第 8話 繁盛する店の悩み
翌朝・・・ 本日、店舗開店日
「いよいよもうすぐオープンだね」
「そやな… 感慨深いで」
「最初に作ったのは、ティセが試してくれや」
「うん、楽しみにしてるよ モスさんの方も大丈夫?」
「はい、準備万端です!」
「モネは?」
「今から凄く楽しみです♪」
「サーシャは?」
「沢山売りますよ 任せて下さい!」
「みんな頼もしいねぇ~ いいよいいよ」
そして開店時間・・・ 午前10時 オープン
「らっしゃい! らっしゃい! 1回買ってみてや」
「喰ったら分かるで! 本物の美味さや」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ティセ… 全然アカンな… 誰も立ち寄らへん」
「もうオープンしてから1時間半やで… 喰えば分かるっちゅ~のに…」
「まだお昼前だしね… すぐにドカンとはいかないもんだよ」
「そうかぁ~ そんなもんか?…」
そして・・・ 午後12時半過ぎ
「人もかなり出てきた やけど、全然アカンがな… どないする?」
「しょーがないなぁ… 最後の手段をとるか…」
「最初にして最後かいな・・・ で、どないするん?」
「(小声で)今から私は、"裏の支配者ではなく、一般の買い物客 分かった?」
「裏の… まぁ、分かったで…」
「すんません! あれ~… なんか美味しそうな食べ物売ってる~!1つ下さいな」
「はい~! 少々お待ちを・・・ お待ちどうさま~」
「ちょっと~ マスタ~ 小さく切ってくれなんしょ! そう、そう、ありがとさん
もぐもぐ… ぎゃ~ 美味過ぎて、失神しそう・・・
ちょいと若奥様… これ、小さく切ってもらったの 凄く美味しかったから
食べてみてくんなまし」
「えっ!? 食べるの? もぐもぐ・・・ ぎゃ~ 美味しい!!!」
「そうでしょそうでしょ! もう1切れどうぞ・・・」
「美味しすぎです~♪」
「そうですよ ヤバしですよねぇ~ これ、裏技があって… ナイショですよ
レモネンをこうやって絞る… 食べてみそ!」
「お口の中が・・・ 爽快感♡ ハァハァ・・・
みなさん… ここの揚げ鳥やさん 激旨ですよ… 1人前はどのくらい?」
「このくらいの大きいのが3つ入りで、なんと1000ヨー 安すぎて過呼吸…」
「それじゃあ、9つ分で3人前下さいな ハァハァ…」
「マスタ~ 3人前ですって」
「はいは~い、少々お待ちを!!」
一瞬にして、辺りは人だかりになった・・・
「私も買うわ!」「私が先よ!」「並んでますけど!」「こっちが本線でしょ!」
「みなさ~ん 喧嘩しないでね マスタ~が言うには、いっぱいあるってさ」
「みなさん買えるから安心してや 大丈夫やで!」
続いてティセは、併設するレモネンショップのサクラとして登場した
やがて… 段々とスタッフになってしまうのを今のティセは知らない…
「あれ~ こんな飲み物初めて~ まさに青春の味だわ♡
奥様! これからの時代、美を追求する日々… そんな時が今訪れました…
"時は来た それだけだ"なんつって、時代のカリスマが言ったとか…
確かにドアが開いた音がした・・・ マスタ~ 1杯ちょうだい
ささっ! 奥様、私今飲んでみたのですけど…
飲んだ瞬間… 12歳若返って、赤ちゃんになってしまいました・・・
これを飲んだら、12歳若返るレモネンドリンク どうぞ奢りです」
「あら、頂けるの それじゃ、グビグビ… ひゃ~ 冷たくて美味しい!!!」
「あれ・・・ 奥様!? あわわわ… 若返って… いるようですよ」
「えっ!? 本当に? レモネンは1個お幾らなの?」
「ほら、マスタ~!」
「え~、、、レモネンは1個150ヨ~です ドリンクは1杯200ヨーです」
「レモネンで、そんなにお金を取るの・・・?」
「あれれ… 奥様、ご存じなかったですか? 今ですねノア様のご領内ですと、
