第 6話 森の掃除屋
翌日昼過ぎ タカミ村
ティセは、ハーランドの家に向かった
「私が最初に、モスさんに目を付けた理由って何だか分かる?」
「安かったからやろ?」
「それもある」
「なんやろな??」
「これが昨日言った物 レモネンシロップ
レモネンを、水・砂糖・はちみつで煮詰めた物だよ
これを、コップに少し入れる トロ~ こんなもんかな?
そんじゃ… モスさん アレを入れてあげて」
「はい、少々お待ちください」
モスは魔法で氷を作り、コップに入れた
「さぁ、どうぞ」
「なんやおっさん… 氷の魔法、使えたんか!?」
「これは驚きや・・・」
「はい… 実はそうなんですよ」
「氷を使えるなんて、やるやん!」
「モスさんは、氷の魔法が使えたから なのよね~」
そこに、お水を入れる じょろろ~ 掻き混ぜる 飲んでみて」
「ゴクゴク… くぅあ~ うまい! なんやコレ!?」
「甘酸っぱい飲み物なんて初めてや・・・」
「甘さもあるのに、すっきりしてますね おいしい!」
「シロップを水で割った物 今飲んだのが "レモネード
今度は"レモネン水" レモネンの果汁と水だけの物
それは作ってきたから、飲んでみて」
ティセは自作したレモネン水を、ペットボトルに入れて持って来てた
「甘さは無いんやけど、酸っぱ過ぎて飲めへんって事はないな
目が覚める感じや」
「これはこれでいけるで シャキッとするなぁ~」
「力が漲りますね」
「そうなの 体にも良いんだよ」
「だけどなティセ 確かに美味かったんやけどな、
それでそない売れるんかいな?」
「これで、蚊もG○〇○も居なくなるんだから どこかにいない?」
「G○〇○なら、この家に仰山おるで」
「ぞわ~ お邪魔しま・・・」
「カサカサ ほら、捕まえたで」
「ぎゃ~!!! キモいんじゃ、ワレ~!!」
「そない大げさな…」
「あんたたち・・・ よく素手で触れるわね・・・
ハアハア・・・ レモネン取って来て、大量に置いとけば出ていくから…
早急にG○〇○駆除してよね… じゃないと、もうこの家には来ないから!」
「はぁ… 分かった 追い出せばええんやな」
「そりゃあそうだろがい!!! プンスカ! 場所を変えるよ!」
ティセたちは外に出た
「森も近いし、虫は仕方ないやろ…」
「ブツブツ こうなりゃ、徹底的に排除するしかねぇ・・・
Gは徹底的排除… 徹底的駆除… ブツブツ・・・」
「兄貴・・・ ティセが呪文を唱えてるぞ!?」
「呪いの呪文は初めて見るな… 興味深いで… さすがの賢者やな」
「狩りに行くよ! ガルル…」
1時間後 長老の家
「ハーランドが獲った"ブルーラビット" サンダースが獲った"ウェイキーバード"
モスさんが獲った"アゲハスパイダー"は、・・・ 逃がして・・・」
「えっ!? 逃がすんですか?」
「極楽鳥に唆されて、蝶から羽を頂いたスパイダーは逃がしてあげて・・・
蜘蛛って【益虫】って言われてるの G○〇○とかの害虫を食べちゃうから」
「・・・??? そうなんですか?」
「他は誰か捌けるの?」
「僕も兄貴も捌けるで」
「じゃあ、やってちょうだい」
ハーランドとサンダースは、ブルーラビットとウェイキーバードを捌いた
「実際見るのはグロいわね… でもこれが、"命を頂く"って事なのね…」
「捌いたで」
「あっ!? これは… "ハツ" やった~!
