神話×機械×階級社会が美しく噛み合った冒険譚
- ★★★ Excellent!!!
まず冒頭の神話パートが秀逸です。
ドラゴンと人、人と神、慢心と罰、協調と再生――この循環が世界観の“背骨”になっていて、物語が進むほどに重みを増していきます。「神話が終わり、機械が発達した世界」という一文が、最後まで裏切られません。
その神話が忘れ去られた後の世界として描かれるフォール・ダウン/フォールミーの描写は圧巻です。
断崖にしがみつく都市、雲海、鉱石、鉄骨、ワイヤー、昇降機。視覚的で、音と匂いまで伝わってくるようでした。特に「ここでは全てが、フォール・ダウンの断崖絶壁にしがみついて生きている」という一文は、この世界を象徴しています。
この物語の核は明確です。
神話から科学へ
ドラゴンから機械へ
支配される者と支配する者
使命と自由の葛藤
そして何より、
「空への憧れを忘れるな」
というメッセージが、ロンとハナの出会いによって再び息を吹き返していく構造が美しい。
硬いパンを分け合う場面は象徴的で、
神話でも英雄譚でもない、生き延びるためのささやかな優しさが、この作品を温かくしています。