森から勝手にレモネンを取ってくると、処罰されるんでござんすよ
個人間の取引も御法度 重~い罰が下されてしまうんですぅ~」
そう言うとティセは、スマホの画像を見せた
「このように、ハルヨシ村各所に、高札が掲げられているんですよ
あちらに高札がありますから、実際見て貰ったら… いいかと…」
ティセの言葉が信用できなかった奥様は、高札を確認しに行った・・・
その間に、レモネンショップの前にも多くの人が押し寄せている
「ピュ~ ゼイゼイ… レモネン7個頂くわ」
「まいどあり~! 奥様に朗報がございます…」
「何かしら?」
「先ほど飲んで頂いたのが、絞ったレモネンと水を合わせた【レモネン水】です
こちらの【レモネンシロップ】まさに逸品でして・・・
マスタ~ 1杯奥様に振舞ってあげて」
「はい・・・ 先ずはグラスにシロップを1匙トロ~リ・・・
水と氷を加えます シロップが溶けるようによく混ぜます どうぞ」
「頂くわ・・・ ふんぎゃ~!!! 甘くて冷たくて爽やかでとろけそう♡」
「こちら… 砂糖とはちみつを使用しております
絶対に幼児に飲ませてはいけません そのような法律がございますので…」
「フゥフゥ… そのシロップとやらお幾らかしら…」
「3,000・・・」
「はいはい! 買います買います! 私が最初に買います!!!」
「毎度あり~ そんな超VIPな奥様に、またとないチャンスが訪れました」
「まだ何かあるの・・・?」
「奥様のお家に限らず、虫って嫌ですよねぇ~?」
「そりゃあ… そうだけど…」
「お家に虫って出ますか?」
「出るわね・・・」
「しょっちゅう?」
「そうね…」
「最初に飲んでもらったレモネン水ですが、なんと!!!
虫よけの効果があるんですぅ! びっくりなのです!
G○〇○や蚊を寄せ付けなくなるって、信じられません…
しか~し、レモネンの効果に着目した我々スタッフは、驚きの事実に直面しました
ここから南へ行くとノア様のご領地タカミ村…
そのタカミ村では、どのような状況になっているのか… 奥様はご存じですか?」
「いいえ、知らないわ?」
「こちらをご覧ください」
ティセは、スマホの画像と動画を見せた
「プシュ~ プシュ~ これで虫が居なくなりました」
「爽やかな香りで、虫が居なくなるなんて最高だよ!」
「こんにちは、私は村の長老です… レモネンは我々の味方だ~ プシュ~」
「このように、タカミ村の中にレモネンの木を植える事によって、
村から虫を追い出してます
そして極めつけが、この器具 スプレーと言います 良いですか~ スプレーね
これにレモネン水を入れます こちらが入れてあるもの 果肉は入れないでね
お部屋の中で、プシュ~ プシュ~っと
爽やかなレモネンの香りと除虫効果で、気分もリフレッシュ
そんなスプレーを・・・ なんと3000で・・・」
「買います!」「買います!」「私が買います!」「私が先なのよ!」
「只今在庫が6個しかございません 申し訳ござーせんが近い内に届きますので、
本日は先着6名様限定だよ! さぁ早い者勝ち 並んだ順番ね
今回買えなかった人は、予約券をお渡しします
優先的に買えますので、ご安心くださいね」
「ギャー!」「ぎゃー!」「やいの!」「やいの!」
こうして午後8時過ぎ、初日の戦争は終わった・・・
「いや~ くたびれた・・・ ハンパないわ・・・」
「でも兄貴、清々しいで」
「そんで、売り上げはどうなのよ?」
「100セット完売や 丁度10万やな」
「モスさんはどうだった?」
「はい、レモネンが98個14,700で、
レモネン水が72杯で14,400
シロップが28個で7万 スプレーが6個で18,000ですので、
合計… 11万7100でした!」
「アカン、兄貴負けたで・・・」
「スプレーは除外やろ! 実質勝ちやで 明日からハツも始めるしな」
「それなら、レモネンも負けてませんよ!
