(ドアノブと岩)を買って良かったな

 この部屋で(設置)良いのか?」


「うん、そこで良いよ」


「でもさティセ、これを使って王都に行き来できるのは便利だけどさ、

 レンちゃんたちにも使わせて大丈夫なの?」


「未来の2人は(ラングとレン)さ、私が"異世界人"だって知ってるんだから

 いつかの時点で知るワケじゃん 今回かどうかは分かんないよ

 秘密の部屋を通らせたからって、それでバレる事も無いんだけど…

 超不思議には思うだろうけどね」


「あいつらには、バレたって良いんだよ」


「そっか… そうだよね」


 時は少し遡り・・・

 9月2日(異) 午後18時2分 ハルヨシ村:兵舎


「ノア様、王都のセルトーアから、緊急で報告が届きました」


「何か大事があったか?」


「フィエスタで強盗傷害事件が起こったようです

 時間は、午後17時17分頃 フィエスタ内ロイゼア商店で買い物を済ませ、

 店を出た所で襲われ、購入した品物を奪われたようです

 被害者は人間の男性 襲われた際、腹部を刃物で刺されたようです

 人通りも多い時間帯ですので、双方の怒声を聞いた目撃者は数多くいたそうです

 目撃者によりますと、現場には人間の男性がもう1人居り、

 "兄さん、兄さん"と被害者に声を掛けていたようです

 ですので、この2人は兄弟だと思われます

 通報があり衛兵が駆け付けた頃には、被害者たちの姿はなかったとの事

 現場には大きな血溜まりはあるものの、血痕は途中で途切れていて、

 行方が不明との事

 被害者は"大丈夫だから大事にしないで欲しい"と言い残し、歩いて去って行ったと

 証言する目撃者もいたそうです

 容疑者は獣人の2人組 強奪後、居住エリア方面に逃走したようです

 こちらも店主と多数の通行人が目撃しております」


「腹部を刺されたのに"大丈夫だからと"言って去ったのか?」


「そのようです 複数の目撃者が証言しているようです」


「こちらで保護していれば… ガイエンに文句の1つも言えるだろうが…

 目撃者は多くいても、肝心の被害者がいないとなると難しいな」


「しかしながら… 実際に被害を受けた人間がいて、多くの者がそれを見ております

 被害者はいなくとも、容疑者の引き渡しは要求するべきかと存じます」


「…そうだな ノートンの言う通りだが、被害者が王都の人間なら

 それは王様が判断する事だ

 この被害者が、ハルヨシ村の領民であるならば話は別だ

 今すぐセルトーアに連絡してくれ

 事件に関する情報・証言を含め全てをまとめろと…

 被害者が我が領内の者であるならば、

 宰相閣下を通しガイエンに容疑者の引き渡しを要求してくれとな」


「はっ! 直ちに」


 ノートンはすぐさま、任務に取り掛かった


 9月2日(異) 午後21時55分 ハルヨシ村:宿屋(賃貸)