これも脂肪と血管を綺麗に取ってからスライスして… そうそう…」
「何や…? はつ???」
「ハツって心臓のこと 鳥のハツは美味しいから
ウサギのハツは知らないから、今回は見送りね」
「内臓を食うんか… なんか怖いな」
「・・・ もしかして村の人って、動物の内臓は食べないの?」
「あぁそうや この界隈の人は内臓は食わんよ」
「ふ~ん…勿体ない そんで今回は、ブルーラビットの塩焼き
ウェイキーバードの唐揚げ、ウェイキーバードのハツの塩焼き
この3品作るよ 待ってて」
「ティセは料理もできるんか? 大したもんやで」
ティセは3品を作った
「はい出来たよ 食べてみ」
「そんじゃあ頂くで…」
「なんやこれは… これがウェイキーバードかいな… ごっつ美味いで…」
「凄いな… 今まで喰ったブルーラビットは何やったんや…」
「ティセ様…!? 変わった食感ですよ… ハツ… ですか? おいしい!」
「でしょでしょ? 味付けは塩とコショーだけ それでも… モグモグ 美味い!
これに、レモネンを絞った汁をかける… これも食べてみて」
「ぴゃ~ 最高やな… レモネンでこんなにサッパリするんやな…!?」
「これは食べ物界の革命や~! ウェイキーバードの価値が上がるで…」
「飲食業界の常識が変わりますよ! これは… 儲けられますね!」
「そうでしょ? 好きな人は、レモネン単体でも食べるんだよ 私はムリだけど
食べ物も"味変"って言ってね、途中で加えたりして味を変えたりするの」
「そんな方法があるんやなぁ~!?」
「タレも色々な味で作れるからね 甘いの辛いの酸っぱいのや、にんにくとかね
好みに合わせて、色々試したりしてね」
「発想が凄いんやな…」「賢者たる所以やで…」「さすがはティセ様!」
「どうなの? 商売する?」
「兄貴… ごにょごにょ…」「そうやな… ごにょごにょ…」
「おっさんは… ごにょごにょ… どないや?」「そうですね… ごにょごにょ…」
「ねぇ… まだ決まんないの?」
「決まったで 僕と兄貴で、ウェイキーバードの唐揚げ屋をやるで
そんでおっさんがレモネン屋をやるそうや どうやろ?」
「良いじゃんよ! じゃあ、ここにあるお金で2店舗借りて・・・」
「こんにちは~ こちらはハーランドさんのお宅ですか?」
「そうです… どちらさんですか?」
「私たち(2人)この前ハルヨシ村で助けてもらった者です…
家も他の人に貸されていて… 頼る所も無かったので…
押しかけてしまい申し訳ないですが…」
「あぁ、あん時の人か それは災難やったな… 別に構へんで
空いてる家もあるから大丈夫やで」
「なら、この人たちにも手伝って貰ったら良いんじゃない?」
「そやな… そりゃええアイデアや
僕たちこれからハルヨシ村でな・・・」
「私たちを雇ってくれるんですか? 助かります・・・」
「あそこで良いんじゃない エドワードのさ」
「あんたたち、あそこで仕事するの大丈夫やろか? 嫌か?」
「アイツがいないなら大丈夫です! ねぇ」
「はい、頑張ります!」
「そんじゃあ、早速借りたら?」
「ティセ、そんな焦んなや… やる事色々あるで ウェイキーバードの仕入れもな
仕入れ言うたかて、買う訳やあらへんで 獲るんやから
村の人たちに協力してもらってやるなら、調味料と油以外原価はタダやな
そこんとこしっかりと連携してやらんとな
でも、コショーは買えんで あんな高いもん無理やで」
「それが本当の意味で、"おいしい"商売やろ レモネンもタダやし」
「そうだね… でも、コショーは何とかなるかも… 錬金術でね…
レモネンも加工する人が欲しいから、村の人にお願いして
