【コミカライズ記念SS】希《のぞみ》②
見上げるほど高い天井に描かれた二柱の
その二柱が
彼らが首を垂れる先は堂の最奥。その一段高い場所に設えられた玉座に、私とよく似た華奢な青年の姿がある。
その眼前に進み出て、
「
「誓約、たしかに承った」
ついに翠山国の開国が
――よかった……。
その様子を、私は堂の上座に近い場所で感慨深く見守っていた。
私の翠山国への降嫁は、この開国を成立させるためのもの。両国の橋渡しが私に課せられた責務だから、ひとまず開国が滞りなく行われたことに
――でも、まだまだ私にもやるべきことはあるわ。
国交が開かれたのだから、今後は両国間に様々なやり取りが生じる。その度に思わぬ衝突やすれ違いが起こることもあるだろう。
――帝国の皇妹であり、翠山の王太子妃でもある私だからこそ、二つの国の仲を取り持つことができるはず。
そう一人で奮起して、ひとまずこの直後の自分の務めについて考える。
――さぁ、このあとは宴。熹李と星狼殿下、二人が少しでも心を開いて言葉を交わせるように、私が頑張らなければ!
*
意気込んで
宴の主催は大黄帝国側と聞いていたので、
ところが実際は、私と星狼殿下はごく小さな
(これなら心配はいらなかったわね)
円卓に隣り合う二人の姿に、私はほっと胸を
喜んでいるうちに、料理が運ばれてきた。
続いて
「うわぁ、美味しそう!」
思わず感嘆の言葉を漏らしてしまう。そんな私に熹李は優しく微笑んだ。
「やっと桃英らしい表情が見れたなぁ」
「あっ! 申し訳ございません、陛下の面前で無作法を……」
身内での宴席という
「やめてよ桃英。この時間くらいは僕たちは双子の熹李と桃英でいよう。そのためにあえてささやかな宴席にとどめたんだから」
熹李は星狼殿下にもにっこり笑ってみせた。
「星狼も僕の義弟なんだから、そんな風に肩に力を入れずくつろいでほしいな。僕を兄だと慕ってくれて構わないんだよ」
「おそれいります。本日ばかりはご下命に甘えて
星狼殿下は恐縮して頭を下げたが、
熹李の視線と、星狼殿下の視線が重なる。
(あれ?)
私は首を傾げた。
二人とも満面の笑みなのに、視線がぶつかり合うと、なぜかそこに火花が散っているように見える。
(なんでだろう? 気のせいかな)
目をこすってもう一度二人を見比べると、どちらもいつも通りの穏和な表情で、やはり私の勘違いのようだった。
「どうしたの、桃英? 目が痛い?」
過保護な熹李が私の顔をのぞきこむ。
「あ、ごめん、なんでもないの」
「そう? それならいいんだけど。ほら、小さい頃、目の中に虫が入ったって大騒ぎしたことあったじゃない? またその時みたいにとんでもないことになるかと思って」
「やだ、そんな子どもの頃の話、蒸し返さないでよっ!」
私は赤面した。それはまだ後宮で母様と暮らしていた、ほんの幼い時の出来事だ。
「懐かしいね。あの時は混乱した桃英があたり構わず暴れるものだから、
「だからもうやめてってば!」
私は熹李の口をふさいだ。そんな恥ずかしい失態を、なにもこんなところでばらさなくてもいいじゃない!
宴席についているのは私たち三人だけだけど、周囲には侍女や衛士がたくさん控えている。もちろん涼様や劉将軍、温侍中だっている。
何より私の失態を、わざわざ殿下に聞かせなくても!
ごめんごめん、と私の手をほどきながら熹李は笑う。
「別にそんな恥ずかしがらなくても。幼少期の可愛い思い出じゃない。星狼も知りたいでしょう?
なぜか不敵に笑った熹李の視線の先で、星狼殿下は片方の口角を上げ挑戦的な笑みを浮かべている。
「そうですね。でも桃英様が恥ずかしがっていらっしゃるので、無理強いは致しません。何より」
星狼殿下は心持ち
「私は
(あ、あれ?)
私はさっきより強く目をこすった。
(やっぱり星狼殿下と熹李の間に、火花が散っている、ような……)
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