第13話 ティセ、おばあちゃんを部下にする
7月29日(異) 午後13時頃 王都:ジーク拠点
「ジーク氏 ここの賃貸って何部屋だったっけ?」
「ここは4部屋あるぜ」
「できれば、みんな近い方が良いんだよな~」
「おっ! ティセも借りるのか?」
「迷ってる… 宿屋なら1階でご飯が食べられるでしょ
勿論部屋でも食べられるじゃん
でも壁が薄いから、ナイショ話聞かれるのもね」
「そうだな~ 宿屋を全部屋借りるってのはどうだ?」
「確かハルヨシ村の宿屋で1泊3000だよ
こっちはもっと高いでしょうよ…」
「ティセ… 私が最善の策を授けてあげるわよ」
「どんなんよ?」
「部屋を借りて、シェフを雇えば良いのよ」
「それは前に考えた事あるんだよねぇ~」
「ダメなの?」
「ダメじゃないんだけど、もう一押しほしいな」
「え~…」
「ティセ様、只今戻りました」
「ラングさん、お疲れさん ビールでも飲みなよ」
「頂きます プシュ~ グビグビグビ… ふぁ~ 美味い!」
「ホントに美味しそうに飲むね」
「これは最高の酒ですな がっはっはっは!」
「長老に手紙渡した?」
「はい、抜かりございません」
「何か言ってた?」
「新たな住居の提供に感謝すると言っておられましたぞ
しかも今回は30と余人分 手伝う事があれば遠慮せずにと」
「律儀だねぇ こっちもお世話になってるもんね」
「引っ越しの作業は明日から始め、完了予定は
こちらでも(ハルヨシ村の森)魔石の回収を手伝ってくれるそうですぞ」
「ありがたいねぇ」
「全てを移動させるのは大変ですので、
長老殿の家に溜めていた回収済の魔石を約半分ですが、
マジックバッグに入れて持って来ましたぞ」
「ありがとう 向こうの部屋に出して置いといて」
「はい」
「ティセ、エドワードって奴らは、なんで連れて来なかったんだ?」
「あ~… もうすぐ月末だからさ、森で魔石を回収する作業があるの
前は村の人に手伝ってもらってたんだけど、
あいつらタダ飯喰らってるだけだから、やらせる事にしたの
仮面は呪われてて外せないし、喋り方とか語彙ワードが独特だからさ
正体がバレる恐れがあるってワケ だから…」
「なんだそれ…」
「あいつらの使いどころって、ムズイのよね~…」
「目立たなきゃ良いって事よね?」
「そう どっちかと言えば内職的な仕事の方がね…」
「それなら私ロックの部下に・・・」
「テメェの序列は最下位なんだよ 下を作ろうとするんじゃねぇよ!」
「だまらっしゃい! ティセ様的に、私は最下位じゃないですよねぇ~」
「最下位だよ」
「え~嘘でしょ!?」
「だって、1円も結果出してないじゃん」
「ぎゃははは! テメェはタダ飯喰らってるだけのマイナス男じゃ!
早く実績をプラスにして下さいよ~ パイセン!」
「ムグググ! こうなったら結果至上主義のこのロックが、
満足いく結果をお見せしましょう…」
「帰るの?」
「はい… 名残惜しいですが…
「めんどいからヤダ」
「ぎゃははは! 天下のティセ様を怒らすんじゃねぇ!
これがきまぐれ中2女子の姿じゃ!」
「とは言ってもねぇ~ こうやってダラダラしててもなぁ…」
「ティセ様、儂ら深淵に潜るのはどうですかな?」
「深淵か~ 行ってはみたいんだよねぇ~」
「ティセは止めといた方が良いんじゃない?
ゾンビとかオバケがいるよ あ~怖い怖い…」
「ドルフさんさぁ、ゾンビって臭いの?」
「ゾンビは臭いぞ 腐ってるからな…」
「普通の答えね…」
「ティセ様~ 只今戻りました!」
「レン氏、ありがとさん! 私はワイルドボアのシチュー」
「こちらがワイルドボアのステーキ」
「え~と… コカトリスと…」
「レンさん… それ私のじゃないよね?」
「いいえ… これにしてくれって…」
「ぎゃははは! 俺様が変更してやったのだ 美味しく頂戴しろ!