明日からドライレモネンとレモネードを始めますから」
「みんな~ 頑張ったね お疲れ様 ご飯食べに行こうか」
同刻・・・ ハルヨシ村 兵舎
「ノア様、ウィルがアンケートを纏めて参りました こちらです」
ノアはアンケートをじっくりと見る
「180人中、6名だな… 少ないと言えば少ないが、実際にあるのだな…
ロットンは乳、ハンクは果物で特にバナ~ネ、ジョイはリンゴ、フォウはセロリ
ロハスは卵、ライナスに至っては小麦とは…」
「何か手立てはないのでしょうか?」
「今の所は無いそうだ… しかし食えない物があるのは、可哀そうだな…
この6名に関しては、食材の変更をするように炊事場担当に伝えろ
小麦… パンの代わりか じゃがたらいもはどうかとライナスに確認をとれ
他の者も、食しても大丈夫な物を聞いて変更させてくれ
それと早々にタカミ村でもアンケートをとって、
本人に聞いた上で、別の食材と変更させるのだ」
「はっ! もう2つよろしいですか?」
「何だ?」
「セルトーアからの報告です 本日からハーランドの店舗が開店したそうです」
「今日開店したのか… 商売は上手くいったのか?」
「凄まじい行列だったそうです もう一方のレモネンを扱った屋台も、
人だかりで買えない者もいたとか…」
「ほぅ、初日から大盛況とは双方とも凄いではないか!
それでハーランドは何を扱っておるのだ?」
「揚げ鳥とレモネンを販売しているようです」
「レモネンが売れるとはな・・・
揚げ鳥は… 競合が多そうだな」
「そうですね… どこでも食せますから」
「他のと違うのだろうか? ちょっと試してみるか・・・
明日の午後4時に、役付き全員分買ってきてくれ」
「明日の午後4時ですね 畏まりました
もう1つが、タカミ村の女の子の件ですが…
スタンに確認を取ったところ、名前はティセと名乗ったそうです
ピコと一緒にパトロールをして遊んでいたそうで、
井戸の調査をしていたスタンと出くわしたと申しております」
「ティセ… タカミ村に、そんな名前の女の子は居らんだろう…?」
「確かに… 私も聞いた事はございません…」
「フェルナンドの件もそうだが、アレハンドロの件も気になる…」
「レモネンやオランジの皮で、除虫木の代用品として使うアレですか?」
「そうだ… ここ最近になって、レモネンと聞く機会が多くなっている
サンダースが金を払ってまで、レモネンの販売許可を求めて来るのも…
誰かの入れ知恵ではないのか?
急にレモネンで商売するなど、どう考えてもおかしいではないか?」
「そうですけど… はっ! その女の子が関係しているのではございませんか?」
「そうかも知れぬな… ただ、悪い事をしている訳ではないので、
何だかんだ言うつもりは無いのだが…」
「アレハンドロたちに探らせますか?」
「・・・面が割れてないケニーの方が良さそうだ
聞き込みはやんわりとするように伝えてくれ」
「承知致しました ケニーに伝えて参ります」
翌日の午後4時過ぎ・・・ ハルヨシ村 兵舎
「ノア様、申し訳ございません・・・」
「何があったのだ?」
「昨日仰せつかりました、ハーランドの揚げ鳥ですが、、、
完売で買う事が叶いませんでした・・・」
「なんと!? こんな時間に完売したのか・・・」
「はい・・・ ハーランドから直接聞きましたが、
大きめの揚げ鳥が3つ入って1人前だそうです・・・
それを毎日100セット準備しているそうですが、
午後4時前には全て売り切ったとの事でございまして・・・」
「・・・1人前は幾らなのだ?」
「1000ヨーでございます」
「少し高めだが、そんなに人気なのか… 食べられないとなると食べたくなる
すまんがもう一度行って、明日の午後4時に予約できないかと尋ねてみてくれ」
「はっ! 只今行って参ります」
しばらくして・・・
「ノア様、予約する事ができました」
「そうか… それでは明日食する事ができるのだな 楽しみだ!」
その時幹部の1人ジーンが駆け込んできた
「ノア様大変です!」
「ジーンどうした?」
「ダスティ卿が、王様を暗殺しようと試みて失敗に終わったようです!」
「王様を暗殺だと!!! 確かな情報なのか?」
「手紙には、レイリアンとアズディニ両名のサインが入っております
間違いはないかと・・・」
「手紙を見せるのだ・・・」
幹部両名から送られてきた手紙を、ノアはじっくりと読んだ・・・
「ノア様、ダスティ卿の処遇はどうなったのですか?」
「公開処刑で、即日処断されたとある・・・」
「公開処刑!? 何百年も前にあったと記述がある程… 遠い昔の話ですが…」
「あぁ、そうだな… 近年聞いた事は無いし、近隣諸国でも無いな
(王様は一体どうなされたのだ… 本当に潮時なのか…)」
「ダスティ卿に付いてましたアズディニはどう致しますか?」
「そうだな… レイリアンはこちらに戻らせて良い
アズディニは王都に留まり、周囲の反応を探らせてくれ」
「はっ!」
ダスティ卿による王様の暗殺は、失敗に終わった・・・
当然ティセの計略で、ラングが実行させたものであった
同日 午後9時過ぎ 店舗
「ちわ~ ナイトホーク郵便だよ」
「ありがとさん ティセ、ラングのおっさんから手紙やで」
「どれどれ… ふむふむ… (か~っ… 失敗か… まぁそうだよね…)
ふむふむ… なるへそ… (金に家具、調度品、武器と防具
貴金属、宝石諸々… 総額で200は下らない…)OK!OK!
