勇気の代償
「大丈夫。レイオンは味方よ」
「トトくん、さっきは悪かったね。よく頑張った。逃げよう」
レイオンはトトに近付くと膝をつき、目線を合わせて語り掛けた。
「レイ、オン」
「そう俺はレイオン。君たちを助けて、悪い奴らを退治するんだ」
トトが顔を明るくして「かっこいい」と言うと、レイオンは照れたように笑った。それを見てドロシーも笑った。
「ここにあるのは火薬だ。これを使って、ここを吹っ飛ばそう。4613ドロシーたちを頼む」
「わかった」
4613が返事をするとトトが驚いた。
「すごーい!」
トトは4613に駆け寄ると「僕はトト」と言った。
「私は
「それ! 型番だから名前にしましょ。そうだなー。ホビーはどう? あなたはホビー」
「私はホビー?」
「そうホビー」
「
「わーい、ホビー、ホビー」
トトがホビーの周りを跳ねまわった。
「脱出ルートを検索します。この施設は島の山間にあり、山の裏側にある滑走路まで搬入用のトンネルがあります」
「そこから脱出しましょ」
「レイオン。さっきの十字路を真っ直ぐ行けばトンネルです」
「わかったホビー。俺は爆破の準備が出来たら行くから、みんな早く!」
レイオンに促されドロシーたちは部屋を出た。
ホビーの先導でトンネルに辿り着いたドロシーたちの耳に銃声が届いた。そして怒声。
「レイオン!」
「ダメですドロシー」
駆け戻ろうとしたドロシーの腕をホビーが掴んだ。
「私はレイオンに頼まれました。このまま進みましょう。早くしないと爆発してしまいます」
「そんな……ダメよ一緒じゃないと」
「レイオンは勇気をもらったと言っていました。私にはドロシーとトトを脱出させることだけを優先するようにと」
「なんで! ホビーはそれでいいの?」
「私には……心がありません」
掴まれた腕を振り解こうとしていたドロシーは、ハッとして動きを止めた。
「ごめんさい。ホビー」
「いいんです。行きましょう」
トンネルを抜けると、そこは巨大な洞窟のようだった。貨物飛行機などが並び、滑走路が外まで伸びていた。
「出来るだけ離れましょう」
ホビーが近くにあったジープのエンジンをかけた。ドロシーとトトが乗り込み走り出すとトンネルから人影が飛び出してきた。
「レイオンだ!」
トトが叫びドロシーが振り向くと、レイオンがトンネルに向かって何かを投げ込むと爆炎があがった。
「ホビー止めて!」
「ダメです」
ホビーはアクセルをふかせた。レイオンを見るとジープに向かって手を振っていた。その手には起爆装置が握られていた。
バラバラになりそうなほどジープは車体を揺らして滑走路を爆走した。洞窟を抜けたところで地響きが聞こえ山から黒煙があがった。すると抜けてきた洞窟から、津波のように黒煙が迫って来た。ジープは何度も煙に飲まれそうになりながらも逃げ切ると、滑走路の端で停車した。
「ああ、レイオン」
「レイオン……」
泣き崩れるドロシーとトトを、ホビーは無表情に見守る事しかできなかった。すると舞い上がる黒煙の中から機械音が聞こえて来た。二人が顔を上げると、黒煙の一部がうねり中からヘリコプターが一台飛び出してきた。
旋回して不時着したヘリコプターから降りて来たレイオンに、二人は飛びついていった。
「やったな! 大成功だ」
三人は興奮して成果を称え合った。
「さて、俺はこれからミサイルを使い物にできなくして戦争を止めようと思う。二人はどうするんだ?」
「お姉ちゃん」
「トト」
危機から脱して冷静になった二人は、これからどうしたら良いのか心細さに襲われた。
「東の国に『オズ』という魔女がいるらしいです。あてがないのなら行ってみてはどうでしょう」
「そうね」
ホビーが検索してくれた情報しか頼みの綱はなかった。
「なら、この島からは近いし送っていくよ」
レイオンがヘリコプターの機体をバンバンと叩いた。
三人と一体を乗せたヘリコプターは一路、東の国を目指した。
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