「ティセ様~ 開通しましたよ」


「ロックさん、あんがとさん じゃあ、向こうに行こうか」


 ティセたちは、王都の拠点へ移動した


「!?ティセ様… 我々のすぐ後に出られたのですか?」


「まぁ… それは後で説明するよ ダンたちは?」


「隣の部屋におります」


「ダン… ティセだよ 大丈夫?」


「ガチャッ あっ!ティセさん… どうぞ中に」


「ダン… 調子はどうなの?」


「ティセ… 君が薬を持たせてくれたから助かったよ 今は全然平気だよ

 血がたくさん出たせいかな… 少しフラフラするけど 痛みは全く無いよ」


「本当にごめんね… 私がジュリアに行ってって言ったから…」


「ティセのせいじゃないって 私も素直に渡せば、刺される事はなかったんだ

 変に抵抗しちゃったからね…」


「ジュリアの仕事は一旦いいから、ハルヨシ村で何日か休んでよ

 元気になったら、ハルヨシ村で仕事して」


「王都は良いのかい?」


「そうね… 再開するにしても、しばらく先でいいからさ」


「そうかい… それじゃあお言葉に甘えて、そうさせてもらうよ…

 明日ハルヨシ村に戻るよ」


「大丈夫… 今すぐ戻れるから」


「今すぐ?」


「ロックさん、2人を送ってあげて

 2人の部屋は… (宿屋の)2階の階段そばに空き部屋があったでしょ

 ベッドもあったよね?」


「ベッドありますよ それではダンさん、フランクさん、参りましょう」


「何だか分からないけど… それじゃ行くよ

 今まで買い集めた物は、隣の部屋に置いてあるから…」


「ティセさん、ありがとうございます」


「うん、2人共ありがとうね ゆっくり休んでね」


 ロックは2人を連れて、ハルヨシ村の賃貸宿屋に向かった


「はい、みんな集合~

 ラングさん、獣人とジュリアの歴史と造りについて教えて」


「はい 【連合国家ガイエン】は、獣王ガルフが治めております

 連合国家の名の通り、大小様々な村・街・国が連合国家として集結しております

 獣人とは、系統として総じて獣人と呼ばれますが、

 数多くのコミュニティ(種別)がございます

 代表的なのは、”犬人種” ”猫人種” 兎人種” ”熊人種” ”猿人種”など

 それら以外にも多数おります 連合国家ガイエンは、それらの集合体ですな

 獣王ガルフは "鬣犬人種はいえなじんしゅ"  ハイエナ野郎と嫌われております

 連合国家でありながら、代表者や盟主ではなく王を名乗る浅ましさと、

 粗野で粗暴な振舞いが他種族に嫌われる所以ではないでしょうか…」


「要するに、ハイエナクソ野郎って事だな」


「ハイエナねぇ~」


「おっ! 大将の頭脳が徐々に…」


「次にジュリアですが、御存じの通りジュリアは泡沫国の領地であり王都ですな

 過去には魔王の軍勢によって奮戦虚しく陥落おとされましたが、

 近隣同盟軍との共闘により、僅か数年で奪還しました それを"大戦"と言います

 大戦後にジュリアを”分割統治”する事で話がまとまったのですが…

 泡沫国の王様 ラスト王がすんでのところで、その約束を反故にしました

 その横暴さに同盟軍は大いに怒り狂い、戦争に発展しそうな勢いでしたが、

 魔導王国ドルーのヴァティス魔女王の執り成しで双方は矛を収めたらしいですな」


「そんだら、人間の王様がクズなんじゃん ゲラゲラ!」


「いるんだよなぁ~ お願いはするけど、約束を守んねぇヤツってよ」


「サイテーな王様ね…」


「それ以後王都ジュリアは、近隣諸国の貿易や流通の要として、

 現在のように賑わうようになったのですな」


「どうしてそうなるのよ?」


「ハルヨシ村の深淵で採れる穀物のお陰ですな

 近隣諸国は、その恵みを頼りにしておりますからな

 最近では、穀物の価格を不当に釣り上げてると噂されてますぞ」


「それぞれの国で取れる物と、交換したり買ったりするんだろうよ

 色んな意味で強気に出られるのは、食い物に困らねぇ国だからって事だな

 だけどよ… それも結構リスキーだよな 逆に狙われる可能性は高まる

 政治と交渉は強気にやるのは基本だけど、やり過ぎると反感を買うからな」

 

「バカだねぇ~ もっと上手くできるだろうに

 この国の王様って、私より才能無いんじゃないの? ゲラゲラ!

 そのまま普通にやってて、みんなに感謝されてた方が良いじゃんか」


「欲望には終わりがねぇ~んだよ どれだけ儲けても、更にもっと儲けたいんだ 

 俺たちもそうだろ? 金の亡者も楽じゃねぇ~な ぎゃははは!」


「まあね 内緒だぞ ゲラゲラ!」


「もうあんたたち… ダン君の仇を討つんでしょ!