キャン玉大臣!」
「ムカムカー! お前がキャン玉喰らいやがれ ガルル!」
「あんたたち! 女の子の前で何やってんのよ…」
「すんません…」
「ごめんなさい…」
「ティセ様、大変なんです!」
「急に何よ?」
「サミットが開かれる為、明日から1週間フィエスタはお休みだそうです
高札が掲げられてたようですが、私たち全然気が付きませんでした…」
「サミットってなぬ?」
「サミットとは、近隣の国との首脳会談の事だ
各国の王や代行が出席して、何やら密談をするのだ 王宮で開催される」
「明日から休み~… なんてこった…
これじゃあ、王都にいる意味ないじゃんか…
私たちはハルヨシ村に行くよ どうする?」
「休みじゃしゃーない… 俺たちもハルヨシ村に行くか
しかし1週間か… なげぇな クソが!」
「ご飯食べたら準備ね」
「分かりました ハルヨシ村に戻りましょう」
ティセたちは食事を済ませ、戻る支度に追われた…
ティセたちは馬車1台をレンタルし、2台に分乗してハルヨシ村に向かった
そしてハルヨシ村に到着・・・
ハルヨシ村 ハーランド 店舗
「お疲れさん ハーランド」
「ティセ~! こっちに全然寄らんと… 寂しいやないか」
「ごめんね~ 王都で忙しくて…」
「ティセやないか! こっちに泊まるんか?」
「泊まるよ 王都のフィエスタが1週間休みなんだってさ
仕事できないから、こっちに来たの」
「そうなんか、みんなで晩飯行こうや」
「いいね! ライラックの酒場が良いんだけど」
「ええで 兄貴、もう閉めようや」
「そやな、閉めるか おっさん!閉めようや」
「ティセ様!ご無沙汰しております」
「モスさんも元気そうね」
「はい、… あの~… 閉めますので…」
「やってやって」
「ティセって人気者で人望があるのね」
「良くも悪くもカリスマだろ おじさん嫉妬しちゃうよ」
ハルヨシ村 ライラックの酒場
「クラハさん、ここの兵隊アナグマは、ホウセンカの酒場より美味しいよ
できるならあのお肉でね、すき焼きをやりたいんだよね」
「あの肉ですき焼き? うまそ~
んじゃあ、ここでも頼んでみるか 同じのね」
「みんな~ 注文済ませてね~!」
「(小声で)おいハーランド君、ちょいと良いかい?」
「なんですか?」
「(小声で)俺ってばさ、ティセ軍のナンバー2なのさ」
「へぇ~ そない上なんですか?」
「(小声で)あそこにいるキモいおっさん、ティセ軍に最近入ったヤローでさ…
ゲテモノって言うの… 見た目が気持ち悪かったりする料理が好きなのさ」
「(小声で)はい、それで?」
「(小声で)ここの酒場に、そんなのあったりする?」
「(小声で)そんなんやったら、ワイルドボアの〇玉煮込みはどないです?
土地のもんは内臓食わへんけど、何故か最近流行ってるみたいですよ
俺は絶対に無理やけど…」
「それそれ⤴ そーゆーの待ってました!
