尋問
「ここを使おう」
赤毛の兵士が示した頑丈そうな扉には『
煌々と照らされた部屋は、ドロシーの見たことのない物で溢れていた。
「ここはなに?」
「なにって。ビリヤード台にダーツ、ジュークボックスにカウンター。休憩室みたいなもんだ」
「へえー」
目を輝かせて部屋を眺めるドロシーに、赤毛の兵士は不思議そうに答えた。
「ドロイド!」
カウンター席の隅に、飾り物のようにたたずむ人型のドロイドがいた。
「この施設と一緒に捨てられたのね。可哀そうに」
「可哀そう? まあいい、とにかく話を聞こう。そこに座って。まずは、そうだな。俺はレイオンだ。君は?」
適当な椅子に向かい合わせで座ると、赤毛の兵士は礼儀正しく自分の名を言ってからドロシーに問いかけた。
「ドロシー」
「うん。じゃあドロシー。どうして、こんな所へ?」
レイオンの二つ目の問いに、私が知りたいと思いながらドロシーは強い口調で答えた。
「戦争を終わらせに」
レイオンは声を出して笑うと声を荒げた。
「俺達だって戦争を終わらせようとしているんだよ! もう手段は選んでいられない。状況からして君はスパイだ。だが俺達の邪魔をするのは間違っている。何かできると思わないが、このまま大人しくしていれば俺が帰れるようにしてやる」
最後の言葉は弱弱しいほど優しかった。
「見たでしょ、あの部屋。帰してもらえるとは思えません。それに私の話も信じてもらえない。だから協力してレイオンさん。私は神に遣わされたんです。ミサイルを止める為に」
ドロシーは、ここへ来てから見たものと自分の記憶から、ある答えを導き出していた。そしてレイオンに鎌をかけてみる事にした。
「おいおい。神の遣いだなんて信じられる訳がないだろ」
「じゃあ、私はどうやってここに? 私に力があるとでも?」
ドロシーは立ち上がると、レイオンに両手を広げて見せた。明らかにレイオンが動揺をみせた。
「そ、それは。なにか科学的な。そうだ
「科学的なことなら信じられるの?」
「あ、当たり前だろ」
「2119年から始まった戦争は
「そんはずはない。一度壊した世界を、俺達が、この国がひとつにして再建するんだ」
「分かってるんでしょ? 本当に世界を再建する気持ちがあるなら細菌兵器なんて使うはずがない」
レイオンは手段を選んでいられないと言った。ドロシーにはそれが自分への言い訳のように聞こえていた。
「君の時代は?」
「2153年。レイオンの軍服も写真で見たわ。あなたの国は
黙り込んだレイオンを、ドロシーは真っ直ぐに見つめたまま次の言葉を待った。
「俺は……戦争なんか反対だった。でも何ができる。何もできないまま、結局国の言いなりで兵士にもなった。敵と戦う勇気も、自国を止める勇気もない。俺に勇気があったなら、こんな計画なんて」
レイオンは俯いて拳を握っていた。その拳はわずかに震えているように見えた。
「私と一緒に、戦争を終わらせて地球を救ってレイオン。お願い」
レイオンにここに飛んできた経緯を全て話したドロシーは、レイオンの良心に最後の望みをかけた。
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