作り方はレシピにして渡すからね みんなでがんばろー!」
「おー!」
数日後・・・
「ティセ、ちーと問題があってな… どうしたもんか・・・」
「何があったの?」
「肉なんやけど獲ったら獲ったでな、どないして保存したらええんか…
何かアイデアは無いんか?」
「保存ねぇ 今はどんな風に保存してんのよ?」
「保存の方法? そりゃあ一般的には"塩漬け"か"乾燥"させるかやな
でもそんなんせぇへんよ いつもは獲ったらすぐ喰ってまうんやから
そんなんする必要が無いんや」
「生モノは基本置いとかないのね・・・
方法は幾つかあるけど、1つはもの凄く大変だよ
かと言って、もう1つもちゃんと作るのは難しそうだけどね
簡易的な方法なら、すぐにできるけどね
ただ、長期的な保存はどうかな・・・ ムリっぽいけどね」
「どないするんや?」
ティセは、3つの方法の内2つを教えた
「確かに大変やな・・・ けど、欲しいっちゃ~欲しいな 村に必要やん
あったらホンマに便利やからな」
「村の人何人かに手伝って貰ってやるしかないよ やるならね」
「そやな・・・ まぁ、手はなんとかなるやろ
そんでもう1つはどんなんや?」
「モスさんは魔法を使えるじゃない」
「魔法? 氷の魔法か・・・ それで凍らせるんやな?」
「そう、凍らせるのもだけど 仮に凍らせなくても…
2つと同じようなシステムで、物を使わないでやる方法」
「そうか… 物を使わへんから、溶けやすいんやな…」
「そうなの だけど、常温で置いておくより断然良いでしょ?
あの夕方の"バザール"みたいなのより、全然マシじゃんか」
「しゃーない… それでいこか」
「あっ! ハルヨシ村のエドワードのお店、奥に地下室があったじゃんよ!
排水溝もあったし、あそこならひんやりしててバッチリだよ!」
「そうやな… 早く借りなアカンな 兄貴に言ってみるわ ほな ぴゅ~」
サンダースはどこかへ行ってしまった・・・
更に数日後・・・
「ティセよう来たな これから店舗の契約しにハルヨシ村に行くで
ティセも行くか?」
「そうね、行こうかな」
「兄貴~ ティセも行くってよ」
「ほなおっさんが戻ったら行こか」
ティセ・ハーランド・サンダース・モス・元奴隷のモネとサーシャ
総勢6人でハルヨシ村に向かった
「でもホンマにあの金、村の為に自由に使ってええんか?
結構な大金やし、僕らじゃ一生稼げんくらいやで」
「村の為になるんなら、別に良いよ
私は私で稼ぐから まぁ、そこから使う事もあるかも知んないけどさ」
「ホンマに感謝やで」
「別に良いってば そんであっちの荷馬車、何積んでたの?」
「この前かっぱらった、エドワードの店の家具や調度品や
使えるもんは使こうて、要らんもんは売ったろ思うてな そんで持って来たんや」
「ふ~ん 自分たちで売るワケ?」
「ちゃうよ、家具も買い取る所あるからな
僕たちで販売したかて、どうせ時間掛かるやろうし…」
「そうだね パッとお金に換えちゃった方が早いね」
そんなこんなで、ハルヨシ村に到着した
「兄貴、どれ残す?」
「そやな・・・ これとこれ… あとこれは要るやろ…
この2つと… これやな あとは売ってええで」
「ほな、こっちは売るで」
「俺等は契約してくるで お前とティセは、それ売ってきーや」
「あぁ分かった」
ハーランドたちは賃貸業者の元へ向かった
「僕らは売りに行くで」
サンダースとティセは、買い取り業者の元へ向かった
「すんません A-65535 タカミ村 サンダースです
これ、売りに来ました 査定お願いします」
「あいよ 降ろすの手伝ってくれ」
