第30話 彼方の地、ニ○三農耕地の戦い 弐

 東の国で不穏な活動をしていた帝国兵達。

 彼等は素行が悪く、撤退をする前に近隣の村を襲撃して、戦利品を持ち帰ろうとしていた。


 双眼鏡が、舐めるように機械人形の村を観察していく。


 「入口はバリケードが作られた谷間の道だけ…、土嚢に、塹壕が数ヶ所…。猟銃やシャベルで武装している…。アイツ等迎え撃つ気ですぜ」


 「ヘンッ。ド田舎の機械人形かよ。我ら、誇り高き帝国兵の足もとにも及ばぬは………。なんちゃってな! 俺たちゃ、はみ出し者の集まり。いつものように、根こそぎい頂くぞ!」


 『ヘッヘッヘッヘッヘッ』


 「オイ! コレを見てみろ!」


 リーダー格の男が、手渡された双眼鏡をのぞき込む。

 そこには、寺院にもたれかかる飛行船フライハイトが映っていた。


 「ヘッヘッヘッヘッヘッ」


 我先に村へ攻め込んでいく帝国兵達。


 寺院で本陣を構える村長。

 持っていたトランシーバーから、ノイズ混じりのロンの声が聞こえてきた。


 『ガーーー 来た…2人…、いや…4人だ! 油断するな、もっといたはずだ! ガーーー』


 「うむ! 全員、戦闘準備〜〜〜!」


 『了解!』


 村長は、塹壕や土嚢に身を潜めている村人達へ、戦闘開始の合図を送る。


 『ババババン』


 物陰を伝いながら帝国兵が2人、バリケードへにじり寄ってきた。

 合図をかわし、同時に手榴弾を放り投げる。


 『ドンッドーーーン』


 バリケードが破壊された。


 帝国兵は、2人同時に突撃を始める。

 どちらに照準を向ければいいか分からないベルマン。ゴロツキの集まりと言えど、やはり戦いの練度は帝国兵に分があるようだ。


 『ババババン』


 2人から攻撃を受けるベルマンは、反撃できずに土嚢に身を伏せた。


 『ドサッ』


 さっそく敵の侵入をゆるすかに思えたが、突然片方の兵士の姿が消えた。

 この機に乗じて、もう片方の兵士に攻撃を仕掛けるベルマン。


 『ズバババババン』


 ベルマンが放つガトリングガンの猛烈な火力の前に、帝国兵の第一陣は撃ちやられた。


 土嚢の側にある塹壕から、ポンコがベルマンに話しかける。


 「あら…、素敵。昔見た帝国ムービーの、俳優アーノルド・ストロンガーみたいだ〜〜〜」


 「マダム、何故でしょうか…。突然、一人いなくなりました!?」


 「あそこには家畜の肥溜めがあって、畑のええ肥料になるだよ〜」


 突然消えたもう一人の兵士は、深くぬかるんだ肥溜めの底で家畜の糞尿にまみれて悶絶していた。


 「チッ、情けね〜」


 舌打ちをしながら、双眼鏡をのぞき込むリーダー格の男。


 「ワーカーが到着しました!」


 『ガシャン ガシャン ガシャン』


 大きな大砲を背負い、重厚な鋼鉄で覆われた二足歩行の重機が現れた。


 「おっせ〜ぞ! 大砲に玉を込めろ! アノ犬野郎に、一泡吹かせてやれ!」


 敵を撃退したベルマンに、村人から賞賛の声が上がり注目を集めていた。


 「トンガリお耳の紳士さん、その調子だ〜〜〜! 全員やっつけてけろ〜〜〜」


 「かしこまりました!」


 『ドンッ ヒュルルルルル〜〜〜』


 『ドカーーーン』


 突然、土嚢が吹き飛んだ。

 ベルマンは吹き飛ばされ、再起動が始まってしまった。


 一斉に攻撃を仕掛ける帝国兵達は、弾丸を雨のように撒き散らしてくる。


 『ババババババババンッ』


 「ひぃ〜〜〜、もうダメだ〜〜〜」


 帝国兵の火力の前に、村人達の脳裏に降伏がよぎる。


 帝国兵は、気絶するベルマンに大砲の照準を合わせようとしている。


 「ヘッヘッヘッヘッヘッ………、俺達をコケにしやがって。跡形もなく消えろ!」


 装填手が大砲に、砲弾を込め終える。

 照準の真ん中に、倒れたベルマンが映った。


 「やめろーーー!」


