第17話 未来からのお届け物

 8月9日(異)午後15時過ぎ ハルヨシ村:バザール

 ジークとクラハは、バザールで金銀製品の買い付けをしようとしてた


「私は、クリフ商店から見ていくよ」


「俺は、この露店から見ていくぜ」


「分かった」


「そんじゃ帰りに、ハーランドの店に寄ってチキン買って帰ろうぜ」


「それいいねぇ~」


「時間は17時な ここに集合」


「おっけー!」


 ジークたちは、別行動を開始した


 ジークが露店の商品を物色していると、一人の男が話しかけてきた


「ハァハァ… やっと見つけた… あなた… ジークさんですよね? ハァハァ…」


「!? 見つかっちゃったかぁ~… って、君誰なの?」


「あぁっ! 失礼しました… ナイトホーク郵便デラックスです ハァハァ…」


「何で俺だって分かったのさ?」


「だって、ソックリじゃないですか ほら」


 配達員はジークに、似顔絵を見せた


「全然似てねぇ… 5歳児が描いたんじゃねぇのか?」


「悪口は止めて下さい! ピクシー・クイーン:ピコ様からの御依頼なんですから」


「ピコだって!? ピコはこの村にいるけど、ピクシー・クイーンって何なの?」


「えっ! この村に、在りし日のピコ様がいらっしゃるのですか?

 超感激なんですけど⤴ 見てみたいけど… やっぱ駄目だよな…

 連合国家ヘヴンの御領主様ですよ」


「あのさぁ~… 連合国家ヘヴンって国、聞いた事ないよ どこにあんの?」


「そっか~ この時代って、まだ無かったんでしたっけ?」


「君は誰で、どこから来たの?」


「僕は”数寄屋橋鋤郎すきやばしすきろう”と申します みんなからスキッド・ロウと呼ばれてます

 スラムなんて、ないんですけどね ナハハハ!

 連合国家ヘヴンのヘヴンリィから来ました… ジュリアってご存じですか?」


「(そのネーミングのセンス… ティセの影響か?)