ありがとね これ小遣いね 取っといて」
ハーランドは、小遣い5万ゲットした
「サンダース、ダン兄弟がいないじゃない!」
「しもた… 忘れてた…」
「ダメよ~ダメダメ! 呼んできて」
「急いで呼んでくるわ」
サンダースは走って、ダン兄弟を呼びに行った
「サーシャとモネも注文済んだ? おっけー!」
「ハーランド、無名4人衆には1人1万でもお小遣いあげてよ」
「給金はちゃんとやってるで」
「それとは別だよ 私たちは好きな物食べてるんだから ちゃんとあげてよ」
「分かった 明日渡すよ」
暫くして・・・ ダンとフランクの兄弟が駆け付けた
「ダン、フランク、サンダースが伝えるの忘れちゃったんだって、ごめんね」
「大丈夫だよ、呼んでくれたじゃないか なぁフランク」
「ティセさん ありがとう!」
「良いの さぁ注文して!」
ティセは仲間たちと、楽しい時間を過ごした
更に時間が過ぎ・・・ 一団が店内に入ってきた
「フォルさん! 今帰って来たの?」
「おぅ、お嬢ちゃん また会えたな 元気だったか?」
「うん元気だよ」
「今深淵から上がって来たんだ」
「へぇ~ そうなんだ お宝ゲットできた?」
「そんなでもねぇけど、まぁまぁじゃねぇかな?」
「そうなんだ 私は部下たちとご飯食べてた」
「はぁ!? もうあんなに部下がいるのかよ… 参ったな…」
「ここにはいないけど、あと…7人かな? いるよ」
「すごいな… 俺たちのパーティーをとおに越えてるじゃねぇか…」
「良い事思いついた… ちょっと紹介するよ テーブルで待ってて」
ティセはメンバーを呼びに行った
「これから呼ばれた人、こっちに来て
ジークさん、クラハさん、ロックさん、ラングさん、レン氏、ドルフさん
以上6人、こっちに来て待ってて
ハーランド、王都はフィエスタがお休みで、私はこっちに1週間いるからね
毎日かどうかは分からないけど、出来るだけお店に顔を出すから
お会計はこっちで払うから、今日はもう休んで
勇戦団って言う冒険者と仕事の話をするからさ」
「毎日大変やな… ティセこそ、たまにはゆっくりと休むんやで」
「分かった ありがとね!」
「それじゃあ俺らは先に帰るで ほなな!」
「またね~」
ティセは勇戦団のテーブルに向かった
「フォルさん、話が2つあるんだけど いいかな?」
「おぅなんだ?」
「まず紹介するね、ジークさんとクラハさん ロックさん
こちらは勇戦団のフォルさん 冒険者をやってるの」
「ジークだヨロピク」 「クラハです」「ロックで~す」
「俺はフォルだ 勇戦団のリーダをやっている よろしく」
「最初の話はね、この3人は金と銀の買い付けをしててね、
今後深淵や戦利品でゲットした宝飾品を買い取らせてほしいの?
買い値売り値は、双方の話し合い
ゲイルさんと同じように、2人は商人で鑑定を持ってるから安心して
お互いインチキなし 長ーい付き合いにしたいからさぁ どうする?」
「ゲイル!デニス! こっちに来てくれ」
「どうした?」
「何だ?」
「今後手に入れた金銀の宝飾品を、
お嬢ちゃんの仲間が買い取るって話しだ」
ゲイル・デニス・フォルは3人で会議を始めた…
「済まんな… 結論が出ん…」
「俺から提案があるんだけど良いかい?」
「何かな?」
「いつも売却してる店かなにかあるんだろ?」
「フォンブラン商店だが?」
「その店に査定に出して売るって段取りだろ?」
「そうだな…」
「その商店の査定に、1割の半分5分(5%)乗せて買い取るぜ どうだい?」
「フォル、その案で良いんじゃないか?」
「分かった、それでお願いする」
「ティセ、俺たちは "今後の話し" をしてくるぜ 宿は何とかするから気にすんな」
「よろしく~」
「もう1つは何だい?」
「紹介するよ ドワーフのラングさん ダークエルフのレン氏
人間のランドルフさん 私の護衛的な感じ」
「俺はフォルだ よろしく」
「この前王都で、バカ連中に絡まれてさぁ 何とか勝ったの
だけどね… 私の護衛としては、ちょいと物足りないって感じたのよね
そこでお願いなんだけど、1週間深淵で鍛えてやってくれない?」
「おいおい… それはやった事ないぞ…」
「分かった… 3人飯込みで1週間10万 3人の宿は、こっちで確保する
深淵やどこかで得た物は一切要らない それでならどう?」
「どこまで鍛えられるか分からねぇぞ… それでも良いなら引き受けよう」
「はい10万ね」
「確かに…」
「3人はこれから1週間お世話になって、
多少でも強くなって戻って来てよね 待ってるから」
「分かりました、ティセ様のご期待に沿えるよう努力致します」
「ティセ様… 待ってて下さいね
「ティセ様 お任せ下され」
「3人に言っておくよ 中途半端な強さは意味ないからね 頑張って!
休む時は角地の賃貸の宿屋ね 以上!
フォルさん、時間の連絡だけは間違えないでキッチリとやってよね」
「その点はしっかりしてるぞ」
「お願いね」
ティセはレンから持ち金を全て受け取り、改めて3人には幾らか持たせた
そして… 会計を済ませ店を出た
ティセは街を歩きながら、拠点について考えていた…
「結局買った所と借りた所は、自分用の(拠点)じゃないかならなぁ…
ハルヨシ村と王都で、2つ押さえないといけない
それにエドワードたちをどうするか…
すぐにでも移動させたいけど、魔石の回収が終わってからじゃないと…
あれ… 異世界ではもうすぐ月末だから、ジュリアの家賃払わないと…?