 そこへ、物凄い速さでコルルが舞い降りてきた。


 『ガシャコーーーン』


 コルルが寺院の修理に使う大木を、空から落としワーカーにめがけてぶつけたのだ。

 ワーカーが激しく転倒する。


 「コルル! 炎だーーー!」


 『アギャーーー ボォォォ〜〜〜』


 さらに随伴していた帝国兵達を、火だるまにしていく。


 体にまとわりついた炎を消すために、地面に転げ回る帝国兵達を、塹壕から飛び出してきた村人が農機具でポカポカ殴り始めた。


 「どうします、逃げますか?」


 「バカヤロ〜、手ぶらで帰れるかよ。あの飛行船をいただくぞ!」


 ワーカーに乗ったリーダー格の男と、もう一人の兵士は、まだ降参するつもりは無いようだ。


 『ギッギッギッギ〜 ガシャン ガシャン』


 ワーカーが立ち上がり、寺院の方へ動き出した。


 「おっか〜、大変だ〜。デカい機械が、寺院の方へ向かって走っていくだ!」


 「あんれま〜」


 コルルの炎にも、びくともしないワーカー。ロンが空から、散弾銃で攻撃を仕掛ける。


 『バンッ バンッ  ガシャン バンッ バンッ』


 しかし、散弾銃の攻撃でも、ワーカーの装甲をつらぬくことができない。

 寺院の前に設置した本陣も、ワーカーが腕を一振りしただけで破壊され、無数のトランシーバーと村長が薙ぎ払われた。


 ワーカーの強さに、抗うすべが無い。皆、そう思っていた。

 それでもタンタは諦めずに、シャベル片手にワーカーに飛びかかっていった。

 振り払おうとするワーカーに、必死でしがみつくタンタ。

 だが、あっけなくワーカーの腕に捕まってしまった。


 「ん〜なぁ〜〜〜!!」


 徐々に握りしめられるタンタ。もちろん帝国兵達は、悶絶するタンタをモニターで眺めながら楽しんでいる。


 「やめてけろ〜〜〜!」


 ポンコの目の前で、悶絶するタンタ。既に電源が落ちかけ、機能が停止しようとしている。


 「ヤ〜メ〜ロ〜〜〜!」


 『ブロロロ〜〜〜ン』


 そこへ、トラックを運転するロジャーが、物凄い速さでワーカーに突撃していった。


 『ガッシャーーーン』


 転倒するワーカー。腕の拘束が解かれ、タンタが放り投げられた。

 激しく激突し大破したトラックの運転席では、ロジャーがハンドルに頭をぶつけて血を流している。ロジャーは、振るえる拳を窓から突き出し、親指を高高く掲げた。



 ちょうどその頃、

 墜落した帝国軍の輸送船の格納庫が内部から破壊され、巨大な何かが船体を食い破り抜け出してきた。


 「フッフッフッフッフッ………、コレは凄い! 帝国の技術と、古の宝石の力………。んっ!?」


 薄暗いコクピットで、鹿の角を付けた男がほくそ笑んでいる。

 カメラの画像が、遥か遠くの機械村ニ○三農耕地を映し出した。


 「どれ程の力か、試させてもらおうか………」


 カメラの画像に、トラックと激突したワーカーが映っている。

 黄色いカーソルが重なると、赤く点灯した。


 飛行船を食い破って出できた巨大な何かは、機械村の方角を向き、口を大きく開いた。


 『ピカッ バシューーーッ』


 それは、落雷の如く一瞬の事だった。


 『ドッカ〜〜〜ン』


 素行の悪い帝国兵達を乗せたワーカーが、突然大爆発を起こした。



 『勝った!』


 機械村の者達は、皆そう思ったにちがいない。

 ロジャーが決死の覚悟でぶつけたトラックのおかげで、ワーカーの砲弾が誘爆して爆発したのだと………。



 薄暗いコクピットで、謎の男が不気味に笑う………。


 「フッフッフッフッフッ………、ハッハッハッハッハッ………。素晴らしい………、素晴らしいぞ〜〜〜!! コレなら倒せる………、倒せるぞ〜〜〜!!」


 

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