 バカな事言ってんじゃないわよ…」


「分かってるつーの 獣人にやり返すんだよ…

 マンガとかの獣人だと、大体が乱暴者だけどそこそこ強いみたいな

 でも、最強って感じでもない中途半端な感じだよな

 仲間になると、みんなの為に一生懸命戦うみたいな… そんなイメージだな」


「獣人ってのは、大体そんな感じで描かれてるけどね…

 ドルフさん 今手持ちで多い護姻環って何がある?」


「多いのか… 人型なら、"ゴブリン"、"コボルト"、"スケルトン"、"ワーウルフ"

 "ワードッグ"、"ワーキャット"、"ハーピー"

 動物系なら、"吸血コウモリ"、"出歯ネズミ"、"クレイジードッグ"

 虫系なら、"毒蛾"、"突撃蜂"、"ブルースコーピオン"、"キラーアント"、"眠り蝶"

 そんなもんだな」


「もしも従魔が〇んじゃった場合どうなるの?」


「ティセ様の場合、鎖(ネックレス)に通した指輪が砕け散る 

 従魔が〇んだ場合、それで知る事ができるのだ」


「コストの上限まで契約してる状態で、新しい従魔と契約したらどうなる?」


「契約した順で眷属になる訳だが、コストが足りなければ契約自体できないぞ」


「特定の従魔を残したい場合、どうすれば良いのよ?」


「それならば、護姻環を身に着けなければ良いだけだ

 コスト以内で外したり加えたりすれば良い」


「あ~! デッキみたいなもんか… なるほどね

 コスト以内なら10体も契約できるもんね 便利だね~ 

 従魔はどうやって違う護姻環に移動させるんだったっけ?」


「教会の隣に【従魔の館】がある 金を払えば相互に移動させる事ができるぞ」


「それは前に聞いた気がするなぁ~

 それじゃあ… 従魔が捕まったりした時、そこから主に辿り着ける?」


「それは土台無理な話だ 従魔を連れて歩く場合、魔物と間違われないように、

 目印を付けるのが一般的だ それで誰の従魔か判断するからだ

 そうしないと、間違いなく討伐されてしまう

 目印無き従魔の主人を探し出すなんて、どうやってもできるはずがない」


「護姻環自体が壊れたら、その時中や外にいる従魔はどうなる?」


「破損の度合いにもよるが、最悪の場合は消えてなくなってしまうな」


「分かった ありがとさん」


「俺らは何をするんだ?」


「特に何もしなくていいよ」


「何もしないって…」


「ティセ様~ ダン君兄弟を送って来ましたよ」


「ロックさん、丁度良かった 行こうと思っててさ

 後で文章を考えて書くから、コンビニでコピーしてほしいんだけど」


「コピーですか? 良いですよ 何枚ですか?」


「100枚くらいで良いかな?」


「100枚ですか 分かりました」


「何を100枚も刷るんだよ? おじさんに教えなさいよ」


「それはねぇ・・・」



 9月10日(異) 午前9時15分 ハルヨシ村:兵舎 朝会議中


「おはよ~ございま~す! ナイトホーク郵便で~す」


「ご苦労さん」


 ノートンは、手紙を受け取った


「速達!?」


「ノートンどこからだ?」


「ジュリアのセルトーアから"速達"です」


「速達・・・ ガイエンからの返答か? 丁度朝会議中で皆いる

 ノートン読み上げてくれ」


「はい 本日未明、王都中に同一のビラが多数撒かれており…

 同封致します… ビラの内容は、現物を御確認下さい

 宰相閣下からですが… えー… 王様は怒り心頭の御様子

 ガイエンと一戦交える可能性があるとの事…

 今回は緊急で明日、裏でのサミットを開催をするようです…

 ノア様の出席を… 各国の首脳たちが強く望んでいると…

 以上 セルトーア 文章はここまでです」


「やれやれ、またか・・・」


「もう2枚手紙がございます… アズディニからです…