サンダース、こんがりと燃やしちゃって」
「ボワッ ・・・ 終わったで」
「ありがとう ねぇハーランド、ハルヨシ村で家買っちゃったらどうよ?
6人でここじゃやっぱ狭いでしょ もっと広い所が家なら、寛げるよ」
「そうやな… そやけどドロボーも心配やしなぁ…」
「ドロボーか… 人手も欲しいし… それは困ったな???」
「ほな、村の人でも呼ぼか?」
「それでも良いんだけど… 一先ず保留で!
ねぇサンダース、手紙っていつでも送れる?」
「送れるで 夜間料金取られるけどな なんせ"ナイトホーク郵便"やし」
「これから手紙書くから、送って来てくれない?」
「おぉ、ええで」
「んじゃあ、ちょっと待ってて」
ティセはラング宛に手紙を書いて送った
翌日・・・ 午後3時頃 店舗内 事務所
「・・・・・・くらいの板で、あーして… こーして 欲しいの
その後で私が印を付けた所に、釘を打って… あーだこーだ…
同じのを3枚ね 全く同じやつ そう、そう…
このくらい小さい板で、厚さはこんくらい… それに麻紐で輪を作って…
釘に引っ掛けられるようにね そう、釘は気持ち上向きね そう、そう…
それをうん十個… そうね… 念の為100個 そうよ そう、そう…
指示が細かい? 知らんがな! プンスカ! 何日? 4日!?
ダメダメ! 2日 ノンノン! 2日! 今日? ん~仕方ない…
含めずでOK!OK! ゲラゲラ!」
大工は急いで帰って行った・・・
同日 午後4時過ぎ ハルヨシ村 兵舎
「ノア様、ハーランドの店で買って参りました!」
「おぉ… 役付きには順番に喰わせてやってくれ
さて… 頂くとするか もしゃもしゃ… 何だこの美味さは…
これは何の鳥だ?」
「ウェイキーバードと申しておりましたが… 私も失礼して モグモグ…
!!!!! 言葉になりません・・・」
「なにやらメモが… なになに… "途中でレモネンを絞ってかけると、
プレーンとは違った味になります 是非お試し下さい"
レモネンを絞るのだな… どれ、もしゃもしゃ… これは…!!!
揚げ鳥の常識が覆った! ノートン、お主も試してみるのだ!」
「レモネンを絞って… モグモグ… ズキュ~ン♡
モグモグでズキュ~ンです・・・ 初めての体験かも・・・」
「人気なのが分かるな… もしゃもしゃ…
あっという間に無くなってしまったではないか・・・」
「私も気が付いたら、無くなってました… 残念…」
「もう無いとは寂しい… 誰かのを食べてしまうか?」
「ノア様、それだけはなりません… ここは我慢です
ここだけの話ですが… 違う物が1つございます」
「違う物とはなんだ?」
「これはウェイキーバードの"ハツ"と言われる部分だそうです
これを1つオマケでくれました 2人でどうですか?」
「1つしかないのであれば、仕方ない… 頂くとするか
どれ… サクサクサク… 何なんだこの食感と味は…
今までの記憶の中に無い、全く新しい分野ではないか…
美味い! 酒が欲しくなる味だ!」
「それでは私も… サクサクサク… !!!
