第23話 シャロリアと宿泊研修
私、エリム
今日は私が通うフロンティア学園の宿泊研修だ。
「じゃあイリス、行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ。ご主人様」
メイドのイリスとやり取りを交わして、フロンティア学園に行く。
で、いつもの流れはここまでにしておこう。
先日、私は文化祭にジェシカにキスされてしまった。
実際、あれが私のファーストキスだった。
照明が暗くなってからされたので生徒たちから噂にはならずに済んでくれたから、普段通りの学園生活を送れている。
キスをしてきた張本人、ジェシカも何事もなかったかの様に私に接してくる。
しかし、私はあのキスが頭から離れない。
初めてしたキス、とても忘れられない。
「おはよう。どうしたの?エリム」
「あ...ううんっ!なんでもないよ。おはよう」
考え事をしていたらジェシカに話しかけられた。
ジェシカがきっかけだなんて言いにくいので適当に誤魔化す。
「そう。今日の宿泊研修、頑張りましょう」
「うん..」
今日は宿泊研修なのでキスのことは一旦切り替えて頑張ろう。
「皆さん、行きますよ」
教師たちと共に研修先に行く。
行き先は魔法博物館、ここでガイドさんから魔法の誕生や今の魔法など、魔法に関してを学ぶ。
「はい。まず魔法の歴史から学びましょう。魔法は今から...」
私を含めた全生徒、ガイドさんの話を真剣に聞いている。
特に将来、魔法に関する仕事に就きたい生徒はかなり熱心に聞いている。
ガイドさんの話し方が上手なので聞いていて楽しいし、感心が持てる。
その後、感想文を書き、宿泊先の宿に行く。
「皆さん。ここに泊まりますよ。それぞれの部屋に移動してください」
部屋は既に決まっている。
私はシャロリアと同じ部屋だ。
「綺麗な部屋だ」
先に私が入室する。
「あれ?シャロリアは?」
シャロリアの気配がないので心配になる。
「荷物はある...」
シャロリアの荷物は既に部屋に置かれているのでこの部屋で合っているだろう。
「エリム」
「うわぁっ!ビックリしたよぉ!?」
後ろにシャロリアがいた。
全く気づかなかった。
「では、お食事に行きましょう」
「行こっか...」
シャロリアと2人で宿の食堂に行く。
「それでは皆さん、いただきます」
「いただきます」
教師の一言から全員、食べ始める。
「美味しいっ!」
料理の味は美味しい。
良い宿の食事なだけある。
「そうですね」
何故かシャロリアが私に近づきながら食事をしている。
近すぎないかな?
「ちょっとシャロリア!何してるのよ!」
私とシャロリアを見ていたジェシカが反応する。
「別に何も?」
「はぁ!?くっつきすぎよ!」
「どこがですか?」
まずい。シャロリアとジェシカが喧嘩になりそうだ。
「あの...落ち着きましょう?」
ここで教師が出てきてやんわりと止めてくれた。
「...ごめんなさい」
「すみません」
ジェシカとシャロリアはちゃんと謝った。
「なんだ騒がしい?」
この声はもしかして?
「ベルリス!?」
なんとベルリスが食堂にいた。
「どうしたの?」
「今日は出張なのだが、騎士の皆で宿に泊まりに来ている」
「だからね」
ベルリスの近くには騎士っぽい人たちが沢山いる。
「ごちそうさまでした」
生徒は全員、食事を食べ終える。
「それでは戻りましょうか。エリム」
「うん」
そして私たちは入浴を済ませて部屋に戻ってきた。
「今日は魔法のこと、色々知れたね」
「はい。宿泊研修、私の思い出に残りました」
私とシャロリアはパジャマ姿で雑談していた。
「じゃあもう寝よう。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
それぞれのベッドに入り、私は先に眠った。
で、何分か経ち。
「むにゃむにゃ...私、エリム...フロンティア学園の生徒...」
寝言を言いながら私は眠っていた。
「可愛い寝顔ですね...」
誰かの声が聞こえる。
夢だろうか?
