第4話 発見

 ダヌアが目を覚ますと、隣にランはいなかった。支柱に掛けてあった貫頭衣が一着無いところを見ると、着替えて外に出たのだろう。外は既に明るいが、まだ太陽は上がっていないらしい。


ダヌアも貫頭衣を身に着けると、そのまま裸足でテントの外にでた。


「ラン! どこだ!」


 返事はすぐに返ってきた。


「ダヌア! すぐにこっちに来て!」


 ちょうど大きな岩からランが顔を出した。小走りでダヌアが駆け寄る。


「これは…何??」

「なんだ? …うおっ!!」


 視線の先にあったのは明らかに人工物だった。黒い金属の様な材質の、巨大な円筒形の物体だ。大きな岩と岩の間に砂にまみれて半分隠れるような形で横たわっている。昨晩通った時は闇で一切気付かなかった。


「ラン! 危ないから近づくな!」

「でも…これって…?」

「分かった! 俺が行く! …リュックを、持ってきてくれ!」


 ランは頷くと、小走りでテントの方にリュックを取りに戻った。ダヌアが腰を低くしながら、建造物に近づく。一切の気配がない。よく観察すると、円筒形の上部には、丸いハッチの様なものがあり、ハンドルが付いている。


「もしかして…これは、滅んだ人類の装置…?」


 ダヌアがハッチに手を近づけた瞬間!


 プシュゥ…


 と音がして、ハッチがゴトンと音を立てて開いた。


「うわっ!」


 驚いて後ずさったが、特に何も起こらない。ハッチから下に向かって金属製の梯子が伸びている。振り返ると、ランは既に二人のリュックを抱えて、岩の上に立っていた。


「ダヌア! 入るの? それ、危なくない?」

「ラン、これは人類が造った装置かもしれない! すごい発見だ! 一緒に…行くかい?」

「…えと…んと…ダヌアと一緒だよね? なら…行ってみる!」


 そういうと、岩からぴょんと円筒の上に飛び移り、ダヌアの手を握った。


「ラン、なんだいそれ?」

「何って? 何?」

「あの…手をつなぐってこと」

「あ、あの。わかんない…でも、安心する! 手をつないでて。ダヌア」


 ダヌアは困惑したが、昨晩の事を考えると何か心の奥から湧き上がる衝動の様なものを感じた。


「ああ。わかった。手を繋いでいこう。俺が守ってやるよ」


 二人は自分のリュックを背負うと、顔を見合わせて頷いた。


「行こう! 俺が先に下に降りるから、声を掛けたら降りてきてくれ」


 ダヌアが梯子に掴まり、ゆっくりと降りてゆく。ほどなくして下からダヌアの呼ぶ声が聞こえた。


「ラン! 大丈夫だ! 降りてきて!」


 ランが梯子を伝い、梯子を降りてゆく。二人が床に降り立つと、上方でガシャアン!!! と大きな音がしてハッチが閉じた!


「くそ!! 風で閉まったのか!?」


 その時、ブゥンという音が聞こえた。まるで「施設」で聞くような音。真っ暗な室内が急に明るくなる。


「ダヌア! なんなの!?」

「判るもんか!」


明かりを頼りにゆっくりと室内を進んでみる。


―――― 乗船確認しました。出港します。


 壁についていた四角い箱から声が音声が聞こえると同時に、ウィイイインという機械音が鳴り響く!


ダヌアが慌てて梯子を上がり、ハッチを開けようとするが、びくともしない。


「くそ! 捕まったのか!?」


―――― 後進。地下水脈より外海へ向かいます。


 巨大な円筒形の構造物は、水陸両用型潜水艦だったのだ。


「どこへ行くの!?」

「ラン! 俺に掴ってろ!」


 ランがダヌアの手をぎゅうと思い切り握って身を寄せる。


 ガタン!! ガタタン!! と大きな振動が幾度かあったが、しばらくすると、衝突音は無くなった。だが、この乗り物はどうやら自動操縦でどこかに向かっているらしい。


 船内スピーカーから再び音声が聞こえた。今度はしゃがれた男の声だった。


―――― …待っていたよ。長い長い時間を…。君たちが、そうか…


「誰だ!」


―――― 私はシュヴァルツ。この潜水艦の開発者だ。


「潜水艦?」


―――― 水の中を進む乗り物だよ。今から君たちには私の研究所に来てもらう。


「研究所?」


―――― ああそうだ。君たちは、テレサの命令でここまで来たのだろう?


「テレサを知っているのか?」


―――― ああ、テレサを作ったのも私だからね。君たちに願い事があるんだ。


「ガンダラへ行けという命令は…?」


―――― それはカムフラージュだ。条件を満たした人間が現れた時にしかその地図は渡されないようになっている。


 二人はいろんなことをシュヴァルツ博士に質問した。博士は明確に質問に応じ様々な真実を知ることになった。だがシュヴァルツ博士は、既に死んでいた。400年という年月は人間にとっては長すぎたのだ。


 彼の知識と人格のみをAIに転写し、人類の復活のために稼働しているということだった。


 潜水艦が止まる。到着したようだ。上方のハッチが再びプシュという音を立てて開いた。

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