第3話 砂漠の旅
砂漠の中を歩き続ける二人。
空を見上げると、まだサテライトが見えた。太陽はずいぶん傾き、ちょうど進行方向からダヌアとランの体を赤く染めた。
「ラン。そろそろ今日の寝床を探そう。あの砂丘を越えたあたりが元々海岸線みたいだ。少しでも湿度が高い方がいい」
「そうね。ボトルの水も残り少なくなってきてるし」
二人は砂丘の上まで来るとその景色に目を見張った。
「砂…以外の物を見たのは、久しぶりかも…」
眼前に広がるのは、砂漠の中からまるで突き出すように伸びた巨岩群だった。もちろん木々や植物などは生えていないがかなり遠方まで続いている。
それはいわゆるリアス式海岸の名残だった。海に向かって突き出していた岬が、海が無くなった今も砂の中で威容を見せていたのだ。
「すごいな…」
「こんなの、初めて見たわ…。っていうか、あの大きな岩よりこっち側は全部青い海だったっていう事?」
手ぶりで指し示しながらランが訪ねた。
「…っていう事だろうな…。地図にここから向こうは海だったと書いてある」
「私たち、本当に何も知らないのかもしれないね」
「まぁ、職場と自宅以外に出ることは禁じられているからな。ただ俺は警備の仕事でいろんな奴とあったから、少しだけランよりいろいろ知っているかもしれないな。この景色だって…誰かに話してやりたいよ」
「そうね…この景色、話しても信じてもらえなさそうだけど…」
二人は、巨岩の近くまで歩を進めた。太陽が水平線近くまで落ち、二人の背後の影も長い。ゴツゴツとした岩の中でちょうどよい小さな洞窟を見つけた。
海があった頃は海底洞窟となっていたのだろう。二人は、リュックから携帯用テントを取り出すと、器用に支柱を立て、着ていた白いローブを天幕のように周りに張りった。ローブがそのまま野営のためのテントの幕になるという工夫は、この世界に住む人々の知恵だ。
ダヌアが自分のリュックに吊しておいた蓄光ランプをテントの中央に吊る。太陽の光が十分蓄積されており、ぼぉっとテントの中を照らす。
ローブを脱ぐと、二人の衣類は驚くほど簡素だった。自分の肩幅ほどの白くて長い合成繊維の布。中央に頭部を出す穴が開いている。頭を通してから体の前後に垂らし、腰をナイロン紐で結んでいる。いわゆる貫頭衣という奴だ。
下着は二人ともつけていない。二人とも貫頭衣を脱ぐと、素裸になる。
「ずいぶん汗を吸ったようだ…もったいないが仕方ないな」
「ええ、支柱に掛けて干しておくわ。ボトルはテントの外で水分を集めておくね」
二人とも相手が裸であるにもかかわらず、まったくの無関心だ。ダヌアは見た目から18歳くらいだろう。ランに至ってはまだ少女の様な顔つきから16歳くらいに見えた。
ダヌアが振り返り、ランの裸を見てあることに気が付いた。
「ラン、どうして肺が膨張しているんだ? どこかで打ち付けたのか?」
「え? どういう事? あ! ダヌア、あなた何故、胸に何もないの? なんだか私の体と違う…どうしてそんなにゴツゴツしているの…?」
「いや、ラン、君の方こそどうして、そんなにやせっぽっちなんだ? なのに胸とお尻は丸く腫れているようだよ。本当に怪我とかではないのかい?」
「違うわ? 私の職場では、みんなこうだった。あなたのような人は一人もいない…」
「もしかして…君は女というやつかい?」
「女? えーと女って?」
「どうやら、人間というのは二種類に分かれていて二人で子供を作ることができたらしい。これも、同僚の噂話だけど。テレサに質問して答えてくれないからきっとタブーな内容らしいんだ」
「…女…。じゃ、じゃぁダヌア、あなたは何なの? 女じゃないなら」
「俺は…男、というらしい」
「男…?」
「ああ、男と女に分かれていて、それぞれ生物的役割が違っていたそうだ」
「そうなの?」
と、言った矢先、ランがダヌアの下半身、脚の付け根部分に棒状の内蔵が飛び出しているのに気が付いた!
「ダヌア!!! あなた!!! 酷い怪我! 内臓が!!! 早く手当を!!!」
ランが自分のリュックを開け、治療セットの入ったバッグを取り出す
「え? 何!? どういう事だい!? 俺は怪我なんてしていないよ?」
「だってあなた! それ! 明らかにおかしいわ! 私、そんなモノ初めて見るわ!」
ランが指さしたのは、ダヌアの男性器である。
「ちょっと待ってくれ! これは生まれつきこうなんだ。それに、俺達男はみんな付いてる」
「なんですって!? 私たち、女…? …はそんなモノ無いわ」
ダヌアがいぶかしげにランの股間を見る。
「…確かに…何もついていない。どういう事なんだ? じゃぁ尿はどうやって?」
「…どうって、そのまま、しゃがんで…って、用を足すのなんてみんな同じでしょう?」
ダヌアは驚いた顔をしてランを見る。
「尿は立ってするもんだ!」
二人の間に、味わったことのない何とも言えない気まずい感情が沸き上がる。どちらが言うともなく、貫頭衣を羽織った。
黙って地面に並んで横になると、蓄光ランプの明かりも丁度暗くなり始めた。
お互い何か言いだそうとして、何も言えず、体をもぞもぞと動かしていたが、やがて並んだ手が少しだけ触れる。
どちらともなく、二人は優しく指を絡ませあい、やがていつしか強く手を握りしめて眠った。
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