 えー… 王都の領民から強盗犯の聞き込みをしたとあります…

 目撃者が複数見つかりましたので、私のスキル【似顔絵師】で、

 被害者の兄弟らしき2人を描いたところ… えー… こ、これは!?」


「ノートン、どうしたのだ?」


「ノア様、ご覧ください…!」


「こ、これは… タカミ村のダンとフランクではないのか!?」


「手紙の続きがございます… 3人の目撃者から似顔絵を描き、

 3人共に同じ被害者を描きました…

 その絵を見る限り、被害者の兄弟は・・・

 タカミ村のダン兄弟ではないでしょうか?

 御検分お願い致します アズディニ 以上でございます…」 

 

「この似顔絵は、ダンとフランクだ… 間違いない…

 アズディニの(似顔絵の)スキルが間違うはずがない…」


「そしてこちらが、現場に撒かれていた"ビラ"でございます」


 ノートンは同封されたビラを、ノアに渡した


「天誅

 我々は絶対に許さない! 獣人を排除せよ

 人〇し集団 犯人の獣人を早急に捕らえよ!

 我々の要求は〇人犯の処刑 それのみである

 要求が叶わない限り、他の国家も同罪とする

 決断なき場合どうなるのか… 乞うご期待!」


「〇人犯の処刑なら、何とかなりそうだが…

 そうなると… ダンは殺されたのか…」


「先日ありました"強盗傷害事件"の消えた被害者の仲間でしょうか…

 被害者が亡くなったので、その仕返しではございませんか?

 となると… タカミ村の者たちの線が…」


「そうとしか考えられぬが・・・

 こちらとしては、ガイエンがどうなろうと関係無いが…

 先ずはダンとフランクの安否を確かめないとな… スタンは2人の確認を急げ

 安否の確認が出来次第、連絡をしてくれ

 こちらはレイリアンに任せる 他の者は先ほどの通りの任務だ

 私はこれから王都に向かう ノートンはついてこい」


「はっ!」「はっ!」

 

 

 9月10日(異) 午後12時07分 ジュリア:ホウセンカの酒場 食後


「しっかし"ビラ撒き戦法"なんて、効き目あるのかよ?」


「国同士で多少でも揉めれば良いんだから これでいけるとは思ってないよ

 次は"ゴブリン爆弾"とか"スケルトン爆弾"を考えてんだけどさ

 "狙われるモンより、狙うモンのほうが強いんじゃ"ってパパが言ってた

 何回もやられて、次は何やられるんだって構えるのって、気が休まらないでしょ」


「あ~ パパは極道モンも好きなのか? 名言中の名言なんだぜ

 極道物のバイブルだからな 俺もそれは定期的に観てるぜ

 "ゴブリン爆弾"とか面白そうだけどな ぎゃははは!」


「ふ~ん 有名なんだね さてと… 次はいつやろうか?」


 

 翌日 9月11日(異) 午前10時05分 鳳凰宮:特別会議室


 前日王都入りしたノアは、スタンからダン兄弟の報告を受けていた…

 ダン兄弟とは面会はできたが、どことなく様子がおかしかったと…

 ダン兄弟がヘヴンと関係がある確率は50%として頭に入れていた



 国家         出席者

 魔導王国ドルー  主:魔女王      :ヴァティス魔女王

 ドゥーラン王国  主:ドワーフ     :ワイゼン王

 連合国家ガイエン 主:獣王       :ガルフ王

 ファフ王国    主:エルフ       :サリト王

 泡沫国      主:人間       :ザースマ準男爵

 泡沫国ハルヨシ村 主:人間        :ノア男爵

 ワンダ村     主:小人族       :ポタリス族長


 妖精の里ルルン ピクシークイーン:エヴァンス女王は不参加


「・・・何度言わせるんだ! コノヤロー!(ガ)」


「貴様がさっさと、犯人を捜さないからではないのか?

