ROUND 6 天使をナニだと思っていやがる

 堕天使はその名の通りに堕ちた天使、要するに美形である。しかし幾らそうであると文言を積み重ねても所詮は使いだ、生殖どうこうは設定されていない。従って無性、簡単に言えば棒も穴もない。


 しかしそれを返答しないままに逃走を図った堕天使。つまりこうだ、恥ずかしいだけ。デリカシーが無かったな、そうだな。であるがそれだけである。


 さあ、どっちだ。歴史上最低にして王国史上最新の大事件が始まる。


 ~~堕天使、シュレディンガーのTin-Tin事変~~




 謁見の間を飛び出した堕天使。蹴り開けた高そうな扉のことは今は考えない。それよりもだ、欲情したオスの視線とメスの視線が一気に突き刺さったあの瞬間。穢れ無き天使であった頃には到底考えられないようなものであった。こわい。

 飛び出してきたその小柄な姿を見て驚きと困惑を見せる兵士達。その表情は、城全体に響く主の怒号で変わる。


『脱がすまではどちらか分からん!確認せよ!』


 堕天使は諦めた笑みを浮かべて窓を外し、背の翼を広げた。こりゃだめだ。ボクはおうちにかえる。

 空へと向かうべきではない。目につく。では市街に紛れるべきか。それではいけないゲリラが出るかもしれん。であればどうするべきか。安牌で後者か?


 そこまで思考を進めた。









 カォ……ーーーーーーーン


 鐘が鳴る。


 響き渡る甲高い音色には天啓が混ざっている。


 それは身体の隅々まで染み渡り、実行に移させようとする。


 曰く。


『今、王城から逃げ出そうとしているのは見目麗しい天使です。この子は男女問わず恋愛して構いませんよ』



 は?




 は?



 ……。






『認証:恋愛神』

「コラァァァァアアアアアアア!」


 堕天使は王国中に指名手配された。捕まったらスケベされる。てかおめぇ何してくれてるん?

 明らかに目上ではあるが、それはそれとして何さらしてくれてるんだあのアマァ?堕天使は激怒し、かの邪智暴虐の神を……いや、そこまでは良いか。眼球に8連パイルしてやらぁ。


 集まってくる足音を聞きつつ、窓枠から人気の無さそうなエリアへと滑空する。

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