「はい」
サンダースは、荷物を降ろした 査定中・・・
「お待たせ 全部で2万2千だ 売るかい?」
「(小声で)ティセ、2万2千だってよ… どうする?」
「どうするも価値分かんないもん 売っちゃえば?」
「そんじゃそれでお願いします」
「ほらよ 2万2千な 毎度あり~」
「ありがとう ほな行こか」
ティセたちは、エドワードの元アジトに向かった
「ティセ、また儲けたな! タダで手に入れたもんが2万2千だってよ…」
「やる時はごっそりいかないとねぇ 勿体ないじゃない」
「そやな… 強盗団みたいやけどな・・・」
暫くして、ハーランドたちが戻ってきた
「この店舗と檻があった場所、契約してきたで
おっちゃんの方は、屋台を注文しに大工の所に行ったで そんでこの店舗やな…
ティセ、その大工にこっちも注文せなアカンから、どんな風に改造したらええ?」
「そうだねぇ~… 入口はこっちにずらして、ここを窓口にするでしょ…
ちょっとカウンターぽくして… あ~してこ~して・・・」
「そんで?」
「ここがキッチン… 調理場ね フライヤー… 揚げ物の油はここに4台…
そんで、その奥が事務所と休憩室 最後が地下室・・・
そこの壁をぶっ壊して扉にすると、屋台に繋がるでしょ… 閉店後は閉められる
地下室はこの前説明した"冷蔵庫"にするから」
「どんな作りにするん?」
「・・・ 排水溝もあるんだから、排水もちゃんとできそうね…
この壁際に、筒状の木の枠を組んでもらって…
氷がこぼれ落ちない程度で、等間隔で隙間空けてね
その中に、モスさんの魔法で氷を大量に入れて欲しいの
氷の重さで壊れないように頑丈にね
そこの横に階段を作れば、氷を入れるのに楽かもね
その手前は、このぐらいの高さで棚を4段で作って欲しいのね
一番下は氷を敷き詰めて、2・3段目はお肉を置く棚
一番上は、また氷を置くってな具合で、上下後ろから冷やすスタイル
そうそう… 一番上の段は、溶けた水がお肉に掛からないように、
鉄板とかで垂れた水が上手く排水できるような… 細工?してほしいな
もしもモスさんが、鶏肉を凍らせる事ができるなら、
そこにも棚を作って置いとけば良いんじゃないかな? 冷凍用の棚ね」
「出来上がったら、また確認してもらおか」
「凍った鶏肉は、"氷水につけて溶かして"よ
今度鶏肉を入れる袋(ジッパー式袋)を持って来るからさ」
「水じゃなくて、"氷水"? なんでや?」
「そういう決まりなの(説明がめんどいだけ)法律で決まってるから」
「大変やな… そんなんで捕まったら洒落にならへんで…」
「あとね、氷も棚も全部整ったら… この部屋に出入りした時、
扉はすぐに閉める 開けたら秒ですぐ閉める 冷気が逃げるからね
必ず、全員守るようにさせてよね
しっかりと密閉できる扉にしないとダメだな・・・」
「あぁ… 大変やな」「俺じゃ大工に説明しきれん… ティセから頼むわ」
大工が到着したので、屋台と店舗の設計をティセが事細かく説明した
「・・・・・・全部でこんな感じで、はい どのくらい掛かる?」
「7日くらいじゃねぇかな・・・?」
「ダメダメ! 4日で終わらせてよ」
「無茶言うなよ、お嬢ちゃん・・・」
「お金ならあるから、人数増やしてやってよ ねぇ!」
「分かったよ、すぐに取り掛かるよ・・・」
「じゃあ、お願いしま~す! 大工さんと話はついたよ」
「押し切るパワーがえげつな・・・」「今後交渉は、一切任せた方がええな・・・」
「んじゃ… 改造しない部屋は、事務所と休憩所やな…
事務所でも休憩できるしな 休憩所は女の子専用の部屋にしたろかな?
