東の国
ホビーのナビを頼りに東の国に辿り着いたドロシーたちは、レイオンと別れオズという魔女の居場所に向かった。
「私達、喰われたりしないわよね」
ホビーを先頭に深い森に足を踏み入れたドロシーとトトは、寒さのせいなのか怖さのせいか温め合うように身を寄せ合って歩いていた。
突然視界が開けたかと思うと、切り開かれた森の中に忽然と大きな箱が姿を現した。
「これって……まるで」
「「パパの研究所みたい」」
ドロシーとトトは声を揃えた。
『
飾り気のない板に手書きされた看板と、無機質で巨大な
ドロシーには思い当たったところがあった。それは母ジュディの旧姓が小津だったということだ。
「トト。行こう」
ドロシーは唾を飲み込むと、ゆっくりと施設に向かった。
入口にあった呼び鈴を押すと、男性所員が現れた。ドロシーが迷子で魔女の力を借りに来たと伝えると、待っているように言われた。
「ごめんなさいね朝からバタバタしていて……随分と珍しいお客様だこと」
白衣を着た女性と、その後ろから別の男性所員がやって来た。ドロイドを連れた女の子と男の子という組み合わせに二人は目を見開いた。
「こ、こんにちは」
「にちわ」
ドロシーとトトは頭をさげた。一目見てドロシーは確信した。二人は若い頃の父と母だと。そして父が母の助手だったことも知ってしまった。
「迷子で私を訪ねたのはどうして?」
「え、えっと。ホビーの検索で、オズていう魔女がいると知って。それで」
「ああ。科学の魔女なんて言われているから、その記事がヒットしたのね。ごめんなさい。魔法は使えないのよ。でも、ドロイドに名前を付けるなんて好感が持てるから、少し休んでいって。私達はちょっと作業中だから」
「あ、あの。もしかしてワームホールが開いたんじゃ?」
ドロシーの言葉に、若き母ジュディと若き父パウムが驚きをみせた。
「どうしてそんなこと! まだどこにも知らせてないのに」
「ジュディ。もしかしてこの子たちは軍部のスパイなんじゃ」
「滅多なことを言うもんじゃないわ。こんな可愛らしいスパイが? それと。所長と呼びなさい」
二人のやりとりに、思わずドロシーはクスリと笑ってしまった。気付いた二人は顔を赤らめた。
「ねえ。どうしてワームホールの事を?」
個室に移動すると、改めて尋ねられたドロシーは、未来の学校見学で事故にあい飛ばされたのだと話した。そして来てからの事を全て話した。
「なるほど。突然時間軸だけが繋がって座標も滅茶苦茶に飛ばされたのね。ここに来られたのは奇跡だったわね」
「信じるのかい?」
「あなたは信じられないの。彼女の目。それにドロイドが証人よ?」
ジュディの言葉にパウムは鼻で息を吐くと身を引いた。
「確かに力にはなれるかもしれい。繋がった原因は究明中だけど、ワームホールは安定しているし地球がどうなれ月に移住する未来は変わらない。でもね。まだ誰も試していないのよ。危険が伴ってしまうわ」
「それなら大丈夫だと思います。一度通って来た道ですから!」
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