ジークさんたち追い出されちゃうんじゃないの… 金目の物が置いてあるし…
ハルヨシ村の方の店舗も、ちゃんと払ってんのかなぁ…
結局自分で把握してないと、心配で不安になっちゃうな
明日から、全部確認しなきゃな」
7月30日(異) 午前9時 ハルヨシ村:ハーランド店舗
「聞いてるで、今日にも荷物は届くらしいな
俺らは店があるから手伝われへんけどな 30人くらい居るんやで、大丈夫やろ
家賃? 売上で全部賄えるで なんでやねん… それはちゃうやん大丈夫や
バラける? 借りた物件は、比較的まとまってる場所やで うん そうや
そうやな そうやで ダンも賛成しとるがな 安心せえよ…
高級住宅エリア? 遠いで やめた方がええな バザール周辺がベストやで」
店舗を後にしたティセは、深淵近辺の調査へ向かった
ハルヨシ村 深淵周辺のエリア
「ほぅほぅ バザールや住宅街とは、さすがに雰囲気は違うね」
ティセは冒険者や商店主から、深淵についての聞き取り調査を始めた
「価格差? 大した違いは無いぞ」
「ありがとう!」
「護姻環? 物によるんじゃないか?」
「ありがとう!」
「俺らは3時間くらいだな」
「ありがとう!」
「・・・の巻物だな 1回限り使える
かんむりってのもあるらしい 一定の確率で壊れるって聞いたぞ」
「ありがとう!」
「LV50でも、厳しいらしいぞ」
「ありがとう!」
「そんなのねぇな ・・・それならあるぜ」
「ありがとね!」
聞き取り調査を終えたティセは、新たな商売を幾つか閃いた
「完全にテレビゲームじゃない…
RPGは好きだけど… ダンジョン系は得意じゃないのよね…
しっかりと裏を取って、確証が無いと色々できないから」
情報を確認する為、ティセは近くにあった商店に入った
「すんませ~ん 〇〇〇ポーションありますか?」
「はい、ございますよ お幾つ?」
「1個下さい」
「700ヨーになります」
「はい」
「ありがとうございました~!」
翌日 ハルヨシ村 AM9時過ぎ ハーランドの店舗
「サンダース、ちょっと!」
「なんや?」
「長老宛の手紙なんだけど、これ今すぐ出してくれない」
「おぅええで 今日ティセは何するん?」
「今は深淵の調査をしてんのよ お金の匂いがプンプンしてるから」
「さすがやな 目の付け所がちゃうな… ほな、出してくるで」
「お願いね!」
店舗を出たティセは、深淵周辺へと向かった
前日買い物した店舗とは違う商店に入った
「こんにちは~」
「いらっしゃ! 何かお探しですか?」
「深淵に興味があって、近い内に潜りたいと思ってるの」
「左様でございますか」
「それでマスターに色々と聞きたい事があって 良いかな?」
「この時間はヒマですから構いませんよ 何をお聞きに?」
「薬剤師… じゃなくて薬師っているの?」
「薬師? いますけど… それが?」
「お店に薬とか並んでるでしょ 薬師が作ってるのかなって?」
「違いますよ 薬師は、お金が無い層が利用する率が高いですね
商店から薬を購入するのは、一般層以上のお金に余裕のある方々ですよ」
「それじゃあ、この薬はどうしてるの?」
「冒険者が深淵で得た物を、買い取って販売してます」
「はぁ~ なるほどね 〇〇〇ポーションとかって安いでしょ?
そんなにレアなアイテムじゃないって事?」
「〇〇〇ポーション? そうですよ 確か… 地下10階層から下層なら、
ドロップする率は高いんじゃないでしょうか」
「このお店だと、幾らで引き取って販売額は?」
「買取りは300 販売は700ですね」
「他のお店も?」
「同じですよ 定番の商品は、大体同じ価格です
一般的な武器や防具の装備品や魔法書・魔導書・低級な護姻環等も、
ほぼほぼ違いはないですね
違いがあるとすれば、宝飾品… スキル書… 魔道具… ですかね?」
「それは、商店での取り決めって事?」
「そんな事はしてないですけどね 自然とそうなった感じですね」
「全部の商店で買取りしてるの?」
「それは店舗によってです 冒険者と商店で兼業している者もいます
買取りはせず、自分で手に入れた物のみ販売する商店もございますので」
「マスターは潜るの?」
「私? 子供の頃は、小遣い稼ぎで潜ってましたよ
店を構えてからは、極々たま~に潜りますけど…」
「何時間潜って、幾ら稼げるの?」
「そうですねぇ… 2~3時間ですかね?
