Demon Slayer-魔を喰らう銃-

 風が吹いている……。

 木漏れ日の中に吹き込んだ優しい吐息、それはとても気持ちが良く心地よい……。そんな中で木々の揺らめく音が耳の中でリズムを刻み、読んだページをめくらせる――


「そんなところでなぁにしてるの?」


 そこへ声が聞こえてくる……。


「別に何でもない……」

「分かった。また、お父さんとけんかしたんでしょ?」

「し、してないし!」

「ふふ、うそおっしゃい……顔に出てるわよ」


 その人は笑顔だった。朗らかに喋るその姿はどこか懐かしく、とても心が落ち着く……。


「そんなこと……」

「ねぇ、新しいことを知ろうとすることは大事だけど今あるものを知ることも大切なんだよ」

「……」

「いい? おかなくちゃいけない。これは魔術においてもすごく大切なの」

「そんなこと……分かってる……」

「――ふふ……だからね、あなたにはいろいろなことを知っておいてほしいの」


 ああ、分かっているとも。ゼロから何かを生み出すことがいかに難しいかを……。

 そのためにオレは――


 ♤♤♤


「んん……」


 目が覚めると見知らぬ天井が見える……。ゆっくりと体を起こすと額に手を添える。


「ここは……」


 頭がぼーっとするなか、ここまでの経緯を思い出す。

 確か、オレはあの迷宮のような場所にいて……そこでアズマと会って……。

 そうだ、あの後なんとかヴェルメリアとあそこから脱出して、それで――


「目を覚ましたようね」


 するとそこへ声が入る……。


「あんたは……?」


 目の前にいる藤色の髪の女にアーロは首をかしげる。


「私は……まぁ、あなたを介抱した人間よ。と言ってもここまで運んで手当てしただけだけど」

「そういえば……知り合いが一人、一緒にいたんだが……」

「知り合い? あぁ……あの子だったら下の店で仕事中よ」

「店……? ひょっとしてここは……」

「ええ、ここはコーラル・ガーデンの中よ。話があるから準備ができたら降りてきなさい」


 そう一言伝え、女は部屋から去っていった。

 話? 一体何なのだろうか……。

 そう疑問を感じつつ、起こした体をベッドから出すとドアに手をかける。

 ――ガチャ!


「あ、おにぃさん」


 下に降りるとお馴染みの顔が見える……。

 けれど店は彼女以外、他に誰もいない様子だった……。


「よっ」

「具合の方はどう?」

「ああ、おかげさまでなんとか……」

「よかった……」

「それより、話があるって聞いたけど?」

「誰から……?」

「もちろん、私だよ」


 とそこへ横から声が入る。


「ししょ~」


 彼女が振り返ると、そこにはルーファスがいて、その隣にはさっきの女がいた。


「ラベンタ!」

「店番はお疲れ様。どう? 店番の方は……」

「もちろん! ばっちしだよ。それでししょー、おにぃさんに話って?」

「そうそう、そのことなんだけどねぇ……」

 

 そう言うとアーロの方に顔を向けた。

 するとそこには複雑そうな表情があり、そんな彼にゆっくりと頷いた。


「どうやら知ったようだね」

「……」

「心境のほどはいかがかな……?」

「正直……複雑な気分です。だけど一つだけはっきりしたことがあります……」

「ほう……それは何かな?」

「あいつは、何か良からぬことを企んでいるということです。だからオレはアズマを……知り合いを追います。追って止めます……」

「……なるほど、だが君には奴らに対抗する力がない……。そこはどうする気だい?」

「確かに……オレには対抗する力はありません。魔術が使えてもあくまでも多少程度にとどまります。だから……を売ってほしいです……」

「……分かってるかい? 並みの人間ではそうそうに扱えないってことを……」


 ――そもそも戦闘用の魔装具というのは、武具に特殊な能力を持った魔石を組み込んで、その力を引き出すということ。

 つまり、ある程度の訓練を積まないと力に振り回されたり、最悪の場合……使用者の体に支障をきたしてしまう可能性だってある。


「それでも買うというのかい……?」

「……」


 それは最後の砦だった……。今のうちだったらまだ引き返せる……。

 だが彼の顔はそんな躊躇は一切なく、一貫して覚悟が決まった様子でいた。


「……それでもお願いします」

「分かった……。じゃあ、少し待ってもらえるか?」

「え? はい……」

「ラベンタ、を持ってきてくれるかい?」

「ええ、分かったわ……」


 するとラベンタはすぐに扉を開けてその場から離れる……。

 数分後、再び戻ってくると何やら分厚そうな箱が腕にあった。その箱は重厚そうな見た目をしており、さながら何かを厳重に保管しているような感じだった。


「箱ぉ? ねぇししょ~、こんなものうちにあったけ?」

「あったさぁ。だけど保管場所はメリアの知らない場所だったけどね。まぁ、何はともあれ……開けてみてくれ」


 ゴクリ……。

 そう息を呑み、アーロは箱に手を付けてゆっくりと開けてみる……。

 中には銃が一丁入っていた。その見た目はシュッとしており、丸みの帯びたグリップの先にはシリンダーがあったが、とても魔石が組み込まれているとは思えない……。


「これは……?」

「これは対戦闘用小型魔装銃器……名を【エーデル・シュヴァルツ】」


 ――全長355mm、重量1885g……。

 回転式拳銃をベースに使用者の魔力を弾として変換できるように魔術回路を形成したことで、実弾を必要としない状態で撃つことが可能。

 また、シリンダー部には質量と出力を操作することができる魔石が搭載されている。これにより、威力と出力形態が操作可能となっている。


「なるほど……」

「へぇ~、でもししょー、なんでシリンダーなの?」

「まぁ、単純に組み込みやすいからだろう……。自動小銃型だと組み込むのに一苦労だそうだ」

「……そうだ?」

「実はこれの制作者はラベンタなのだ」

「えぇ! そうなの!?」


 彼の口から出た意外な発言にヴェルメリアは口を開き、驚いた様子を見せる。すると、それに便乗したようにラベンタは顔を軽く頷かせる……。 


「彼の言う通りよ。まぁ、私は頼まれただけだけどね」

「じゃあさ! あのシリンダーの部分はどうやってやったの? それに……」

「こらこら、いつもの悪い癖が出てるわよ。今は違うでしょ?」

「ちぇ~」


 と残念そうに引き下がる……。

 そんな彼女をよそにアーロは銃を見つめ、慎重そうな表情でルーファスの顔を見る。


「あの……それで代金の方は……?」

「ああとそれなんだけど、そちらは結構だ」

「え?」

「その代わり、おまえさんにはラベンタとあることをしてもらいたくてね」

「あること……?」


 何やら胡散臭そうな言い回しに疑問が浮かぶ……。果たして彼がやってもらいたい”あること”とは一体何なのだろうか……?

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