調理道具やら必要なもん買うて来るか・・・」
「ねぇハーランド ブルーラビットはどうすんのよ? やらないの?」
「やりたいんやけどな ハツならできるけど同時には出来へんよ…」
「仕入れ(狩り)はどうなってんの?」
「それは村の人に頼んでるで レモネンもな
獲れ(採れ)たてを、朝一で持って来てくれるんよ
だから、荷馬車も数台欲しいんよな それと早い馬やな
馬は… ノア様の御配下に聞かな分からんけどな」
「あら、そう… 何か、みんなに迷惑かけてない? 大丈夫?」
「何を言うとんねん 俺らは村の為に働くんやで
普段は畑しかせえへんのやから、暇つぶし言うたら言い過ぎやけど
役割っちゅ~もんがあるのは、いいもんやで」
「ならいいんだけどね… もうちょっと人手が欲しいかもね」
「足らな村の人呼べばええんよ 大丈夫やから安心せい」
「うん、分かった」
「ほな、必要なもん買ってくるで… ノア様の所にも行って、馬の件もな
みんなそれで動くけど、ティセはどうする?」
「そ~だな~… どうしよ? ちょいとブラブラ見て周ろうかな?
念の為、5000ちょーだい」
「5000? 念の為なら1万持って行き」
お金を1万受け取ったティセは、独りで街を散策(探索)する事にした
「さてと、どこ行こうかな・・・?(小腹がすいたから、何かつまみたいな)
こんにちは、この辺で美味しいお店ありますか?」
「あっちに【ライラックの酒場】ってのがあるよ」
「なにがおすすめですの?」
「パンが旨いかな?」
「(パンかよ…)ありがとう(まぁ、行ってみるか…)」
ティセは、おすすめされた【ライラックの酒場】に行ってみる事にした
「ちわ~ 1人なんですけど」
「はいよ こちらにどうぞ ご注文は?」
「パンと、おすすめのお肉料理をお願いします」
「おすすめね、パンは?ありなし?」
「何がありなしなの?」
「木の実だよ ありかなしか?」
「ふ~ん じゃあ、ありで」
「はいよ!」
しばらくして、ティセのテーブルに料理が運ばれてきた
「どうぞ 熱いからね、気を付けてね」
「(脂身が多め…)これは何のお肉ですか?」
「"兵隊アナグマのグリル"だよ 初めてかい?
脂身が多いけど、この脂身が美味いんだよ 食ってみな」
「そんじゃ… 頂きます もしゃもしゃ… へぇ~!? 美味しい!」
「だろ~ この脂身が無きゃ、味は淡泊なんだよ 分かるだろ?」
「うんうん… そうだね(これですき焼きやったら美味そう・・・)
ねぇおじさん この"兵隊アナグマ"って、ハルヨシ村で獲れるの?」
「この界隈だったら、獲れるよ 一般的に出回ってる物だね
"兵隊"って名前のせいか、弱いくせに向かってくるんだよ がははは!」
「ふ~ん じゃあ仕入れないで獲って来るんだ?」
「そうだねぇ… 足りなきゃ考えるけど、わざわざ仕入れるのもなって感じだな
森に行きゃあいるんだからさ」
「もぐもぐ… もぐもぐ… へぇ~ じゃあ、森は激戦区だよね
お店やってる人は、みんな獲りに行くんでしょ? もぐもぐ…」
「そーだな… そんでも、獲って獲っても居なくならねぇんだから不思議だな?