 ジュリアは分かるぜ 隣の大きな街だからな」


「そのジュリアが後に"ヘヴンリィ"になるんですよ

 100年前は、もう変わってるって勉強したんだけどな~

 正確には102年後から来たんですよ お荷物をお届けに」


「まぁ…一応な… 落ち着こう…

 100年後はピコが後を継ぐなんて、余程人材が不足してんだな…」


「何て事を! ムキー! 人間種最後の功労者ティセ様がお亡くなりになって、

 後を継いだのがピコ様です」


「人間は滅んだのか!?」


「えーと… 違いますよ 建国に携わった中で、人間種最後の功労者がティセ様です

 人間はたくさんいますよ 僕だって生きてるじゃないですか ナハハハ!」


「あらそう… ならいいや

 しかし、何でピコなの? あいつ何もできないでしょ」


「それで良いのです 国民全員がピコ様の臣下 一丸となって支えてますから

 それにラング様とレン様 お二人がピコ様をサポートしておりますので、

 さらに安心できます

 ピコ様は"象徴"なのです そこにいるだけで良いのですから…」


「象徴ねぇ… 我が国の立派な"象徴"とは大違いだな…

 それにしても、あの2人はまだ生きてんのか? 長生きだねぇ」


「ラング様はかなりの御高齢です 最近はお体の調子が優れぬようです…

 レン様はお元気ですよ」


「へぇ~ やっぱドワーフ以上に、エルフは長生きなのね

 まぁそれより… 荷物は俺宛なの?」


「7人の内、誰でもいいと指示されてます

 ティセ様、ジーク様、クラハ様、ラング様、レン様、ドルフ様、ロック様です」


 ジークは、自分以外の似顔絵を見せてもらった


「誰一人、全然似てねぇ・・・ この絵、全部貰っていい?」


「もう使わないのでいいですよ はい、どうぞ こちらがお荷物です」


「軽っ! 中身何なの?」


「配達員は、中身知らないですよ…」


「そりゃそうか… ありがとう 確かに受け取ったよ

 3人に宜しく伝えてくれよ」


「承知致しました それでは失礼しますね」


 配達員 数寄屋橋鋤郎は、人込みに消えていった・・・


「・・・・・・」


 ジークは、クリフ商店へ向かった


「よう、今日は終わり もう帰ろう」


「何でよ? まだ何も買ってないじゃない…」


「いいから やる事があるんだよ」


 ジークはクラハと共に、宿屋へと戻った


「ティセ… ロックは?」


「向こうの部屋でよだれ垂らしながら、お金を勘定してるよ」


「卑しい奴だな・・・ 買い物行こうぜ」


「・・・何を買うの?」


「ビールとつまみ、それに日用品だな 他にも色々と」


「私、アップルティーとサラミ 箱で買ってよ」


「いいぜ 行こうか」


 ティセたちは、現実世界で買い物を済ませ戻って来た


「ちょっくら出てくるわ~」


「ちょっと、どこに行くのよ!」


 ジークが向かった先は・・・ ハルヨシ村:新太陽園


「こんちは~ ピコいます?」


「あら~ ジークさん ピコ~! ジークさんよ」


「とうとう私の部下になる決心がついたのね… いいわ 部下に…」


「バカ言ってねぇで、お絵描きをして下さい

 ティセと・・・・・・」


 ジークはピコに、主要メンバーの顔を描かせようとした


「描いたらどうせ笑うんでしょ! ピコは描かない!」


「園長センセー これは"クレヨン"と言ってお絵描きの道具です

 画用紙ノートも沢山買って来ました

 みんなに配って下さい ピコは要らないみたいです」


「まぁ~ いつもありがとうございます

 みんな~! ジークさんからお絵描きの道具を貰いました~

 せーの! じーくさんありがとう!」


 子供たちは喜んでいる


「うわ~んわんわんわん… チラッ うわ~んわんわんわん… チラッ…」


「その毎度の嘘泣き… もういいから… ほら、最後の"クレヨン"

