Is the lie true? ①
――それは自分に聞いてみた方が早いんじゃないかい?
意味が分からない……。
人々で賑わう街中で一人、アーロはあの時ルーファスが言っていた言葉について思い浮かべていた。
大体自分に聞くとはどういうことなんだ? そんなレスポンスアンドコール的なことやれと言われても無理だ……。
「ぐぅ……分からん……」
考えれば考えるほど謎が深まっていくばかりだ……。
それより、悔しい……。正直言って、知りたいことを知れないということは自分にとってこれが何より嫌なことだ。
なんともじれったい……。
「……今度あそこに行ったら必ず聞き出してやる!」
それかいっそのこと自分から調べに行くか……?
「ん……?」
そんな時、路地の隙間からチラッと光が見える。不思議に思い、のぞいてみると何か奥へと続く道があり、アーロは首を傾けつつ足を進める……。
――スタスタスタ……。
建物と建物との間にある入り組んだ道が続いていく。しかし、ただの路地裏にしては妙に薄暗くて寒気がするような感覚があった……。それに加え、奥に進むにつれて暗さが増しているような気がし、さながらトンネルの中にいるような気分を覚える。
「一体どこまで続くんだ……?」
見渡す限りに続く同じような背景に疑問を抱くなか、そこへ微かな光が差し込む。
やっとか……
そう安堵の言葉をこぼす――
「……」
……どういうことだ……。
しかし、出た先は広い場所ではあるものの、さっきほどと同じような背景が続いており、変な不気味さを感じさせる。
「おかしい……」
この異常な光景に違和感を覚える……。
普通、こんな道……すぐに通り抜けてしまう。だが、これはそんなことはなくむしろ逆だ……。何か、とても入り組んだ道に迷い込んだような……そう、まるで迷宮のような……。
――なんだ……? とても嫌な予感がする……。
そう思い、足が後ろへと下がる……。
……ピタっ!
そんな何か硬い気配がし、後ろを向くと目の前には大きな壁が立ちはだかっていた。
「なんだこれ!?」
なんでこんなところに壁が……。それより、さっきまでそこは道だったはずだ。なのになぜ……?
そう疑問を抱く彼であったが、そこへグルルルル……と低い唸り声が聞こえ、振り返る……。
「おい……こんなときに……」
鋭く赤い眼光を向け、1匹の魔獣が静かに近づいてくる……。アーロは距離を取りながらゆっくりと動く。しかし、足の側面が小石に当たったことを瞬間、獰猛な爪が――襲い掛かる。
体は大胆にも思い切って地面につく。そしてそこからすぐに立ち上がり、道のある方へ走り出していく……。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ホント……運がない……。まさかまた見ることになるとは……。
入り組んだ道をがむしゃらに走りながら、自身の運のなさを呪ってしまう。しかし、今さらそれを後悔したところでどうにもならない。ただ必死に逃げることに集中する。
しかし、体力的にも筋力的にも限界が近い……。
「くっ……! 一体どうしたら……」
そう思考を重ねる中、目の前に大きな壁が立ちはだかり、足が止まる……。さらに不運なことに魔獣との距離があと数十メートルまで迫っており、完全に袋のネズミ状態だ……。
極限の状況下……魔獣が大きな口を開けて、飛び掛かってくる……。
――ザシュ……!
だがその時、遠方から赤い刃が魔獣の頭部を貫いてかっさらい、壁に強く打ち付ける。
「よかった、間に合ったみたい」
そこへ覚えのある声が聞こえ、アーロの顔はその方へと向く。
「ヴェルメリア」
「やほ~」
「どうしてここに……?」
「おにぃさんのことが心配だったから追いかけてきたんだよ」
「心配……? 何が?」
「も~やだなぁ~……分かってるくせに」
ツンツンとからかうように軽く小突く彼女に対し、顔が反れる。
「べ、別にいいだろ……!」
「そんなこと言ってぇ……顔に出てるよ」
図星を突かれたのかアーロの眉が一瞬、ピクリと動く……。その様子を見て、彼女の表情はにやけつく。
「ま、別にいいけど……。それより一人でこんな所、危ないよ」
「だけど、ジッとなんてしてられない……」
「なんで?」
「そんなの悔しいからに決まってるだろ」
――正直、物書きをする身としては欲しい情報が手に入らないのが一番つらいし、なにより屈辱だ。だから何がなんでも手に入れたい……。そのためには自分から調べに行ったりすることだってある。
「だからこうしてここにいる……」
まぁ、今回は偶然誘われただけだけど……。
「ぷふっ……あははっ」
「なんだよ!」
「……だっておにぃさん子供みたいだもん」
「なっ! そっちだって魔石に目を光らせていただろ!」
「ふふ……おにぃさんって意外と負けず嫌いなんだね」
「……悪いか?」
「ううん、そんなことない……。でも一人で危険なことは感心しないなぁ」
「言っただろ。情報を得るためには自分から調べに行くこともあるって」
今日は偶然たまたまかもしれないけど、こうして欲しい情報の手がかりに近づいてきてるわけだし……。何よりこの機会を逃したくない。
「だから引き下がるわけには……」
突如彼の言葉が止まり、目を大きく見開く……。
「……」
「……おにぃさん?」
何か亡霊を見たような様子の彼に対し、ヴェルメリアは首を傾ける。
すると……
「あっ! ねぇ、ちょっと……」
突如、走り出すアーロに驚きを隠せず、後を追う……。
「はぁ……はぁ……なんで、あそこに……」
彼は思い出す……あの講堂での出来事を……。自身を庇い、死んだ彼のことを……。
あの時、アズマが死ぬところを確実にこの目で見た……。だがさっきこちらを見る人影を見た時……薄暗く、遠目でよく見えなかった。だが一瞬、一部の顔が見えた時……彼の面影がそこにはあった……。
確信はなかった。だが、自身の直感が伝えている……。あの者を追えと……。
「はぁ……はぁ……はぁ……どこへいった……?」
――だが途中で見失い、周囲を見渡す……。だがそこは何もなく、ただ静寂が続くだけである……。
くそ……やはりさっきのは見間違いか……?