ただ… 森だけじゃないんだぜ このハルヨシ村には… 深淵があるからな
因みに店のもん(者)だけじゃねぇよ 一般人や兵士たちも毎日獲ってんだからな」
「・・・その深淵って何なの?」
「おいおい… 深淵を知らないのかい!?」
「簡単に説明するなら、地下に迷宮があるんだよ
迷宮とは言え、迷路のようになってるのは上層の数階層だけ
あとはだだっ広いエリアだったり道なりに進むだけだったりするけどな
俺は潜った事がないから、聞いた話だけどな」
「そんな迷宮がここにあるんだ?」
「ここだけじゃないぜ 全国各地に色々とあるらしいんだよ
取れる物が違うって話だぜ」
「へぇ~ それぞれが違う物が取れるんだ… 凄いね
それならハルヨシ村は何が取れるの?」
「このハルヨシ村が神から賜った物 穀物だよ」
「なんか… もっと凄い物だと思ったけど…」
「何言ってんだ、とんでもない… 食べ物は、余るくらいあっても困らねぇだろ
他の国は喉から手が出るくらいだぜ…
そのせいで王都は、過去に何度も攻められてんだからな…」
「王都って、ジュリアの事?」
「そうだ… ジュリアは泡沫国の王都…
深淵で穀物が育つから、泡沫国は食べ物の心配が要らないんだ
ずっと前の時代から、王都はハルヨシ村を守る盾なんだとさ
近隣諸国も足りない分は買うんだとよ 他所の深淵は何が取れるんだろうな?」
「そんな恩恵があるんだ… へぇ~」
「王都から北に3つの城 西に2つの城がある
それにハルヨシ村だろ 泡沫国は強いんだよ
それが最近の王様はどうかしてんじゃねぇのか…
頭がおかしくなってるみたいなんだよな… 何か変なんだ… ぐすん…」
「おじさん… 泣いてる場合じゃないでしょ!
何かあるんじゃないの… 理由は分かんないけど…」
「そ、そうだな・・・」
「ごちそうさま また来るからさ、私の顔覚えておいてよ」
「おぅ、ありがとね ちゃんと覚えとくよ」
「お幾らです?」
「ええとねぇ…」
その時・・・ 別のテーブルで、騒動が起こった!
「知らねぇって言ってんだよ!! 毎日毎日うるせーなコノヤロー!」
「ちょっと聞いただけじゃねぇか!」
「テメェもヤツの仲間って~なら、やったるぞ とっとと失せろ!」
団体と1人が揉めている様だ
「アレ、どーしたの?」
「あぁ、あれか… ここんところ毎日来てるんだよ
奴隷商を探してるんだってよ… みんなに聞いて回ってるんだ…
余りにも毎日しつこいから、団体さんもキレちゃったんじゃねぇかな?」
そう言うと店主は、騒動を治めに行ってしまった・・・
「奴隷商の仲間ならお呼びじゃねぇ 俺ら10人相手にやるってのか?」
「お前ぇら、やるんなら外でやれよ(店主)」
「チッ・・・クソが!」
男は舌打ちをして、店から出て行った・・・
店内の客は、団体のコールを始めた
「勇戦団! 勇戦団! 勇戦団! 勇戦団!!!」
「ぴゅ~ 流石勇戦団だぜ!」「奴隷商なんぞクソくらえだ!」「ワイワイ」
店主が戻ってきた
「いやぁ、悪かったね 領民の大半は奴隷に反対なんだけどな、
それでも必要とする奴らは少なからずいるんだ 困ったもんだ・・・」
「さっきの奴って、奴隷商の仲間なのかな?」
「さあな…? 仲間か客だろ?」
「ほほぅ… おじさん、ちょいとお耳を… ごにょごにょ・・・」
「ほうほう… そうなったらどうなるんだ?」
「あいつがもしもエドワードの仲間だったら、捕まえてもらうから」
「・・・!? できるんかねぇ、そんな事???」
「まぁ、任せてよ」
ティセはお代を払い、店を後にした
新店舗(エドワードの元アジト)
ハーランドたちは、買ってきた家具などの配置をしていた
「ちーと、ハーランドとサンダース こちらに…」
