第6話 ダブルヘリックス・サテライト

 サテライトへの扉を開けて入った瞬間、大きな音がしてロケットが切り離された。足を進めると小さな札のようなものが付いたカプセルが壁面に並んでいる。


 ダヌアが近づいた瞬間、何かが足をすくい、ダヌアは床に転倒した!


「ダヌア!!」


 巨大な蛇型ロボットがダヌアの体に巻き付き、その頭部から小さな針が伸びて来る!


スピーカーから声が聞こえる。


―――― ふふ、暴れても無駄だよ。その蛇型ロボットには私のDNAナノマシンが仕込んである。私の経験も、知識も、性格も全て君に転写させてもらうよ。いや、自分の体だ。返してもらおう。


「どういう…ことだ!!」


―――― そのサテライトには資料と一緒に一流の人間のDNAが保管されている。人類が滅んでも、荒れ果てた地球の環境がある程度戻った時にクローンを利用して復活できるようにね。君たちクローン人間は過酷な地表を生き延びるために作られた、人類の歴史のつなぎ役に過ぎないんだよ。…君が終わったら次はテレサの番だ。


「やめてぇえええ!!」


 ランの叫びもむなしく、ダヌアの頸動脈にDNAナノマシンが注入される。


―――― ふふふ!! やっと私も眠れそうだ。本体が復活するのなら…


 ダヌアの目が見開かれ、苦しそうなうめき声を上げている。体はガクガクと震え転写が始まったことを示していた。


 だが、その震えもしばらくして止まった。ダヌアは意識を取り戻す。


「い、いてぇ…だが、俺は…俺だ。このロボットめ!」


 蛇型ロボットを引きはがし地面に押さえつけた。


―――― な、何が起こっている? どうした? ま、まさかお前達…生殖機能があるのか!? 施設で作るクローン人間には、生殖機能を持たせず、勝手な繁殖を抑えていた。DNAナノマシンの転写はオリジナルの生殖機能情報を体内に発生させる事で有効化される。既に生殖機能が備わっていれば…転写は不可能だ…。上書きはできない…。


 ダヌアは、蛇型ロボットの頭部を力任せにへし折った!! 地上との交信も全て途絶える。


「強靭な体でよかったぜ…」

「ダヌア! 大丈夫!?」

「ラン! 大丈夫だ! だけどあの博士の本当の目的はこのサテライトの中のDNAを地上に戻して、俺達クローン人間の体に自分たちの精神を上書して復活させること。クソッ!! 俺たちはただのスペア扱いなんだ!」

「待って! でも…シュヴァルツ博士は、私たちに生殖能力があるって…」

「!! …じゃぁ、俺たちは…施設などなくても自分たちで子供というやつを作れるのか?」

「そういう…ことだよね? 何だか怖いけど…」


「地球に帰ろう! その前に、このサテライト内の蛇型ロボットと、オリジナルとかいう奴らのDNAを全て宇宙空間に捨ててやる!」


 ダヌアはサテライト内部に眠るように格納してあった蛇型ロボットを全て引き出し、外部ハッチに集めた。ランは壁に掛けてあった1000件に及ぶ札のついたカプセルを一つのコンテナに集めてハッチに持ってきた。


 内部扉を閉めると完全に気密される。ダヌアは外部ハッチを開けるボタンに手をかけた。


「これで…いいんだよね?」


 反対の手で、ダヌアはランの手を強く握った。


「ああ、俺たちは、人形じゃない。人間だ!」


 ガコン!!


 レバーを下げると外部扉が開き、蛇型ロボットとDNAカプセルはシュボォという音と共に宇宙空間へと消えていった。


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