第3話 イマワ世界

「住の保証はされた、衣も結構持ってる、後は食だね」

「食べる物は、救命資格『救命マナ』で出せますが、3等の今は・・・パンとブドウ酒が出せますよ」


 ろくな目に会って来なかった38歳のオバサンは、15歳の姿になっても猜疑心さいぎしんいっぱい、このまま言いなりで良いのか応接間のソファーに座り、シドウ君から説明を受けてる所だ。


「パンとブドウ酒が出せる? 何処から」

「救命マナは無から有を造り出せます、思い浮かべ念じてみて下さい」

「パンとブドウ酒・・・」

 思い浮かべたのは、コッペパンにマーガリンと餡こが入った物、それに一本750円のワイン。

 イメージが情けないけど、貧乏暮らしで高級ワインなんて買えないし、見たこともない。


 元から有ったように、テーブルの上にパンとブドウ酒が置いてあった。

「おっ!! 出た!」

「それで食事は大丈夫でしょ?」

「待った!『人はパンのみに生きるに非ず!』おかずが無いと生きて行けない!」


(おかず? 本当は精神的な物も必要って言い回しなんだけどね?)

「思い浮かべて出せれば、何でも出して」

 シドウ君、ちょっと投げ遣りな言い方だよ。


「んん! 松阪牛のステーキ!」

 ダメか・・・テレビで見ただけの物、イメージ涌かん。

「冷凍物、6個入り188円の塩唐揚げ!!」

「・・・」

 可哀想な目で見るな! 貧乏臭いのは分かってるよ。

「おっ? 出た!」

 唐揚げと来たら「99円の缶チューハイ!」

 イメージ出来て安物なら出せる事が分かった。


「結構何でも出せるけど、代償が命なんて落ちは無いでしょね?」

 パンをモグモグ、唐揚げモソモソ、チューハイガブガブしながらシドウ君に聞いてる。

「僕はこう見えて天使ですよ! 悪魔契約じゃ無いです!」


 救命師とは、自他問わず救命に関する事なら万能的に、何でも望が叶う、ただし修行を重ね能力スキルがアップしたならと言うことらしい。

 この世界はイマワ世界と言って、リッチ大陸とバッド大陸の二つの大陸があるそうだ。


「ここはバッド大陸中央部の『救いの無い町』」

「バッド大陸って名前からして良くない、しかも救いの無い町って危険はないの?」

「残念ですが、危険はいっぱいあります、狂暴な魔物に盗賊『貧すれば鈍す』と言うように、この町の多くの者はさもしい心を持ってます。名酒なさけさんには住民の『鈍す』心を救って欲しいです」

「この世界、犯罪者取り締まる人は居ないの?」

「日本の常識は通用しない荒涼とした砂漠世界です、盗賊は捕まらない強者ならやりたい放題、盗賊より強い者は逆に返り討ちにします。救命師には自分の命を救う事が出来るはずです」

「自分の命を救う事が出来る?」

「これもイメージしだいです、命を救う方法をイメージして下さい」


 やはり落とし穴、そう言う世界か。

「盗賊や悪人は殺しても罪にならないって事?」

「悪人を返り討ちするのも救命師の勤めになり、一般の人の救いになります。評価も受けます」

「評価って誰から?」

「主神様からです」

「シドウ君が天使と言うのはマジだったの? 神様の使いって事?」

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