「おぅティセ、戻ったんか 何や?」
「色々と情報なり何なりを仕入れてきたんでね…
先ずは急ぎの話… 今さっき食事をしたんだけどね、
そこにエドワードの仲間らしいヤツが来たんだよ…」
「なんや、捕まえなかったんかいな?」
「ティセ1人じゃできひんやろ…」
「だからね、お店のおじさんにあーしてこーしてって頼んでおいたの
だから、ジュリアにいるラングさんに手紙を送りたいんだけど
仮に今送ったら、すぐに着くかな?」
「直ぐ着くで 僕が手紙書いて送ったるで」
書く内容を聞いたサンダースは、手紙を送りに行った
「ちなみに今日は、こっちに泊まるの?」
「いや、俺らは一旦帰るで おっさんと女の子はこっちに残るで
大工の出入りもあるし、鍵はおっさんにも渡したからな」
「じゃあ私も帰るよ 何時頃帰る?」
「そうやな~… そろそろ出な暗くなるな…
おっちゃんたちに任せて、俺らは戻るか?」
「そだね~ 明日確かめたい事があるからさ」
「ほな、あいつが(サンダース)戻ったら帰るで おっさんに伝えてくるわ」
程なくしてサンダースが戻ってきたので、3人はタカミ村に帰った・・・
翌朝・・・
「じゃあ、森に行くよ!」
「準備万端やで」「行こか」
3人は、村の東にある森に入った しばらく歩いていたら・・・
「ギャ~!!! でかすぎる蟻! キモい! ぜぇぜぇ・・・」
「あぁ、キラーアントやな この森には結構おるで」
「猫くらいある蟻が、結構いるワケ!? 信じらんない… ガッデム!」
「こいつは確か雑食やで 動物の死骸を引き摺ってるのを見た事あるで
エサを巣に持って帰るんちゃうか?
しかもや、自分よりデカい獲物やで 相当顎の力が強いんやな」
「とうとう私の "アリ編" が始まってしまうのね… ヤバい展開だわ…」
「"アリ編" って何の事や???」
「あぁ… 大丈夫 気にしないで…
こんなのが巣に、数百数千もいるんじゃないの…?
人間が喰われたりとか… 恐ろしいヤツなんじゃ…」
「大丈夫やで 人間様が一番強いって理解してるやろ こいつ、ほら」
「ギャー!!! 気軽に掴んで、蟻の裏側見せんな!!
ハァハァ… 全くこの兄弟は…」
「ティセは毎回大げさやな~ あははは! なぁ兄貴」
「ホンマやな 賢者っちゅ~もんは、みんなそうなんかな? あははは!」
「こいつら・・・」
「ティセ見てみ こいつ(キラーアント)死骸を運ぶで・・・」
「ホンマや… トルティーヤオオネズミやな… 重そうやけどな…」
「・・・ (軍隊アリの動画だと、獲物の体をバラシてたけど…)」
「ティセ! 巣まで運ぶの見ようや」
「えっ!? うん… (そのままの姿で巣まで運ぶなら、もしかして・・・)」
3人はコソコソと、獲物を運ぶキラーアントを追った
「(小声で)巣はあそこや… 倒れた木の中に巣があるんやな!?知らんかった」
「(小声で)結構大きい穴やな… 中はスッカスカなんやろか?」
「(小声で)どうだろうね… 木が倒れる前か後で違うと思うけど…
あの木の中だけがアリの巣だとしたら、一緒に住んでる仲間は少ないはずだよ」
キラーアントが巣に入ってから、しばらく観察していたら・・・
「(小声で)あっ! あいつ… ケツから出てきたで…」
「(小声で)何か咥えてるんや… 何やろ? 毛?毛皮か?」
キラーアントは、トルティーヤオオネズミの毛の付いた皮らしき物を
巣から引っ張り出し、落ち葉の中に埋めている
「(小声で)あの蟻が食べなかったゴミを、巣の外に捨てたんだよ きっと…
肉を全部食べるんなら… 生ゴミの処分に使えるんじゃない?」
次回 第7話『アレルギー』
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