 みんなの顔を描いてくれよ 描いてくれたら、良い物やるから」


「良い物…? 分かった描くよ…」


 ピコはティセの似顔絵から描き始めた


「ふぅ~… はい、ロック描いたよ」


「はい、よく頑張りました 頑張ったピコさんには…

 "リマちゃん人形の着せ替えお洋服"をプレゼントしま~す」


「ぎゃ~!カワイイ☆ みんな見て~ ぴゅ~」


 ピコは行ってしまった・・・


「あんなにみんな喜んじゃって

 ティセさんもジークさんも、いつも良くしてくれて…

 本当にありがとうございます」


「いいんですよ 子供は国の宝ですからねぇ

 しかしピコは、もうちょっと厳しめにやらないといけません

 道徳の教科書と計算ドリルを買って来ました

 これで毎日勉強させて下さい 後の領主として恥ずかしくないように」


「後の領主?」


「そんな事になったら大変でしょ だから」


「はぁ・・・?」


 ジークは宿屋に戻った


「ただいま~ この中は涼しいね~」


「もう、どこに行ってたのよ!」


「女の子に尻尾振って来たんだよ」


「ムキー!」


「ティセ、外は"激アツ"だぜ」


「あぁっ! 錬金術やるの忘れてた・・・ 今日はもうお終い

 ラングさんたちは、3人でご飯食べて来なよ

 お酒もガブガブ飲んで良いからね はいお金ね」


「しかし… 10万は多すぎです・・・」


「いいんじゃね 残ったら3人で分けなよ ティセからの小遣いだろ」


「はぁ… それでは有難く頂戴致します」


 ラングたちは、食事(飲みに)に行った


 ティセたちは、暗号を幾つも設定し共有していた

 その中には、ラングたち異世界人も知らない暗号も存在した

 "激アツ"も、その1つだった


「どこが良いの?」


「秘密の部屋でいいんじゃねぇかな…」


 ティセたちは、秘密の部屋に移動した


「それで、何があったの?」


 ジークは今日あった出来事を、皆に詳しく説明した


「これが配達員、数寄屋橋鋤郎すきやばしすきろう君 通称スキッド・ロウが持ってた似顔絵

 こっちはさっき、ピコに描いてもらった似顔絵

 すぐ分かるように、俺が右下に名前を書いておいた 見比べてくれ

 102年経っても全然画力があがってねぇが、問題はそこじゃない

 それぞれの絵とほぼ一緒 間違い無くピコが描いた証拠じゃねぇか?」


「そうみたいだね… あいつ、何ならできるのよ…

 それで未来のピコは、何を送ってきたの?」


「俺もまだ見てねぇよ こう言う物は、大将が先に見るもんだろ ほらよ」


 ティセは荷物を受け取った


「軽いね… 何だろ ばさばさ… サコッシュ… マジックバッグだ※」

 ※ティセは商人スキル【鑑定】が使える


「中に入ってるだろ?」


「ごそごそ… 手紙が2通と… 岩!? 重っ! 早く持って!」


「ティセ! この岩は…!? マジか…?」


「ティセ、早く手紙読んでよ」


「分かった… 読むよ」


 ティセは"先"と書かれた手紙を読んだ


「・・・ピコからの手紙だ あいつ、文句しか書いてないよ ムキー! ポイッ」


 ティセは"後"と書かれた手紙を読んだ


 ティセ様、レンでございます 初めてティセ様にお手紙を書きますね

 ピコ様の文章では伝わらないかと思い、私がお伝え致します

 かく言う私も、文章は分かりづらいかも知れませんが、どうかご理解ください

 送らせてもらった"岩"ですが、

 ティセ様のようにニホンから来た者が所持していた物です

 その者の名は"キムラバヤシ カネミツ"

 その岩を設置すれば、その者が所有する敷地に出られるそうです

 お話しがあるそうなので、ご都合がつきましたら出向かれては如何でしょうか?

  