それにしては現実に近い声な気がする。
「私はエリム...」
起きてみる。
すると。
「あ...起きてしまいましたか」
何故か私の寝ているベッドにシャロリアがいた。
「ごめん。何してるの?」
シャロリアは私の着ているパジャマのボタンに手を触れている。
「これは...そう。エリムが心配に...」
「いや、同じ部屋にいるでしょ?」
「はい...」
シャロリアが何を企んでいるかが、分からない。
「ちゃんと理由言ってくれないと先生に言いつけるよ?」
「それは...」
「理由ぐらい言ってよ?私、今のシャロリアが何したいのか全然分からない。相談とかあったら話聞くよ?」
まずシャロリアが何故、私のベッドにいたのかが、気になるのでそれを聞いてみる。
シャロリアはあまり大胆に行動に出るといったことがあまりないのでそういった意味でも気になるからだ。
「エリムは...相変わらずですね。誰にでも気にかけてくれる素敵なお方です」
「ありがとう...」
回答になってない気がするが、褒められたのでお礼を言っておく。
「理由は...」
シャロリアが私の方に近づいてくる。
「こうしたかったからです」
シャロリアが私の首を甘噛みしてくる。
「なっ!?シャロリア!?」
驚いてしまい、場から離れようとした。
が、力が抜けて動けない。
「どうしたの!?」
「エリム...あの方とのキスは嬉しかったですか?」
「何の話?」
「とぼけても無駄ですよ。文化祭の劇の...最後のキスの話に決まってるじゃないですか!」
バレてる。
そこで暗くなったし、生徒たちは誰もその話はしてなかったのでバレてないと思ってたが、シャロリアにはバレてた。
「いやあれは私の意思じゃなくてジェシカが勝手に...」
「えぇ。そうだと思いましたよ。エリムならああいったことは自分の意思からはしないでしょうからね?」
シャロリアは私がしそうなことやしなさそうなことを理解している。
なので、劇のキスは誤解されてないことだけはよく分かった。
「良かった...」
「はい...なので...」
シャロリアが息を飲み込んだ。
「エリム、貴方を貰います」
「え?」
シャロリアは真剣な眼差しでとんでもないことを言った。
「では...いつか貰うつもりでいましたが...いただきます...」
「ちょっ...シャ...」
私が口答えしようとしたらシャロリアは私の唇にキスをしてきた。
「シャロリア…」
「本当はファーストキスを貰いたかったですが...まぁ良いでしょう」
シャロリアは私の腕を掴んできた。
「何!?」
「これから楽しいことをしましょう…ね?」
「そんなことしてたら…先生にバレるよ?」
あまり騒ぎを起こすと先生が部屋に入ってくるかもしれない。
そう想定した私はシャロリアに警告した。
「大丈夫ですよ。アイテム、使ってますので。今は気配がなくなってますのでご安心を」
「アイテム?…あ!」
アイテム、確かにあった。
馴染みすぎて忘れていたが、ここは本来はゲームの世界。
気配がなくなるアイテムは確かに存在した。
だから先程、シャロリアは気配がなくなっていたのか。
「さぁ…エリム…楽しみましょう…私を彼女にしたくなるぐらいに…」
「シャロリアー!ちょっとぉ!」
そして次の日の朝
「おはようございます。エリム、朝ですよ」
鳥の鳴き声とシャロリアの声と共に私は起きる。
昨日、何があったのか記憶が全然ない。
「エリム…私を彼女にしたくなりましたか?」
「ごめん…考えさせて」
シャロリアは好きだ。
けれど、そういう好きなのか?
まだ考えていたい。
「…分かりました。誰が好きなのか…決まったら…教えてください」
「ちゃんと言うよ。自分の口でね」
私は一体誰が好きなのか?
答えはどこかで必ず出そう。
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