第29話 彼方の地、ニ○三農耕地の戦い 壱

 コルルが村の鶏を食べてしまった為、猪狩りを頼まれたロン。その場の流れでついてきたスピカと、ぶっきらぼうなクマ型機械人形のクマさんに連れられ、東の国の山奥を歩いていた。


 「ところが〜、クマさんが〜、あとから〜、ついて〜くる〜♪」


 クマさんの肩に乗り、楽しそうに歌うスピカ。

 その様子を、茂みの中からうかがう素行の悪そうな帝国兵の男達がいた。


 「小便くせえガキと、武装した男、あと…デケえ熊みて〜な機械人形。コイツが厄介だな…」


 「ワーカーの大砲で一撃だろ?」


 「バカヤロ〜、無駄玉使うんじゃね〜。アイツ等を脅して後をつけるんだ。そして、村の場所を見つけるんだよ。あとは、根こそぎいただく」


 『ヘッヘッヘッヘッ』


 リーダー格のような男が仲間に指示を出すと、男達は不気味にニヤニヤ笑い出した。

 そして我先に機関銃を構え、ロン達の前にとびだしていく。


 「お嬢ちゃん、歌がお上手だね〜」


 突然、武装した帝国兵達が馴れ馴れしく現れたので、ロンは警戒し散弾銃を構えた。


 「オイオイ、ボウズ。テメ〜は、数を数えれね〜のか? 銃を下ろせ」


 「くっ………」


 帝国兵達が、ロンに機関銃を向けた。そして、リーダー格の男が、ロンに無駄なことだと告げる。


 機械人形のクマさんは、まるで降伏するかのように両手を上げた。


 「ほぉ〜。しっかり飼いならされてるじゃね〜か」


 そのままスピカをつかみ、ロンにやさしく抱き渡した。


 『グガーーーッ!』


 突然大きな声を上げ、帝国兵達の中へ突撃していくクマさん。

 完全に不意をつかれ、次々に投げ飛ばされていく帝国兵達。


 「マジかよ〜〜〜。何で次から次へと、問題が起きるんだよ〜〜〜」


 クマさんがつくった隙に、スピカを抱きかかえて逃げ出すロン。


 『バババン ババン バババン』


 混乱し機関銃を乱射する帝国兵達。

 やがて、逃げるロンの背後で鳴り響いていた銃声が止んだ。


 「あぁ〜〜〜。クマさ〜〜〜ん」


 険しい山道を駆け下りるロン。

 再び銃声が追ってくる。


 『バン バン バン』


 「うわっ!」


 ロンの足に弾丸がかすめ、血が飛び散った。


 『ドサッ ドテドテ』


 スピカを抱きかかえたまま、ロンは転倒してしまった。

 ロンの怪我は特に酷くはないが、気が動転して上手く立ち上がれないでいる。

 (次の銃声で、撃たれる)ロンは諦めにも似た覚悟をし、身をていしてスピカを抱き寄せる。


 『ズドドドドドドーーーー!』


 地響きと共に、突然宙に浮いたロン。

 クマさんがロンの上着を咥え、四つ足になり物凄い勢いで山道を駆け下りていたのだ。


 「待てっ! 撃つな! 無駄玉を使うなと、言っただろう! しぶとい野郎だ。先発隊は、ガキどもを追うぞ。後発隊は、ワーカーを出せ」


 『ガシャン ガシャン』


 『ヘッヘッヘッヘッヘッ』


 リーダー格の男の背後に、巨大な機械の影が立ち上がった。



 四つ足で大地を蹴るクマさん。しかし、帝国兵に撃たれたところから、オイルが吹き出ている。

 クマさんは、ロンとスピカを放り投げた。


 『ガサッ ゴロゴロ ドタドタ』


 「イッテテ…。クマさん、どうしたんだ!?」


 ロン達を放り投げ、背を向けるクマさん。帝国兵を迎え撃ち、しんがりをつとめようというのだろうか。

 大きな後ろ姿にクマさんの意図を察したロンは、スピカを抱きかかえ村の方へ駆け出していった。


 「クマさん、置いていったらヤダーーー!」


 『ダダダダダンッ………ダダダンッ………』



 『ダンッ………』



 泥だらけになりながらスピカを抱きかかえて、ロンが村に駆け込んできた。

 小さな村では直ぐに情報が行き渡り、さっそく会議が始まった。

 イノシシ頭の機械村長がやってくる頃には、クマさんのかたきを討とうと皆興奮し、目のセンサーが赤く輝いていた。


 「野蛮な帝国兵が、攻めてくるだ! オラ達で、くいとめるだよ!」


 「んだ、んだ、村長! クマの仇をとるだ!」


 「まあ待て…、まだクマが倒されたと決まったわけではね〜。それにワシ等には、武器がね〜だよ」


 村長の言葉に、タンタが声を張り上げて叫んだ。


 「ロン達に、助っ人になってもらうだ! 竜には、空から敵の様子を探ってもらえばええ。そして、トンガリお耳のガトリング砲で蹴散らすだ!」


 驚き困惑するロン達。


 「んだ! やってやるだーーー!」


 『んだーーー!』


 スピカはやる気満々で、彼等の声を真似て一緒に叫んだ。

 なし崩し的に一緒に戦うことが決まってしまい、作戦会議がはじまる。


 「コホンっ! これより、ニ○三農耕地防衛作戦を始めるだ!」


 「ちげ〜だよ! クマの仇討ちだ〜〜〜!」


 『んだ〜〜〜!』


 皆が村長にヤジを飛ばすが、村長も顔がオーバーヒートしそうになりながら怒鳴り皆をしずめた。


 「勝手にクマを殺すでねーーー! コホンっ! あらためて始めるだよ。ここニ○三農耕地は、後方を雲河の断崖絶壁、そして切り立つ山々に囲まれた自然の要塞。村への出入りは、あの谷の出入り口しかね〜。あそこにバリケードを置き、侵入を防ぐだ!」


 『んだ〜〜〜!』


 ロジャーが重機で穴を掘って塹壕を作り、タンタやポンコがクワやスコップを手に取り帝国兵の侵入に備えた。

 谷の入口には木を組んで作ったバリケードを設置し、土嚢を積んだ陣地にベルマンがガトリングを構えて配置につく。

 土嚢の上でスピカが、普段タンタが顔に巻いている布を木の枝に括り、勇ましく旗を振るっている。


 「さいは投げられたのだ〜〜〜! いざしゅしゅめ〜〜〜!」


 「子供は、危ないでしょ!」


 「んも〜〜〜! スピカも戦う〜〜〜!」


 ロンがスピカを抱きかかえて、村の寺院まで連れて行った。


 寺院には、飛行船フライハイトを眺める村長とコルルがいた。

 ロンが、クマさんの散弾銃を持っていることに気づく村長。


 「おめ〜さん等まで戦うはめになって、すまね〜だ。その散弾銃は、クマの猟銃だな。大事に使ってやってくれ」


 「んだ。やった後悔より、やらない後悔!」


 「スピカ、意味分かって言ってるのか?」


 コルルにまたがり、戦いの準備を始めるロン。

 村長に一言返事をした。


 「僕達は、同じ時を過ごした。だから仲間なんだ!」


 『バサッ バサッ バサッ』


 手を振り、見上げる村長が遠ざかっていく。(何故か地上に、スピカがいない………)


 「ジャジャ〜ン!」


 「いつの間に!? コラッ、降りなさい!」


 「ん〜〜〜! スピカも、戦う〜〜〜!」 


 いざ、戦いの準備が整った。

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