1時間1万だとして… だから2~3万ですね
それくらいなら良いペースじゃないですかね?
下を目指すか目指さないで変わってきますけど」
「下に行けば行くほど、アイテムも良くなって稼ぎも増えるって事?」
「当然そうです もちろん魔物は強くなりますけどね」
「2つ疑問があるんだけど」
「なんでしょう?」
「〇〇〇ポーションって、なんでそんなに安いの?」
「ランクが低いからじゃないですかね? 良く分かりませんけど…
みんな使わずに売っちゃいますからね… どの商店でも結構余ってますよ…
もっと効き目のある高価な回復系ポーションは、他にもありますから」
「ハルヨシ村に商店って多いでしょ しかもバザールもあるじゃん
こんな感じの商店って儲かるのかしら? 冒険者の方が稼げるでしょ?」
「確かにそうなんですけどね、やはり命の危険がありますから…
私も家族がいなければ、リスクを取るかも知れませんけど…」
「このお店で、月の売上と純利益ってどのくらい?」
「えー… 教えるんですか?」
「良いじゃん 教えてよ」
「・・・ 月平均の売上が約60万 買取りで出すのが約40万
残るのは20万くらいですかね… 毎日食べる事ができればいいので…」
「何人家族?」
「4人ですけど…」
「マスターと奥さんと子供と?」
「おばあちゃん… 私の母ですね」
「店番をするのはマスターだけ?」
「みんなやりますよ
ただ… 母は足腰が悪くなったので、今はやってないです
元々は兵舎で食事を作っていたんです…
足が悪くなっちゃって、辞めたんです
座っての作業なら何とかやれたのですが、今度は腰が悪くなってしまって
腰が悪いと、座ってるのも辛いそうで…
寝たきりではないですけど、あまり動けません…」
「そうなんだ… 気の毒だね」
「人と接触する機会がないと、家族としか会話しませんからね…
寂しいのはあるでしょうね…」
「話し長くなっちゃってごめんね お詫びに後で買い物するから」
「良いんですよ 私も会話したい派なので」
「あのね、おばあちゃんに会ってみたいんだけど」
「母に? 上にいますので、聞いてみますね」
店主は2階に上がって、母親にその事を伝えてる隙に、
ティセは前日買った〇〇〇ポーションを、マジックバッグから取り出した
今朝、中身を空のペットボトルへ移しておいた物だ
「良いみたいです 上がってください」
ティセは商店の2階に上がり、老婆と面会した
「初めまして、私はティセです」
「こんにちは カワイイお嬢さんね こんなばあさまに何か御用?」
「マスターとお喋りしてたら、おばあちゃんの話が出たの
ちょっとお話ししたくてお願いしてみたの」
「あらあら、それはそれは…
ティセさんは、ハルヨシ村の子?」
「元々はタカミ村なの ハルヨシ村で仕事して、最近は王都に行ってたの
サミットでフィエスタが休みになるって事で、昨日こっちに戻って来たのね
深淵が儲かりそうだから調査に来てて、それでこのお店に寄ったの」
「お仕事で…!? はぁ~ 若いのに大したもんだ事」
「足と腰が悪いって聞いたけど…」
「そうなの… お手洗いに行くのも難儀でね… だから歳はとりたくないのよ…
元々はね、ノア様御配下の兵士の食事を作ってたの…
足が悪くなってしまって、立っていられなくてね… 辞めさせてもらったの
お店番ならって座ってやってたんだけど、それも座ってられなくてね…」
「調子が良かったら、今でも仕事はしたいの?」
「それはそうよ 食事を作ったり片付けしたり… できたらね…」
