第5話 研究室

 到着した島には小さな建物と、天を突かんばかりの巨大な塔が建てられていた。周囲にまったく島は見えない。海は赤く汚染されている。


 ダヌアがランの手を引き、建物に近づくと


―――― DNA認証 両名確認


 という音声が響き、扉が左右に開いた。


 自動的に灯りが点くと、中は小ぎれいな機械だらけの研究所だった。


 デスクには、白髪の男の写真がこちら向きに飾ってある。


 写真の中の博士が動いた。


「よく来た。ここに来れる資格を持つ人間が現れるのを400年も待ったよ」

「資格? それに…依頼…とは」

「君たちへのお願いというのは、地球の外側を回るサテライトに向かい、失われた技術や研究資料を持ち帰ってもらいたいのだ」

「サテライトって、あの空を飛んでいる衛星ですか?」

「ああ、そうだ。あの中には、『災厄』に備えて私が格納しておいた人類の叡智が詰まっているのだ。海水の汚染処理も、地球に自然を復活させるバイオフォーミングも、そして人間の生殖機能の復活の方法もだ」

「なんですって!?」

「あれがあれば、この地球と人類を復活させることができる。高い塔は、サテライトに接続可能なロケットなのだよ。そして、その操縦は私にしかできない。健康で頑健な体のね」

「どういう…」

「まだわからないのか? 君は、私だ。君は私の完全クローンなのだよ。そして、テレサは私の妻だ。彼女の人格と知識をAI化したものだ」

「まさか!?」

「そうだ。そちらのお嬢さんは、テレサの完全クローン。いや、本当に生前の姿のままだ」

「あのロケットは二人の遺伝子でしか起動しないようになっている。当時クローン人間はまだ発展途上の技術だった。多くのクローン人間は成長せずに死んでしまう。君たちが初めて私と妻の完全クローンで正常に成長した個体だったという事。さぁ、操作は完全に自動化してある。早くサテライトに向かってくれ。サテライトに乗り移ったならば、メインパネルの赤い降下ボタンを押せばいい。それだけで安全に地表に戻ってこれるよう設計してある」

「私たちが行けば…本当に地球が救われるの?」

「ああ。その通りだ。この日を400年待ち望んだ」


 二人は扉を出てロケットに近づくと、扉が自動的に開いた。用意された二列シートに乗り込むと、二人は手を繋いで、発進ボタンを押す。


 轟音を上げ、ロケットはサテライトへと向かった。何の問題もなくサテライトとの連結は完了し、機密扉を開けてダヌアとランは内部に入った。



 

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