 我が領民が被害にあってるのだ… 迷惑を掛けていて、

 何故知らん顔できるのだ?(ノ)」


「犯行声明のビラに書かれてる通り、貴様ら"獣人"は皆に嫌われておる

 さっさと犯人を捕まえて渡せば良いだけじゃないか 本当に迷惑だ…(サ)」


「そんなもん、どこでもよくある事件だろ

 獣人が犯人だとか知らねぇ~よ 責任をな擦り付けるんじゃねぇ!(ガ)」


「他の国家も同罪なんて、とんだ迷惑だ(ポ)」


「この話はこれでお終いにして、本題は穀物の価格よ

 急に価格を倍以上にするなんて、頭がどうかしてるのよ!(ヴ)」


「ノアの深淵を、自分の物だって勘違いしてんだろ(ポ)」


「ノアよ… ラストは我々と矛を交える事も厭わんらしいぞ

 前回のサミットでサリトが言ったのだが、貴様は独立するべきだ

 さすれば、我々は喜んで手を貸すぞ 早々に決断するが良い(ワ)」


「ノア卿は王様の一家臣ざます ノア卿にたかる、まるで蠅のようざますね

 卑しい根性丸出しで、品性の欠片もないざます(ザ)」


「卑しい根性丸出しで、品性の欠片もないのは貴様だろうが!

 殺すぞコラ!(ポ)」


「小人風情が私を〇すとは 面白いざますね(ザ)」


「もう我慢ならねぇ! 泡沫国との同盟は終いだ(ガ)」


「我が方と同盟無くして、ガイエンはどのように命を繋ぐのざます?

 うっかり失言してしまったんざますが、"短気は損気"とは貴様の事ざますね

 許してやっても構わないが1つ条件があるざますよ

 ガルフ… 貴様は王を退くざますよ

 今回はそれだけで許してあげるざますよ(ザ)」


「ふざけた事言ってんじゃねぇよ! 俺は獣人どもをまとめてここまで来たんだ

 王を退けだと! 寝ぼけた事を・・・ 誰が辞めるか!(ガ)」

  

「流石にそれは、やりすぎではないのか?(サ)」


「文句があるなら、幾らでも受け付けてやるざますよ(ザ)」


「ねぇノア あなたの親分さんの代理は、こんなにも偏屈なの

 ここ最近は特にひどいわよ 全くもって話にならないのよ~

 ここにいる全員を相手にするって息巻いてるの 信じられる?

 それでも勝てると思い込んでるの… 耄碌してるとしか考えられないわ

 穀物の価格を不当に上げたのも知らなかったんでしょ?

 悪い事は言わないから、こちら側にいらっしゃいな(ヴ)」


「・・・・・・(ノ)」


「言いたい事は山ほどあるが、半月以内に穀物の価格を元に戻せ さもなければ…

 ここにある貴様(泡沫国)のイスは強制的に無くなる 決をとる必要も無い

 駄々を捏ねたところで、貴様の未来は… 明るくはないぞ(ワ)」


「ジュリアを陥落おとしたら、ノアにあげるわよ

 貴方だったら、この庶民(ザースマ)より少しは真面な政治ができるんじゃな~い?

 そうでなければ(敵対するなら)、ジュリアも貴方の深淵を頂くかもしれないわ

 諸々の決断は慎重にするのよ 分かった? 

 それが(魔導王国)ドルーからの忠告よ(ヴ)」


「ラスト(王)は、耄碌しているか操られておるのだ

 もしかしたら、既に〇んでるのかもな… あり得なくはないぞ

 ノアよ、いい加減気付け こんな小心者に専横されているのだぞ!(サ)」


「そうね… ラストが生きていないんだったら好都合ね…

 皆がラストを恨んでいるのよ それでこの仕打ち

 ノアは分かってるのかしら?(ヴ)」


「羽虫共の言葉は、耳には入って来ないざます

 もう話す事はないので早々に帰られるざますよ(ザ)」


「ザースマとやら… 貴様は一体何者なのだ?