本当ですからの新感覚… 確かにこれは酒に合います!」
「気付くと無くなっている… 不思議だ…」
「幸せからの落差が… 淋しい…」
大満足なノアとノートンだった・・・
翌々日・・・ 午後2時半過ぎ 店舗内事務所
「ティセ様、遅くなってしまい申し訳ございません
王都での売却に手間取りまして、時間が想定以上掛かってしまいました…
ラング一生の不覚・・・ 店舗の解約は、完璧に済ませました」
「別に良いってば そんでお幾ら万円になったの?」
「まんえん? 全部で合計215万と少々です
売れ残りは一応全部持って来ました
元からある金との合計は、240万弱でございます」
「フフフフッ! ナイショだぞ!」
「それで今後は手紙の通りで…」
「そだね~ 私はワケあって表舞台には立てないけど…
トルティーヤ大陸の経済を思いのままに… 時間の問題かも… ゲラゲラ!」
「さすがティセ様ですね♡ レンもお仕えできて鼻が高いです!」
「そんじゃあラングさん、よろしくね」
「はい、ラングにお任せ下さい」
ラングは金を少々持って、出て行った
「次はレン氏… あの"スキル"見せてよ」
「ここは森ではないので効果が薄いですが… 少々お待ちを…」
レンはティセに、スキルを披露した
「ぼや~… 我が名は精霊ドライア… 我が・・・ 力・・・
供物を・・・ し~ん・・・」
「なにそれ?」
「・・・あの~ 森のパワーが少ないかなぁ~って・・・」
「良かった! ふざけてるのかと思ったよ」
「ブンブン 違います違います! 森ならバッチリです・・・」
「ほな… 森に行きますか」
「はい!行きましょう♡」
ティセとレンは、ハルヨシ村東にある森に入った
「そんじゃ、もう一度やってみて」
「はい… 少々お待ちを…」
レンはスキルを発動した
「我が名は地の精霊ノーム 我が力使いたければ、供物を用意せよ」
「あれ? さっきのと違くない?」
「呼ぶ度に変わるんですよ… 選んで呼び出せないんで・・・」
「ふ~ん… 地の精霊ノームさん 上から目線はダメだよ!
持ちつ持たれつ 対等な立場でいきません?」
「なんだ、娘… 我と対等にだと?」
「この要求呑めなければ、精霊をチェンジするだけだよ 良いの?」
「え~っと… 何と言いますか… チェンジですか? それは早計では?」
「なんでよ? 物事をハッキリとどうしたいか伝えられない精霊のアンサーを、
私はいつまで待たなきゃいけないのよ? 私が間違ってるのかな?」
「いや~ 間違ってはいないかなぁ~って… 思うんですけどね…」
「こりゃあダメだわ… チェンジかな… 仕方ない・・・」
「ちょっとお待ちを… 対等な感じで・・・」
「7:3 これは譲らない どう?」
「!?それは違いますよね… 5:5ですよ・・・」
「7:3」
「6:4で…」
「7:3」
「・・・・・・」
「レン氏… チェンジで」
「分かりました 7:3でお願いします・・・」
「7:3でできるじゃん もうちょっと早くしてくんないとさぁ」
「ごめんなさい! はい、7:3でした すみません!」
「あんたたち、キャラがそっくりね」
「そうですかねぇ・・・」
「そんでノームさん、私にお願い事は無いの?」
「我のお願いですか? あるっちゃあるんですけども・・・」
「ハッキリしないのね… 何よ?」
「地面にですね、不浄な物があるのです… それを撤去して欲しいですね
他の精霊も最近悩んでまして… どうしたものかと…」
「不浄な物って、もしかしてこの魔石の事?」
「そうです! それですそれ!」
「持ってってあげるから、全部集めてよ」
「えっ!? 我が集めるのですか? 御冗談でしょ? アハハハ…」
「冗談なんか言ってない どうすんの?」
「あれ…? 本当に冗談じゃないんですね… 困ったなぁ…」
「我一人じゃ… ムリって言うか…」
「なら、他の精霊にも手伝わせれば良いじゃない みんな悩んでるんでしょ?」
「そう… ですね そうでした… アハハハ ウッカリしてましたね」
「だよね~ ウッカリは仕方ないよ たまにはね
そんで集めたら、他の人間や亜人に取られないようにしてよね
何日でできるの?」
「2年… いや3年ですかね…」
「はぁ? 3年? 14歳が17歳になっちゃうよ?」
「それって普通の事ですよね…」
「ギロリ!」
「ひゃ~! そんなに簡単に約束できませんって ムリだった場合を考えると…」
「しゃ~ない… 譲歩してあげよう いい、よく聞いてよね
ハルヨシ村から人間たちが森に来るよね
精霊なんだから、人が来る来ないって分かるんでしょ?
