第4話 早速強盗が出た!

 寝室の箪笥たんすの3段目を確認、仕舞って置いた刀とピストル型ボウガンそれにパチンコ(スリングショットとも言う)にスチール玉、70㎝ジャングルマチェットも、しっかり取り寄せてくれてる。


「名酒さん、町を案内します」

「危険があるなら刀持って行って良い?」

「武器を携帯するのは、暴漢に対し威嚇になって良いと思います」

 冗談で言ったのに・・・やっぱそう言う世界か。


 悪人を斬る事が出来るか不明だが、20代元気だったころ入門した真剣を使う古武道鐘巻流、参段の祝に師匠から頂いた備前石道二尺四寸、軍刀を量産した昭和旧陸軍の過酷な受け入れ検査に合格した剛刀、美術的価値はほとんど無くて安価で実用的な所謂いわゆる昭和新刀と言う頑丈な日本刀で青竹仕込んだ卷き藁を両断できる腕はある。


 銃刀砲剣類所持許可証付きだが、この世界では不要な許可証紙切れになった。

 抜刀して刀身の状態をみる、半年前打ち粉を打って懐紙で拭き取り丁子油ちょうじゆを薄く塗って置いた。

「綺麗な状態だ、帰ってから手入れすれば良いか」


 ※青竹仕込んだ卷き藁は人の胴を想定した物で、簡単には切れません。

 因みに、普通の卷き藁は人の首を想定した物で、引き切りを1年修行すれば簡単に両断出来ます。


 腕は有るが、人が斬れるかは何とも言えない、割り切る事が出来るかは出たとこ勝負だ。


 夏とは違うが冬服では暑い、七分丈パンツにTシャツ、半袖ジャケットを着てベルトに刀を差した。

 外は相変わらず埃っぽい風が吹いてる。

「この町の気候は?」

「年中こんな感じです」

「日本で言うと初夏かな? 適当な服で年中過ごせる、この埃っぽい風が無ければ住みよい感じだね」


「住みよいかは疑問です、食料不足で主要産業は水牛の角に干し肉それに革製品、水牛肉は安価で買えますが野菜は手に入りにくいです」

「野菜が? 農業は?」

「土地が砂地で、農作物は栽培して居りません」

「そんなバカな! 砂地で大概の作物栽培出来る、薩摩芋にラッキョウなんて砂地の方がよく育つ」

 雨も降るそうで、砂漠のような乾燥地帯じゃ無い、食料不足なのになぜ作物栽培が行われないのか不思議だ。


「農業指導すれば、食料不足解消は結構簡単かも」


 農業用水に利用できる水量の豊富な大川も町中に流れていて荒れ地だが農地候補は、町をぐるり取り巻いてる。

「あれ? あの紫の花」

「自生の花がどうかしましたか?」

 近付いて観察した、一本の茎から先端が四方八方に別れて花が咲いてる、引き抜いてみると見慣れた球根が付いてる。

「これラッキョウだよ」

「食べ物ですか?」

「塩漬けにしても良いし、柔らかく煮て食べても良い健康食品で、芋と水牛肉それにラッキョウを食べれば、病知らず健康で元気に暮らせます」



「身なりの良い坊っちゃん嬢ちゃん、お金を持ってるだけ出して貰おうか、嬢ちゃんの腰の大層な剣も置いて行け」

 振り向くと、こ汚い男が3人ニタニタ笑ってる。


「オッサン! 寝言は寝て言え!!」


 左手親指でつばを押し、鯉口こいくちを切る、右手でつかを握り三寸抜きさやを横に倒し背中に回す、抜刀の勢いのまま中央の男のナイフを持った右手を切り飛ばし、剣先の向いた右の男の腹を突く、引き抜き左の男を睨む「逃げるなら見逃してやる、食うに困っているなら儲け仕事をやる! どうする?」

 覚悟がどうのより、何度も稽古した三の形の応用が出てしまった。

「姐さん! 儲け仕事を下さい! 手下になります」

「分かった、この二人にも聞いてみる」


 手を切り落とした男より、腹を刺した男の方が優先。

「ちょっとの間動くな」

 動くなと言っても痛みで男はもがいてる。

「私は救命師、命を救う者・・・腹の傷治れ!!」

 何の根拠も無かったが、救命のイメージは傷の治療が本職、綺麗に治ったので間違いない。

 後は腕を切り落とした男、落ちた右手は砂まみれだ。


 水洗いよりアルコールで洗う・・・・・・980円2リットル徳用焼酎ペットボトルが出てきた。

 焼酎でドバっと汚れた右手を洗った。

「くっ付けてやるからシャキッとしろ!!」

 と言っても、男は痛みで気絶してる。

 落とした右手は、切り口が綺麗なので合わせ易い。

「私は救命師、命を救う者・・・腕よくっ付け!!」


 血で汚れた刀を焼酎で洗って、丁寧にハンカチで拭き取り刃の状態を確認、問題無いので納刀した。

 血糊で汚れた刀を納刀すると、鞘に引っ掛かりが出来て鞘を造り直さないと使い物にならなくなる、注意が必要だ。


 騒ぎが大きくなり、周りを見ると大勢が野次馬してる。


 こ汚い3人のオッサンが、私の前で土下座して。

「「「姐さん! 手下にして下さい!!」」」

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