2話

1800年突如として世界中に突如として現れた『穴』。

それは何かが割れるような音と共に大都市に現れた。そしてそこから現れたのは獣のような四足歩行の怪物であった。

人々は得体のしれない怪物を見て恐れ、逃げ惑いました。

しかしながらその混乱も序盤だけであり、州の警備兵や兵士などが構築した防衛線のみで軽々と敵を退けられた。

人類が気を緩め始めた時、穴がさらに大きくなりそこから一回りも二回りも大きくなった怪物が現れ、かつてない規模に多くの死者を出した。

激戦は10日程度ではあったが、前線に居た兵士達の顔はあり得ないほど老けており、都市の破壊跡と怪物の死体を見ればどれほど大きな戦いだったか前線に居なかった者でも理解できた。

その後襲い掛かってくる怪物は前の獣のような小さな姿になったが、あれが定期的に出現することを警戒し彼らは祖国を守るため気を引き締めた。


穴が拡大し、かなりの激戦となった日後に被害が世界各国の都市で起きていることが分かり、人類は共通の敵に対する同盟を結んだ。

常に最悪を予想した大国は自身の技術を惜しみなく各国に与え、その技術で数々の国が大国へ追いつくため尽力した。


世界各国が手を組み、同盟を結んでいる最中日本には穴とは別に突如として『神』が降り立った。

彼女こそ過去、現代、すべてにおいて人類を守った神「お狐様」であった。



「ん?お、おお。転生したの…かな?」


前世の体ではないことを確認し、自分の服装もちゃんと巫女服になっていることを確認する。

背も高くなり、頭に手を添えてみると動いている狐耳とさらさらとした感触の長髪が腰まで伸びているのを確認できた。


「(さて、神様からもらった知識はっと…)」


転生前に詳しいころは頭の中にぶち込んでおくと言われたため、すんなりと思い出せた。

100年後に神様が穴を出現させた邪神として自分と戦うという体で迎えに来てくれるらしい。

それと自分が迎えに来る直前に、自分の力に近い力(異能)を持つ者達魔法少年が生まれることも示唆してほしいとのこと。


「なるほど?魔法少年についての説明も頭の中にあるっぽいけど、まずは自分の力を見せて時の政府に自分の存在を刻めってあるなぁ」


どうやらそのために自分がこの地に降り立つタイミングで江戸に大きな襲撃を起こすらしい。

なんというマッチポンプ…自分は深呼吸をし、体の中に鎧を身にまとわせるイメージをすると自分の姿が一瞬で鎧武者となった。


「うんうん、かっこいい」


能力で出現させた鏡を浮かせて自分の姿を見る。真っ赤な武者鎧に狐の面具、手には自分の背丈位ある刀。


「とりあえず江戸に向かって飛ばなきゃ」


足に力を入れて飛び上がるとものすごいスピードが出る。

この自分の力に対してあまり驚かないのはきっと神様が元々自分の力であるということを頭に植え付けてくれたおかげだろう。だからこそ自然に能力が発動できている。


「口調も一応変えておこう。口調にも設定はあったけど関係ないと思って説明してなかったからなぁ」


そんなことを考えながら飛んでいると、すでに火の手が上がっている江戸の町が見えた。俺…私は武士の人達に襲い掛かろうとした巨大な敵を一太刀で両断すると、周りに襲い掛かって来た敵を薙ぎ払う。


「人の子よ、我が来たからにはもう安心せよ」


周りの人達はこちらを見上げ、希望の籠る目でこちらを見つめていた。


お狐様が来る数時間前。

江戸の中心に空いた穴を監視し、簡易的な城壁を立てて散漫的に襲い掛かってくる化け物に対して矢や銃を撃ち対処していた。


「今日は妙に怪物の出る量が少ないな…」


物見櫓で立っている下級武士が同じく見張りで立っている武士に呟く。


「まあ、それが一番よ。少し前に起きた奇襲に近い大きな襲撃、あれのおかげでお上もことの重要さに気づいたし、俺らも気を引き締められたしな」

「そうだな、ん?…!!」


突如として大きくなり始める穴を見た下級武士は例の襲撃を思い出し、敵襲用の鐘を鳴らし、もう一人は緊急用の法螺笛吹くと穴から法螺の音をかき消す咆哮を放つ人型の怪物が現れる。


「てぇ!!狙わずとも当たる!!とにかく時間を稼げ!」


鉄砲隊が銃眼から敵に向けて放つ。小さい怪物はその一撃で数体が倒れ、巨大な敵の足を抉り膝をつけるが、しばらくすると敵の足が再生し立ち上がる。

無数の石、弾、矢が敵を貫き倒れる。しかし彼らもやられてばかりではない。


「うわぁ!!」


死体を踏み台に獣の怪物がどんどんと壁を上がってくる。

上から槍や弓で応戦しているが、いかんせん数が多い。敵は自身の脅威になる物を最優先に狙っているらしく大量に敵を倒せる大砲へ向かっている。


「うわぁ!!」


巨大な怪物が大砲に撃ち抜かれ倒れるが、もう一体の怪物が得物を振り下ろし砲台を破壊する。その衝撃で壁の一部が崩壊しかけ、突進してきた怪物により壁は完全に破壊された。


「怯むな!!」


崩れた壁に集まる怪物、しかし圧倒的物量とそれを押しとどめる防波堤が崩れたという事実に彼らの士気は下がっていた。

比較的小さな怪物が動きで翻弄し、巨大な怪物が得物を薙いで武士を吹き飛ばす。


「も、もうだめだ!」


士気の低い者から戦線を逃げるように離脱するがある程度密集している場所から離れてしまえば怪物はそれに狙いを済ませ襲い掛かる。

再び怪物が獲物を振り下ろそうとしたとき、怪物は体が真っ二つに切り裂かれた。


「人の子よ、私が来たからにはもう安心せよ」


そこに居たのはあまりにも多きすぎる鎧を身にまとった武士であった。

その姿はまるで神のように見え、怪物をすべて切り落として進む姿はまさに鬼神であった。


「あの方に続け!!!」

『おおぉ!!』


突如として現れた武士に士気が大幅に上がった彼らは小さな怪物だけではあるが、確実に数人で息の根を止めていた。

怪物も新たな脅威に気づき、武士に迫ってくるがあの者はそれをものともせずただ作業のように切り裂いていく。

そして突如として参戦した武士のおかげで被害は2桁程度で収まり、穴から街を守るように覆っている壁の損傷もあまりひどいものではなかった。

穴は元の大きさに戻り、この状態になればしばらくは襲撃が起きないことは前回で分かっているため事後処理に移り、突如として現れた武士は他の武士に連れられ指揮官の所へと向かった。

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