よく現れる場所から初めて、段々と人が来ない場所に移っていく
そんな感じで始めてよ 北西、西、南西は後回しだからね
村から東のこの辺りから始めるの、分かった?」
「よ~く分かりました 頑張らせて頂きます」
「他の人に1個でも取られないようにね お願いしますよ
初回の回収は、月末に来るからね じゃあ、よろしく~」
「・・・・・・」
村に帰る道中・・・
「ティセ様のように、精霊をある意味従えてるのって普通できませんよね?」
「そぉ? 分かんないけど?」
「私が変なのかな… なんだろ?」
「精霊だからって、アイツ偉そうだったじゃん…
"我に供物を"とか言ってさ ゲラゲラ!」
「・・・・・・ (ティセ様に従った私は、間違ってなかった!)」
ハルヨシ村 店舗内事務所
「ただいま~ 今帰ったぞ~」
「おぅティセ、大工さんが出来上がった予定表持ってきたぞ」
「あ~ 今日だったね、忘れてたよ どれどれ…
よし、はなまるをあげよう 大工さんにお金払った?」
「払ったで ニッコニコで帰って行ったわ」
「ところで、エドワードたちはどこにいるの?」
「あいつらは冷蔵庫やで 狭いからな」
「寒くないの?」
「涼しくて気持ち良いって喜んでるで」
「ふ~ん… 売り上げは?」
「両方で30弱やな 調子ええで 絶好調や」
「私の予想だと、明日か明後日… 売り上げがグンと落ちるよ」
「そないな事ないやろ なぁ兄貴?」
「落ちる要素がないやん バリ旨やで?」
「人気者ってのは、妬み嫉みが凄いんだから・・・」
「ホンマかいな…」
その時、ラングが帰って来た
「ティセ様、只今戻りました」
「首尾は?」
「上々でございます 場所は、バザールのほぼ中心です」
もう一軒は、飲食街の角地を押さえました」
「グ~ッド!」
「なんやティセ、2軒も買うたんか?」
「買ったのはバザールの方 角地は賃貸だよ」
「2軒も要らんのちゃうの?」
「君たち… ノンノンだよ… バザールが本店 ここが支店
角地は、村人専用の宿」
「??? それやったら、家が無いやん」
「それとも、村人専用の宿が家ちゃうん?」
「ラングさん、説明してあげてちょ」
「バザール本店の2階と宿屋も住居になります」
「そーゆー事」
「一体どんな店を買うたん?」
「共に元宿屋ですな」
「宿屋やって… 最高やん」
「ちゅ~事は、1階は酒場かいな?」
「そうだね 2つの物件には、あれがあるのよね~ なんだ?」
「それは、買うた決め手になったんか?」
「なったねぇ~」
「俺は分かったわ」
「兄貴の予想はなんや?」
「簡単やん なぁおっさんも分かるやろ?」
「はい、あれしかないですね」
「そうや、あれやん」
「分からへん なんや?」
「ティセええか? 俺が答えるで」
「いいよ」
「正解は… バザールの真ん中やからや!」
「ブブー 違います!」
「お兄さん違いますよ… 全く… 若いから ねぇ…
正解は… 厨房があるからですよ」
「ブブー 違います!」
「えぇ~… そんなぁ~」
「2人共何言ってんのよ・・・ 超簡単じゃない
正解は、地下室があるからでした 残念!」
「なんや地下室かいな・・・」
「そりゃ分からへんよ」
「あんたたちねぇ… 調理するけど一応生もの扱ってんのよ
冷蔵庫って、大切で肝心な物なんだから・・・」
翌日の夜・・・
「相変わらず絶好調やで!」
「ティセの心配も不発やな アハハハ!」
「まぁまぁ、明日があるさ 覚悟しなさいな」
翌日の夕刻・・・ 店舗
「ティセ・・・ 全然売れへん・・・ なんでや?」
「売れたのが33セットや・・・ アカンで・・・」
「レモネンもレモネン水も売れません・・・ 何故でしょうか?