そんな疑問が頭をよぎる。しかし、奥の隙間から何かが見え、その方向へ進む……。
「な、なんだこれは……!?」
すると視界に入ったものに対し、アーロは驚き、立ち止まる。
そこにあったのは血のように赤黒く、魔石のような水晶の見た目を持った大きな塊だった。
「魔石……? いや、これは……」
しかし、何か既視感があった……。いや、なぜここに……というべきだろうか……。
「こいつは博士が持っていた……」
何の因果か……あの騒動を引き起こしたものが再び自身の目の前に現れるなんて思いもよらなかった……。正直、あんな体験は二度とごめんこうむりたいところではある。だが、これが欲しがっている情報に関わっているのも事実である。
虎穴に入れずんば虎子を得ず……アーロは意を決して近づき、触れてみる……。
「おっと、そいつに触れるんじゃない」
しかし背後から聞こえた声に手が止まる。
「……」
後ろを振り向いた瞬間、彼は目を大きく見開いた……。
そこにいたのはなんと、死んだはずのアズマの姿だった……。
「――アズマなのか……!?」
「数時間ぶりだな」
「おまえ、なんで……。オレはこの目で確かに……」
動揺するアーロにアズマはゆっくりと歩き、近づく……。
「ああ、死んださぁ……。だが中身が少し違う……」
「……どういうことだ?」
「ふっ……」
するとスッと彼の手がアーロに伸びる。
――ズバッ……!!
「なんだ……せっかくの再会を邪魔するのか?」
斬り飛された自身の腕を横目に冷静に声を出すアズマ。彼の目線の先には剣を握るヴェルメリアの姿があり、場は三つどもえのような状況へとなる……。
「再会……? 殺すの間違いでしょ? やっと追いついたと思ったら、まさかこんなことになってるなんてね……」
「ヴェルメリア……何を言っている? アズマは仕事仲間で……」
「おにぃさんそれは違うよ……。あいつは化物なんだよ……」
「化物……? ははっ、あいつが……? 何を言って……」
彼女の口から出た言葉に動揺が走る……。目の前にいる
「うそだ……そんなこと……。なぁ! アズマ、違うと言ってくれ!!」
信じたくはなかった……。だって今まで仕事をしてきた仲だったから……。
しかし、彼は平然としており、欠損した腕が再生し始める。そんな中、向けられた刃が彼の喉元に目掛けて伸びる。
だが首を逸らして躱され、逆にカウンターで出されたフックが二人を後ろへ飛ばす。
「あぁ……」
「悪いなアーロ……そういうことだ」
「アズマ……あぐっ……!」
「それに俺は元々――」
その時、彼女の持っていた剣が切っ先を向けて飛んでくる。さらにそこへヴェルメリアも現れ、柄をキャッチすると事前に持っていた刃を振るう。だがこれも当たらず、後ろに下がられる。しかし彼女もそれに応じて距離を詰め、連続で斬り込む――。
「二振りの剣による高速剣術……見事だ。だが……」
「やぁぁっ!!」
彼女が二振りを下ろそうとした瞬間、それは唐突に消えた……。
「えっ!?」
「時間切れだ」
「なんで……急に……?」
しかし、そんな疑問を抱くのも束の間……彼女の目の前には迫りくる拳があり、後ろへと下がる。
自身の手を眺め、ヴェルメリアは首を傾ける。
なんで急に剣が消えて……。何か魔術? でもその流れを感じなかった。魔障を使ったわけでもない。じゃあなんで……?
しかし、そこへアズマが踏み込んで距離を縮めてくる。ヴェルメリアは急ぎ、構えて再度出そうとするが反応がなく、仕方なく人差し指を前に出して魔術に切り替える。だがその手は払われ、頬に2発のパンチが入ると蹴り飛ばされて彼女の体は勢いよく地面を転がっていく。
「ヴェルメリア!」
「うぅ……」
「さて、どうするアーロ? このままだと彼女が殺されてしまうぞ」
そう煽るように言い立てるアズマ……。その足はゆっくりと彼女に近づいていく……。
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