 王様と貴様は、どのような関係があるのだ(ノ)」


「私と王様の関係ざますか? 私は大変義に厚い忠臣ってだけざます

 王様からの信頼も絶大ざますから、"養子に来ないか" なんて誘われてるざます

 私は何度もお断りしてるざますが… 王様は本当にしつこいざますからね…

 そこまで私が必要なら、今度お受けしても良いざますよって言おうかなって

 考え中ざますよ(ザ)」


「ほぅ… そんなに話は進んでいるのか…(ノ)」


「そうざますよ それがどうしたざますか?(ザ)」


「1つ確認したいのだが(ノ)」


「何ざますか?」


「王様は、確かに生きているのだろうな?(ノ)」


「当り前ざます 死んだ人間から【禅譲】なんてできないざますよ(ザ)」


「そうか… それは安心した 王様の体を、少しだけでも良い 労わってやってくれ  

 各々方… 私は先に失礼する 行くぞノートン(ノ)」


 ノアとノートンは、部屋を出て行った・・・


 時は少し遡り・・・ 前日 昼飯前

 フィエスタは普段通りだったが、王宮近辺の警備を見たティセ

 初めて鳳凰宮(王宮)を遠目で見たが、どことなく緊張感があった 些細な違和感

 フィエスタを休む事無く、裏でサミットが開催されるんじゃないか・・・

 そう考えたティセは、ハルヨシ村から応援を呼んだ


 9月11日(異) 午後14時47分  連合国家ガイエン領:ペカル


「あら、こんにちは!? 人間の方が来られるなんて珍しい…

 そうですね 最近と言っても大戦前ですかね? 以前は結構来られてましたよ

 今はアレでしょ… そうそう! アイツねぇ~ 人間が嫌いだから…

 我々? そんな事ないですよ 人間に限らず、皆さんと仲良くやりたいですよ

 ここは長老さんですね はい、いますよ 時間は大丈夫じゃないかな?

 あっち行ってこっち行けば はい そこに長老さんの家が… はい

 あー… そうですね できれば はい お願いできれば そりゃ…

 えぇ、長老さんもそう言うと思いますよ 案内しましょうか? ではこちらへ

 近いですからね~ ・・・・・・

 長老さん! 長老さん! お客さんですよ はい それでは失礼しますね」


「これはこれは、初めまして 人間の方が… そうです、私が長老です 

 え~… 同盟に加わる前ですかね…? えっ? いや、ですね

 そうです ここは私がまとめてましたけど… はい そうですね… 12年ほど

 まぁ・・・ 私は腕力が無いですからね 仕方ないですよ・・・

 いやいや、誰でもいいんですよ ちゃんとやってくれればね そこは不満ですね…

 他の? そうですね… 小さいのも共同も含めたら… 確か13だったかな?  

 はい? それをみんなに聞けばいいの? 別にいいですよ 全部ね? 