 ティセ様が天に還られてから、早や二十と余年…

 瞼を閉じると、あの楽しかった日々が昨日の出来事のように蘇ります

 今では当時の仲間はラングしか居らず、そのラングもお迎えが近いようです

 レンはとても淋しいです ティセ様にもう一度お会いしたいです

 ティセ様にお仕えできて、レンはとても幸せでした

 ティセ様が生まれ変わったら、またレンを家臣にして下さい 必ず探しに行きます

 長々と失礼しました レンより 愛を込めて


「うわ~ん… (全員号泣)」


 時間が経ち、少し落ち着いた・・・


「グスッ… 泣かすねぇ…」 


「まぁまぁまぁ… "キムラバヤシ カネミツ" さんの所に行かないと」


 ティセたちは、現実世界へ戻った


「今の時間は… 18時12分… 訪ねるには遅い時間だな…

 でも良いか、そんな事は気にしねぇ なんてったって俺は非常識だからな」


「ティセは、こんな風になっちゃダメだからね」


「なろうと思ってもなれないから大丈夫」


「今日は… 土曜日か これからティセを(家に)送って、留守番だぜ」


「分かった 帰ってきたら連絡して

 ロックさん、駄菓子のさぁ"どんたく野郎" 箱で買っといて」


「駄菓子の"どんたく野郎"を箱買いですね 買って来ます」


 ティセを送り届けた後、再びマンションに帰って来た


「岩はどこに置くんだ?」


「サイドボードが丁度いい高さだな そこでいいんじゃね?」


「招き猫についてた座布団が、岩に丁度良いよ 何かカワイイ

 祀ってる感があるじゃない♪」


「ロックは、マジックバッグを持ってろ 嫁ちゃんは開いてくれ

 俺が取り出すからな」


 3人は息を合わせて、マジックバッグから岩を取り出した


「ふぅ~ これで完了」


「岩を設置したら、ドアが具現化しただろ 

 名簿に名前を書いたら、これで行けるワケだ」


 3人はドアを抜け… 秘密の部屋の前に到着


「鍵掛かってたら最悪だな」


 ジークはゆっくりとドアノブを回す・・・


「ガチャッ」


 ドアを開けたジークたちは、部屋に入った


「ティセの方(秘密の部屋)と同じ作りだな…」


 クラハが、リビングに置いてあったメモ(書き置き)を見つけた 


「ねぇ見て… コレ」


 ジークはメモを読んだ


「何々… この部屋に来た人へ

 僕を訪ねて来たなら、夜中でも早朝でも構いませんので家に来て下さい

 ドアを出ると、そこは物置です 外に出るとすぐ近くに自宅があります

 木村林金光きむらばやしかねみつ


「行ってみようよ」


「行きますか」


 ジークたちは部屋を出て通路を通り… 物置から表に出た


「この家だな… 郵便受けの名前も間違いない」


 クラハは、呼び鈴を押した


「ピンポ~ン♪ ピンポ~ン♪」


「は~い! ちょっと待って下さ~い」


 2~3分経って、男は玄関に出てきた


「は~い! どちら様ですか?」


「郵便じゃないで~す 岩の件で来ましたよ」


「!? ホントに? 上がって下さい どうぞ!」


「おじゃましま~す」


 男の案内で、居間に通された


「何か飲みます? コーヒー お茶 オレンジジュース ビール

 何でも良いですよ」


「悪いねぇ~ 俺はビールで」


「私も」


「私も」


「はい、ビール3つですね 少しお待ちください」


 男は缶ビールを持って来た


「かんぱ~い!」


「君の話の前にさ、色々と聞きたい事があるんだよね 聞いてもいいかな?」


「何ですか?」


「まず、ここはどこなのさ?」


「ここは、東京ですよ」


「あー… 東京のどこ?」


「台東区の花川戸って所です 御存じですか?」


「え~と… 聞いた事はあるな… 確か 隅田川の近くでしょ

 花火中継観た事あるからさ(近けぇーじゃねぇか…)」


「そうです! 花火のすぐそばなんですよ~」


「へぇ~ 君は学生さん? 全然若いよね~」


「大学生です 〇〇大学の3年です え~と… お名前は?」


「代表して俺の名前ね 鴨鍋輪公四郎かもなべわこうしろうで~す」


「ご存じだとは思いますが、木村林金光きむらばやしかねみつです」


「そんでカネミツ君 わざわざ102年後の未来から、俺たちに何の御用かな?」


「先ほども言いましたけど、僕3年なんですよね

 単位がヤバくて、そろそろ異世界は引退しようと思ってたんですよ

 異世界は確かに面白いですよ 金を稼ぐチャンスもある だけど…

 〇ぬかもしれないリスクなんて、背負えないですよ

 そんな時にレンさんと知り合いまして、今に至るって状況ですね」


「ふ~ん 卒業したら、何かやるの? それとも就職?」


「起業したいって考えてます できれば在学中に

 それでご相談なんですけど…」


「一応言ってごらんよ グビグビ」


「開業資金として、ドアノブと岩をセットで・・・

 4800万で買ってくれませんか?」


「4800万ねぇ~ ・・・いいぜ買ってやるよ」


「すごっ! 鴨鍋輪さんって、決断が超光速ですね!」


「条件と言うか… 忠告はしておくけどな、

 異世界の事は、世間には内緒な ネットに晒すのは特に止めといた方がいい

 〇されるかも知んねぇ~ぞ ただ、それを守ってりゃ何も問題は無い」


「ゾワッ… はい… それは必ず守ります…」


「君は良い子だねぇ~ ロッ… 禿杉田さん、明日頼んだよ」


「それでは明日の午前中に、もう一度伺いますねー

 こちとら改名申請出しとるんじゃコラッ! ムキー!」


「分かりました お待ちしてます…」


 ジークたちは・・・ 帰宅した


「あなたさぁ… 4800万なんて即決しちゃったけど、高くない?