シロップは、そこそこ出てますけどね」
「まぁまぁ 仕事終わってから話そうよ」
午後8時過ぎ ワールド亭
「ティセ、教えてくれや 今日はなんで売れへんかったんや?」
「予想してたっちゅう事は、最初から分かってたんやろ?」
「レモネンも7割減ですね…」
「ラングさんは分かる?」
「儂ですか? まぁそうですな… 商売人とは、がめつく生きる者です…
似たり寄ったりの・・・」
「ストーップ! そこまで!」
「明日はお休みにして、バザールや飲食店を巡りましょう」
「それで分かるんか?」
「分かるねぇ~」
「ほな、臨時で休むか・・・」
翌日・・・ 昼 バザール
「結構人は居るな… 仕事した方が良かったんちゃう?」
「この客たち逃すのは勿体ないで…」
「良いから ほら、行くよ」
ティセたちが、バザール内を巡ると・・・
「レモネンいかがっすか~ レモネン水も美味しいよ~」
「あん!? なんやアイツら! 僕らのマネしとんのか プンスカ!」
「ティセ… あれはアカンで! しばいたろ!」
「ラングさんお願いね」
「儂にお任せあれ!」
ラングはレモネン屋と話し合いをしに行った・・・
「なんやアイツら、急いで閉めとるな」
「次はしばくぞ、こら!」
「ラングさん、何個あった?」
「50個ほどありました この通り」
「さぁ、次は… アレを見て」
「揚げ鳥屋や・・・ みんなマネしくさって・・・」
「抗議するで!」
「ちーと待ちねぇ… 揚げ鳥屋さんは、見逃すしかないよ」
「なんでやねん? マネされとるんやで!」
「それは自由でしょ 妨害はしちゃダメ!ゼッタイ!」
「クソーッ! それで売り上げ下がっとんのか・・・」
「ティセ、何か手は無いんか? このままじゃアカンやろ?」
「許可を受けてないレモネン屋は排除するけど、
揚げ鳥屋さんは放置で良いよ」
「そんなんでええのか?」
「うん、そう」
「・・・・・・」
ティセたちは、徹底的にレモネン屋を排除していった
そして、店舗に戻って来た・・・
「今日の所はこれでいいよ レモネンも大量に手に入れたし」
「そうは言うたかて、あんなにマネされとるとは、思わへんよ…」
「あんなんしばいたったらええねん! プンスカ!」
「ごちゃごちゃ文句言わない! あんたたち、何で勝負してんのよ?」
「何って何や? 味やろか?」
「そうでしょ 味で勝負してんの!
それとも、他の店には勝てないって思ってんの?」
「いや… そう言うワケやあらへんけどな…」
「じゃあほら、最後寄ったお店で買った揚げ鳥 食べてみましょ」
みんなで、揚げ鳥を食べてみた・・・
「なんやコレ・・・ まず~・・・」
「これじゃアカンな・・・ 売れへんわ・・・」
「でしょ? ラングさんは?」
「べちょべちょですな・・・ 儂の口には合いません・・・」
「レン氏は?」
「これなら、酒場の方がマシですね・・・」
「モネは?」
「1口で胸焼けします・・・」
「サーシャは?」
「お肉もですけど、揚げ油も駄目ですね・・・」
「ほらね… 揚げ鳥はマネできても、味まではムリって話なの
例えこの店より安かったとしても、この味で2回目を買おうと思う?」
「これは買わんな・・・」
「お断りや・・・」
「これが、人気商売の辛いところなのよね
この店がオープンしてから、連日大賑わいだったでしょ?
普段売れないお店からしたら、揚げ鳥かレモネンか 大そう売れてんな!
ならマネしてやろう せいぜいそんな程度なんだから
流石にレモネン水は、水を混ぜただけだからね ほぼ同じ味になっちゃうよ
でも、シロップはマネできないでしょ?
今後だけど、研究熱心なヤツが現れたら 似たような物は、恐らくできるよ
だからよ 他が追いつく前に、新しいメニューなりなんなりで、
他との差をつけるの 追いつけないし追い越されないようにね」
「ティセの言う通りやな… すまんかった」
「僕らがもっと自信をもってやらなアカンな 今の所、味までは追いついてへんし」
「そうそう! その意気込みじゃなきゃね だけどレモネンは話が違うからね
こっちは、お金を払って許可を取ってるワケだから、マネは許されない
今日は話で済ませた レモネンを没収する為にワザとね 優しいでしょ?
時が経てばまた始まるから ショータイムは・・・」
「兄貴… またあの禍々しいオーラが見えるで・・・」
「ホンマに恐ろしいで・・・」
「作戦はこうよ ごにょごにょごにょ 分かった?」
次回 第9話『謎の女の子』
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