 私共ですか…!? それは地獄に仏… どうせ地獄なら… ニヤリ」



 9月16日(異) 午後18時23分 ジュリア:拠点A


「なぁティセ 前回ビラ撒いてからもうすぐ1週間だけどよ

 次の"愛のゴブリン爆弾作戦"はいつやるんだよ? おじさん退屈なんだよ…」


「そうですねぇ~ 明日で1週間だから、明日やろうか?」


「"スケルトン爆弾"もだろ? 楽しみだな!」


「コンコン! ナイトホーク郵便で~す!」


「ガチャ! 暑い中ご苦労様~

 コレ、うちのカワイイボスから 美味しいから飲んでみて」


「頂いちゃって良いんですか? ありがとうございますぅ~

 ゴクゴクゴク… ピャ~ 美味しい♪ 何ですかこれ?」


「今度販売しようかって、ボスが開発したのよ どう、売れそうな感じ?」


「絶対売れますよ! こんなに美味しいの無いですから」


「はい、美味しい頂きました~♪」


「ご馳走様でした それでは失礼します ピュ~」


「ありがとね~」


「ティセ~ はい手紙 味は美味しいってさ 大丈夫みたいよ」


「ガサガサ ぺらり・・・・・・

 色々混ぜて試したから 何かで割っても、効果はそのままだったからね

 "素早さの薬(ハイスピードポーション)"と味の相性が良かったみたいね」


 配達員は不調部分が"全回復"して、"素早さが2倍"になってる事を知らない…


「ふむ~… さてどうするかな・・・」


「どうしたんですかティセ様?

 甘酸っぱい系ですか? それともビターなほろ苦系ですかね?

 近所の女子中高生とか、奥手な中高生の男子諸君に、

 私は青少年のカリスマ&恋愛の教祖様って言われたかったり言わせたかったり

 どこからのラブレターですか? 教祖様が指南してあげますよ」


「カリスマとか恋愛の教祖様って、結局は誰にも言われてないのね・・・」


「キャン玉教祖如きが、ずけずけとしゃしゃり出るんじゃねぇ~よ

 テメェ~はハルヨシ村で熟女相手に"キャン玉占い"でもやってろ! ガルル!」


「色んな魔物の睾丸料理を食べてるんだから、"異世界睾丸料理研究家"が良いかもよ

 "最近調子が良い"って、ロックも言ってるじゃない ニッチなとこ攻めないと」


「ムキー! 誰がそんな商売するんじゃゴラァ! この夫婦だきゃ~許せない!!

 このアホ夫婦め! お前らがキャン玉喰らえ ガッデム!」


「毎食喰らってんのはテメェだろうが!」


「何よ、折角新しい商売教えてあげたのに! ムキー!」


「仕方ないな~… 私が(交渉の仕方)教えるしかないか…」


「ティセが教えるってか!? 俺らは(3人)全員既婚者だぞ ぎゃははは!」


「既婚者だからって、(交渉)相手を前にしたらさすがに緊張するでしょうよ?」


「そりゃあ… 緊張はするわな…」


「(国家間で)言いたい事も言えないとさ… こんな世の中でしょ…

 ポイズン(しっぺ返し)食らったら、後で困っちゃうじゃん?」


「確かに… ティセの言いたい事は分かるけど… でも"ポイズン"って何よ?」


「その後の(国家間)お付き合いはさ、せめて対等であるべきでしょ?」


「ティセ様のそのお言葉・・・ 私の奥さんにも是非聞かせたいです・・・」


「私の(国に)求める要求だとか理想ね トリセツ的な…

 そんなのを相手(各国首脳人)の頭に入れて欲しいワケよ

 その感覚分かるかなぁ~?

 そんじゃあ"我こそは"って人、限定1人だけ 挙手!」


「はいは~い♪」「は~い♡」「はい!」


「え~と・・・ 元気があったから、ジークさんに決定!」


「よっしゃ~! 君たちは元気がないんじゃ! だから選ばれないの 分かった?」


「何よ、屁こき虫のクセに偉そうに ムキー!」


「ティセ様~ 元気じゃなくてやる気で選んでくださいよ~

 私はいつも〇ぬ気で頑張ってるんですからね その部分を評価してくれないと…」


「そうなの? いつも〇ぬ気で頑張ってたんだ? それは評価しないとね 

 じゃあ、ロックさんにしようか?」


「それはずるいぞティセ! もう俺に決定したじゃないか!」


「うるさいうるさい! ティセ様の決定はぜった~い! はい終わり」


「こんなに〇ぬ気で頑張ってるなら良いじゃん ロックさんに決定!」


「クソ~…」


 ティセとロックは別室に移動し、約30分後戻ってきた・・・


「・・・・・・」


「ロック? 顔が青いわよ… どうしたのよ?」


「私・・・ 本当に〇ぬかも・・・」



 次回 第19話『戦ってはいけない相手』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る