 交渉は任せろなんて言って、全然交渉しないじゃない!」


「何でよ? 全然高くねぇ~って 俺は10億くらい吹っ掛けてきても、

 不思議じゃないって思ってたんだ そんな額は払えないけどな

 上限は1億としてたら、半値以下がきたんだから喰いついちゃうでしょ」


「騙される可能性は、あるんじゃないか?」


「ん~ それは絶対にない… とは言い切れないが、ほぼ無ぇ~な

 唯一あり得るパターンは、金を持って行った所で奪われる

 早く払って下さいよ~ で、二重取りこれのみ

 ドアノブも岩も※、俺らが両方持ってんだぜ

 このまま払わないってパターンもあるけどよ、

 クソ意地汚い詐欺師おじさんになっちゃうだろうよ」

 ※物置から現実世界に出た時に、設置してある"ドアノブ"を懐にしまっていた

  なので3人は、"秘密の部屋" 経由ではなくタクシーで帰ってきてた


「だからってさ… 1千万くらいで良かったんじゃないの!」


「学生さんが起業したいって言ってんだから、応援してあげなさいよ

 彼は頭が良いじゃない リスクを捨てて異世界を引退したんだぜ」


「まだ、引退はしてないだろ?」


「岩を送ってきた時点で、辞めてんだろ 要は〇にたくねぇんだよ

 彼が少し考えが足りなかったのは、未来から岩を送った事だろ

 岩を送らずに、そのままの状態でコンタクト取ってきてたら、

 俺ら未来に行けてたんだ 1億でも安い買い物だったんだけどな 残念だ」


「あれ~・・・ そうだとすると、ちょっとおかしくない?」


「何が?」


「岩を送って来たカネミツ君は、どうやって帰ってきたのよ?」


「そりゃあ、自分が現実世界に帰った後で、レンちゃんが岩を送ったんだろうよ

 それか… 他のモニターがいて、そいつのを使って帰って来たのかもな…」


「そっか! なるほどね~」


「・・・・・・」


 その後、ジークはティセに連絡を入れた


 翌日・・・

 ティセのアドバイスを聞いたジークは、万が一に備えて3人で向かった 


「着いたな… 嫁ちゃんは、エンジン掛けたまま待機

 んじゃ、行って来る」


「気を付けてよ」


「分かってるって…」


 ジークとロックは、車を降りた


「ピンポ~ン♪ ピンポ~ン♪」


「は~い」


「おはよう カネミツ君」


「おはようございます… あれ!? お2人で来られたのですか?」


「そりゃあ大金を持って来てるからさぁ

 禿杉田さん1人だと危ないじゃん」


「そうですね~ あははは…」


「あれっ? 2人だと都合悪かったかな?」


「そんな事、ある訳ないじゃないですか…」


「だよねぇ~ カネミツ君、今何時?」


「えーと…」


「ロック、やれ!」


「ガバッ! やったぞ!」


 ロックはカネミツ君に、【隷属の腕輪】をはめた


「良し! 指示しろ!」


「スマホを持って来て、車に乗るんだ!」


「はい… 禿杉田様」


 カネミツ君を車の乗せ、近所のカラオケボックスに入った


 台東区 某カラオケ屋 パ-ティールーム


「ティセ、成功したぞ」


「お疲れちゃん 誰がボスなの?」


「ティセ様~ 私ですよ♪」


 ティセの質問をロックが代弁して、カネミツ君から聞き出した


「取引自体に、詐欺的な事は無いみたいだな…」


「あの岩は、誰の物か聞いてみて」


「はい 岩は誰の物だ?」


「自分の物です」


「もう1つ… 今でも異世界に行けるかどうか」


「今でも異世界には行けるのか?」


「もう行けません」


「…完全に大丈夫みたい マンガ的展開なら、誰かのを奪ってとかだけど、

 カネミツ君は、本当に引退したみたいだよ」


「そうか… 俺は昨日家に帰るまでは、1つの疑いも無かったんだけどな…

 2人と話してて"if"もあり得るなって考えたら、疑心暗鬼になっちまったよ」


「ロックさん、腕輪外してあげて」


「はい」


 ロックは、カネミツ君の腕輪を外した


「カネミツ君ごめんね~ 君が悪さしてないか、一応確かめさせてもらったんだ」


「いや~ 僕って怪しかったですかね?」


「こんな世の中だからさぁ ちゃんと対応しないと危ないじゃない?

 お詫びも込みで、ここに5000万あるからさ それで勘弁してちょ!」


「やった~ 儲けた! 逆にありがとうございます」


 その後5人は、カラオケで盛り上がった


 カネミツ君を家に送り、ティセたちは異世界に戻った


「さぁ 戻って参りました 異世界」


「ここを出てから、時間は殆ど経ってないのよね?」


「ラングさんたちを飲みに行かせてから… 秘密の部屋で会議してたから、

 全然でもないけど… 1時間前後かな?」


「そうだっけか… レンちゃんの手紙は感動しちゃったよ 

 ノンフィクション系のTVみたいだったよ」


「しゃーない… 帰って来たら、抱きしめてやるか…」


「たま~にそんな事してやれば、部下は喜ぶんだよ

 たまにじゃねぇな… しょっちゅうしてやれよ、イケメン ぎゃははは!」


 