「ふ~ん… おばあちゃんは今何歳?」
「私は今… 何歳だっけ?(73歳)」
「おばあちゃん、コレ全部飲んでみそ」
「何なのこれは? ゴキュゴキュゴキュ… カァー… まずい!」
「ゲラゲラ!」
「私にこんなマズイ飲み物を…」
「おばあちゃん、立ってみて」
「あれれ… 足も腰も? 痛くなぁ~い」
「ねぇおばあちゃん 私の部下になる?」
「はいは~い! なりま~す!」
「じゃあ、行こうか」
ティセとおばあさんは、1階に降りた
「母さん! 何やってんの…」
「私はティセ様の部下になったから」
「部下って… 何言ってんのさ!」
「安心して、お給金もちゃんと渡すから 話が煮詰まったら、報告に来るよ
〇〇〇ポーションを全部買うよ」
「全部!? ちょっと… 30個くらいありますけど…」
「良いよ」
「あの~… すみませんけど、3個ほど残してもらえません?」
「あ~、売り切れにしちゃうのか… 良いよ 3個残して全部ね
麻袋に全部入れてくれたら助かるんだけど」
「分かりました 少々お待ちください」
買い物を終えたティセはポーションをしまい、おばあさんとお店を出た
「ちょっと… ねぇ… 母さん!」
ハルヨシ村 バザール
「おばあちゃん、どデカい物件どこかに無いかな?」
「幾つかありますよ バザールの中なら宿屋があったはず…」
「あぁ… 多分その宿屋は、私が買ったのじゃないかな…」
「買った!? まぁ…」
ハルヨシ村 バザール ダンの店舗
「ここじゃない?」
「ここです… ティセ様が買ったの…? 凄い…」
「聞いた話だけど、高級住宅エリアなら大きい家はあるみたいよね
それだと、バザールと深淵から遠くなっちゃうって
両方と飲食街に近い所がベストなの」
「私のパワーは、こんなものじゃないですよ おほほほ
不動産屋に行きましょう 売りに出してる物件もありますからね」
ティセとおばあさんは、不動産屋に向かった
「こんにちは、空き物件と売り物件・買取り物件を拝見しに来ました」
「それはそれは どうぞこちらへ」
2人は席に着いた
「どのような物件をお探しでござますか?」
「深淵とバザールと飲食街から近い場所で、
かなり広い物件ってありますか? 賃貸じゃない物件ね」
「そうでございますねぇ… 位置的に広い物件は中々難しいですね…
バザール内ですと… こちらの店舗はどうでしょう…?」
ティセたちは地図を見せてもらった
「ここか… ちょっとなぁ… 私の持ち物件はここで、ここは賃貸で借りてるの
できればこの並びか両隣とかないですの?」
「並びですか… この向かい側にあるのですが… こちらは買取り物件でして…
かなり高額になってしまいますが…」
「買取り物件って何? 売り物件とどう違うの?」
「売り物件は建物のみで、買取り物件は商品込みの購入ですよ」
「あ~ 商売ごとお店を買うって事ね」
「そうですね」
「この赤色が買取り物件で青色が売り物件 黄色が賃貸物件って事なのね?」
「左様でございます」
「おっ! 向かいの物件がこれね 3軒連なって買取り物件じゃん
この3軒は、それぞれ何屋さん?」
「左から"衣服店" "書店" "玩具店" ですね」
「(全部要らねぇ・・・)
あの~ もしも買ったとするでしょ ぶっ壊して建て替えとか可能なの?」
「問題ございませんよ」
「ちなみにお幾ら?」
「衣服店が200万 書店が300万 玩具店が200万ですね」
「(やっっすー… それでかなり高額なの? バザール買い占めたろか!)