 そして・・・ ラングたちが帰って来た

 

「ティセ様、只今戻りました」


「ティセ様~ ただいま戻りました~」


「たらふく喰らいました」


「おかえり~ レン氏… 飛び込んでおいで」


「ぎゃーーーー! ティセ様~♡ むぎゅ~」


「へぶーーっ・・・・」


「おいおいっ! ティセが2つの巨大メロンパンに溺れてるぞ!」


「あぁっ… 申し訳ございません…」


「酒臭っ!」


「そんな!・・・」


「ねぇレンちゃん、私もぎゅーってして良い?」


「えぇ、はい…?」


「ぎゅーーっ!」


「?」


 

 同刻 ハルヨシ村 兵舎


「・・・・・・以上です」


「分かった 下がって休んで良いぞ」


「はっ! そうでした・・・ シェリルさんが今日も深淵に潜られました

 本当にお元気になられて、良かったです」


「何と!? シェリル婆は、今日も潜ったのか!? 毎日ではないか!」


「周りからシェリルさんのお話しを聞いて、

 私がお見掛けしたのは初めてですが、そのようですね

 パーティはいつもと同じメンツで5名でした」


「本当に体調は万全なんだな… シェリル婆の孫は知ってるが、他の3人…

 確か… たろー、じろー、よしおと聞いてるが、冒険者なのか?」


「そのようですが?」


「その冒険者は、腕は立ちそうなのか?」


「いいえ 3人とも枝のようにヒョロヒョロでして、

 女性が相手でも勝てなそうな見た目です

 駆け出しの冒険者よりも更に、失礼ですが全然様になってない素人のようです

 それ以前に、剣を扱った事がないのではと思わせるほどでございます」


「スタンが実際に見てそのように感じるのだから、その冒険者は素人なのだろう…

 腕試しや金稼ぎなら、ソロか孫と潜った方が効率は良さそうだが…

 そのような素人冒険者と一緒とは、一体何の為に…」


「余りにも軟弱そうなので、シェリルさんも心配なのではございませんか?

 誰にでも優しい御方ですから」


「まぁな… そうかも知れんな… 分かった 休んでくれ」


「はっ!」


 幹部スタンは出て行った・・・


「(座る事すらままならない体が、深淵に潜れるほど元気になり

 あの歳で新たな主に仕え… 素人の冒険者と、連日深淵に潜る…

 理由がさっぱり分からん・・・

 しかも… 主に仕えたと云うのに、冒険者と深淵に潜る理由とは…

 だとしたら、仕事として請け負っているのか? それならあり得るが…)」


 そして・・・ 時は流れ


 8月30日(異) 午後7時過ぎ ハルヨシ村:宿屋(賃貸) 

 

「ティセ様の御申しつけ通り、1か月の鍛錬はこれで終わりでございます」


「おばあちゃん ありがとうね こいつらどうだった?」


「最初は何をやらせても… 先が思いやられる感じで不安でしたけど、

 1か月も鍛えたら、そこそこ形にはなったんじゃないですかね?」


「さすがだね! おばあちゃんがそう言うなら、多少は出来るようになったんだね

 おばあちゃんに任せて良かったよ」


「差し入れやお声掛けを、ティセ様がして下さったから頑張れました

 とても嬉しゅうございましたよ

 欲を言えば、あと2年くらいは鍛えてやりたいですがね…」


「そう言ってくれてとっても嬉しいよ

 やる機会があるなら、こいつらよりもっと見込みのある人を鍛えた方がいいよ

 そんな人を部下にしたら、おばあちゃんにお願いするかもね」


「そうですか… 残念です しょぼん」


「今日は美味しい食べ物やお酒をたくさん用意したからね

 ハーランドたちは"揚げ鳥"も作ってくれたし、ワイルドボアのステーキもあるよ

 ダン兄弟はジュリアにいるから不参加だけど、2人以外全員集まったから

 みんなで楽しく宴会するからね」


「宴会? とにかく嬉しゅうございます!」


 ティセたちは、大いに盛り上がった


 異世界では9月に入って某日、フィエスタで事件が起こった・・・


「兄さん! 兄さん!・・・」



 次回 第18話『報復』

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