私の店のお隣さんは今は商売してるけど… 賃貸になってるじゃん?」
「今月いっぱいでたたまれるので、来月から契約できますよ」
「1つ聞いて良い?」
「なんでしょうか?」
「土地って誰の物なの?」
「御領主様であるノア様の物ですね」
「土地の所有権は買えないのね?」
「左様でございます 上物(建物)だけでございます」
「それじゃあ、賃貸物件の貸主って、一般人のオーナーか領主様って事?」
「左様でございます」
「なるほどなるほど この隣の物件のオーナーは?」
「ノア様でございます」
「このお隣さんの物件、賃貸だけど買えないかな?」
「そうですね… お伺いをたてないと何とも…」
「それじゃあ聞いといてよ」
「大丈夫ですよ お忙しいので、すぐに返信があるかはわかりかねますが…」
「それでもいいよ 値段聞いといて 名前は… ハーランドで
私は代理で来てるだけだから」
「畏まりました ハーランド様ですね ご連絡先は?」
「ここだね… 揚げ鳥屋さんだよ」
「承知致しました…」
「その物件の募集は、一応止めといてよ」
「心得ております」
「それじゃあ、こっちの3軒見せてくれない?」
「はい、それでは向かいましょう」
ティセたちは不動産屋の案内で、3軒の買取り物件を見に来た
「まずは衣服店でございます どうぞ」
「(やっぱり…要らねぇ…)この商品で200万ってどうなの?」
「お気に召しませんか… それでは、値下げ交渉してみましょうか?」
「できればお願いしたいな」
「畏まりました 続いて… 書店に参りましょう」
「(本棚は一応埋まってるな… でも要らねぇ…)ふむふむ…」
「どうでございますか?」
「まぁそうね…(値下げ交渉の切り札がねぇ…)良いんじゃない」
「続きまして、玩具店ですね」
「(マジで要らねぇ… これどう処分すんの…)
これもねぇ… 200万の価値って言われても…」
「それでは、こちらも値下げ交渉致しましょうか?」
「お願いするね…」
「畏まりました」
「いつごろ分かるの?」
「本日中には分かりますよ ご連絡いたします」
「3軒とも欲しいの 2軒の交渉お願いね」
「頑張ります! お任せください!」
ティセたちは、ハーランドの店に行った
「ハーランド、今物件を見てきたのさ
あーでこーで、あーでこーで・・・」
「3軒の内のその2軒が、200万から少しでも下がればええんやな?」
「厳密に言うと… 下がらなくても買おうとは思ってる
規模的に逃すのはもったいないんだよ 書店は貶せなくてね… 残念だけど」
「それでもう1軒が、ダンの店の隣やな?」
「そうなの こっちは1000万でも欲しいかな」
「ティセの事やから、上手くいくやろ」
「だから、言い値で買っちゃって良いから 変に交渉しないでいいからね」
「分かった 俺に任せとき」
「それで紹介するね こちらのおばあちゃん、私の部下なの
さっき仲間にしたの」
「こんにちは、よろしくね」
「おばあちゃんを!? 部下なの?
ハーランドです よろしくお願いします…」
「元々は、兵士さんの食事を作ってたんだって」
「はぁ~ それやったら、ノア様の元部下って事やな…」
「そうなのよ ノア様が子供の時から知ってるからね」
「そないな人を部下にしたんか… 驚いたわ…」
「ティセ軍も仲間が増えたからねぇ~ 若いだけていう偏りはダメなのよ
色んな年代がいたら、助かる部分もあるでしょ?」
「そないな事考えて生きてへんから、分からへんよ…」
「そんじゃら、不動産屋さんの件頼むよ~」
「おぉ~ 任せとき」
ティセたちは店舗を出た
「お腹すいたね 何か食べようよ」
「ティセ様にお任せしますよ」
「それじゃあ… ライラックの酒場に行こうか」
ハルヨシ村 ライラックの酒場
「すんません ワイルドボアのステーキ なしで
おばあちゃんは?」
「私は… マッシュじゃがたらいもで… なしで」
「なによそれ ちゃんとしたの頼んでよ」
「お肉は食べたいけど、歯が…」
「歯は普通にあるじゃん」
「噛み切れないのよ…」
「大丈夫だから食べてみなよ ワイルドボアのステーキ2つ 両方なしでね」
「はいよ」
料理が運ばれてきた
「さぁ、食べてみて」
「・・・頂きます」
「もぐもぐ… 美味しいな~」
「もぐもぐ・・・ !? もしゃもしゃ… もしゃもしゃ…」
「どう、美味しかったでしょ?」
「こんなばあさまを臣下に加えて下さって・・・
こんなに幸せな事はございません… シクシク… お肉も嚙み切れます…」
「良いって事よ これから色々と手伝って貰うからね
こき使うかも知れないよ 覚悟しておいてね」
「うううぅ… 頑張ります」
「お給金は月20万固定 昇給アリ お食事つき 宿もあるっちゃある
用がない時は、お家に帰ってても良いよ 条件はそんな感じ どう?」
「はぁ~… そんなに!?」
「それってどっちの反応なのよ?・・・」
「あぁ… 失礼 多いって事ですよ」
「なら良かった」
「こんなに良くしてもらったら、
「大丈夫でしょ そーゆー後ろ向きな事は考えない方が良きだよ」
(異世界にもバチってあるのか… 知らんかった…)
「そうですね…」
食事を終えたティセたちは、会話を続けていた
「そんで… ゲラゲラ!」
「あらあら… おほほほ!」
その時、ジーク夫妻が店内に入ってきた
「あらら、ティセじゃん」
「ティセはもう食べたの?」
「もう済んだよ あんまりプラプラされても、連絡つかないと困っちゃうよ…
ロックさんはどうしたのよ?」
「すまねぇすまねぇ… あいつはバザ~ルで買い付け(金銀の仕入れ)やってるよ
それでこちらさんは?」
「紹介するね おばあちゃん 今朝、私の部下にしたの」
「ティセのおばあちゃんなの?」
「違う違う!そうじゃな~い! 深淵のそばにある商店のおばあちゃん!」
「なんだ… そうなのか… じゃな~い! 何故におばあちゃんを…」
「まぁ… 私の100年計画は… 深いからねぇ~
いずれ分かる日が来るかも来ないかも・・・」
「何だそれ… まぁ良いや こんにちは、ジークです仲良くして下さい!」
「クラハです 宜しくお願いします」
「まぁまぁ ご丁寧に こちらこそ、よろしくどうぞ」
「2人は夫婦なの それで私の部下」
「そうで~す ティセ様の部下なんで~す
ナンバー2と云う重責を担っております」
「私はナンバー3… なの? 主に買い付け担当です」
「私の役割はまだ決まって無いの… 何をするのかしら?」
「まぁ… 気楽に構えていれば良いんじゃないですかね」
「今まで何やってたのよ?」
「勇戦団の伝手で、冒険者を紹介して貰ってたんよ
結構な人数と知り合ったぞ 買取りも幾つかやったしな」
「それは予想通りで全然驚かないけど…
フィエスタが終わったらどうすんのよ? それにジュリアの家賃はどうすんの?」
「あ~・・・ どうしよ・・・ ワイルドボアのステーキ2丁 なしで」
「はいよ」
「ティセ~ どうすればいいかなぁ~・・・」
ティセは、ペットボトルを取り出した(ハーランドの店で1本入れ替えた)
「じゃあ罰ゲームね これをイッキして全部飲んで 代表して… クラハさん!」
「なっ! なんで私なのよ ムキー!」
「俺のせいでごめんちゃい! 早よ飲んで!」
「こいつ… ゴキュゴキュゴキュ… ぐはぁ… ゲロマズぅ…うぅぅぅ」
「ゲラゲラ!」
「ぎゃははは!」
「コレ何なのよ…」
「キャン玉スープじゃね ぎゃははは!」
「今度、栄養ドリンクを売り出そうかと思って」
「悪いけど、これは売れないよ…」
「味の問題?」
「そう… 効果は知らないけど…」
「まぁ… そこは我慢してもらわないと
(何かと割っても、効果って残るのかな?)」
「お待たせしました~」
「そんでどうするよ? もしゃもしゃ…」
「一旦置いといて、私の話から聞いてよ」
「いいぞよ 言ってごらん」
「おばあちゃんを仲間にした後、一緒に不動産屋に行ったの」
ティセは経緯を説明した
「すげぇな… 地上げ屋かよ! もしゃもしゃ…」
「全部買えたら・・・」
「ぎゃー 夢見心地のビフォーアフター! もしゃもしゃ…」
「そんなこんなで、ベース(拠点)はハルヨシ村の方が良いって考えてるの」
「だけどフィエスタの品揃えはヤバしだぞ… 放っておくのは勿体ないだろ」
「私が考えた解決方法は、ジュリアに後任を置く事
今のところ、それしかないでしょ?」
「あーーー… 大都会のセレブ生活もとうとう終わりか… くぅ~泣ける…」
「仕方ないよ… ハルヨシ村で、質素にセレブリティに暮らしましょ…」
「後任は誰なんよ?」
「それな・・・ 使える人材がいな~い!」
「マジか・・・」
「あの~ 私は?」
「おばあちゃんは、違う担当があるからね 後々…」
「そうですか…」
「しゃーない… 条件付きだけど、決めた!」
「条件付き? 誰にするんだ?」
「それはね・・・」
次回 第14話『1枚のDVD/サミット』
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